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焦点
欧州議会選にみる、極右勢力の跳梁の加速
(1313号7面)

既成勢力の求心力の低下

 5月23日〜5月26日、欧州連合(EU)加盟28ヵ国で、5年に1度の欧州議会選挙が行なわれ、5月26日の開票で結果が判明した。

 欧州議会は、人口比で、加盟国各国の議席数が決められており、総議席数は751である。国別で欧州議会の代表を決定するための選挙が、欧州議会選挙である。

 近年、欧州議会選挙は、関心を示さない労働者人民も多く、投票率は、49・51パーセント(1999年)、45・47パーセント(2004年)、43・0パーセント(2009年)、42・61パーセント(2014年)と、低下の一途を辿ってきた。しかし、今回の選挙では、投票率が50・94パーセントに急伸した。多くの労働者人民が、各国の国政に対する不満を表明する機会と捉えたからである。

 欧州議会では、各加盟国の、同じような政治勢力が集まって会派を作っており、これまでは「中道右派」=ブルジョア政党である「欧州人民党」(EPP)と、「中道左派」=社民政党である「社会民主進歩同盟」(S&D)が2大勢力を構成してきた。EPPは、独帝首相・メルケル率いる「キリスト教民主同盟」(CDU)などが参加し、S&Dは、英帝の「労働党」や「ドイツ社会民主党」(SPD)などが参加している。これまでは、この2つの会派で大連立を組んで、ほとんど思いのままに欧州議会を運営してきた。

 ところが、今回、この2会派は、第1党、第2党の地位は維持したものの、票数が落ち込み、両会派の連立でも332議席となり、過半数に達しなくなった。この事態は、「中道勢力」主導のブルジョア政治支配に対し、ヨーロッパの労働者人民が不信任を突きつけたことを意味する。

 変わって勢力を伸ばしたのが、「親EU」を掲げる、ブルジョア政治支配の補完勢力=「欧州自由民主同盟」(ALDE)である。この勢力には、仏帝大統領・マクロン率いる「共和国前進」(REM)やオランダ「自由民主党」が参加している。

 以上の3会派を合計すれば、437議席となり、欧州議会の過半数を制することになる。だがしかし、マクロンのごとき補完勢力にしても、ブルジョア政治支配の危機を乗り切るだけの能力も意思もないことは、仏帝足下で、反マクロン闘争として粘り強く闘いぬかれる、「イエロー・ベスト」デモの爆発が鮮明にしている。

増長する極右勢力

 既成勢力のブルジョア統治能力の喪失の中で、ファシスト勢力が拡大している。

 欧州議会選挙では、極右勢力が軒並み勢力を拡大した。英帝の「EU離脱党」(英帝EU離脱を主導した極右・ファラージが新たに立ち上げた政党)、独帝の「ドイツのための選択肢」(AfD)、伊帝の「5つ星運動」などで構成する「反EU」を掲げる「自由と直接民主主義のヨーロッパ」(EFDD)が、41議席から54議席と伸び、仏帝の「国民連合」(RN)や伊帝の「同盟」、オランダの極右・「自由党」のような、「移民排斥」を主張する極右勢力が構成する「国家と自由の欧州」(ENF)が、37議席から58議席に議席を伸ばした。

 欧州各国の状況を見ると、仏帝では、党首・ルペン率いる「国民連合」が23パーセントの得票で、第1党になった。伊帝でも、「同盟」が34パーセントの得票を獲得。ハンガリーでも、首相・オルバン率いる「ポピュリスト右翼」の「フィデス・ハンガリー市民連盟」が52パーセントと圧勝した。独帝では、AfDが4位を確保した。そして、EU離脱問題が泥沼化する英帝では、「時間切れ」となって欧州議会選挙に参加することになったが、結果は、「EU離脱党」が32パーセントの得票で、第1党となった。

 EUの運営をめぐっては、今後の課題として、今年10月に任期満了となる欧州委員会委員長・ユンケル、今年11月に任期が満了する欧州大統領(欧州理事会議長)・トゥスクの後任人事である。さらに、欧州中央銀行(ECB)次期総裁の人事も重要である。しかし、政治勢力のバランスが変化する中、人事決定1つとっても、さらなる混乱の拡大は必至である。

 「移民・難民問題」噴出以降、EU主導のブルジョア政治支配の危機が拡大している。ブルジョア政党が統治能力を喪失する中、ファシスト勢力が跳梁を強めていることを警戒しなければならない。そして、既成勢力の枠を踏み越える「イエロー・ベスト」デモのようなヨーロッパ労働者人民の実力決起の拡大の中から、プロレタリア革命を展望する勢力が登場しようとしているのである。