5月28日、旧優生保護法によって、「知的障害」を理由に不妊手術を強制された宮城県下の60代と70代の女性2人が、2018年に、国を相手に「優生保護法は、憲法13条の幸福追求権に違反」「国に対する損害賠償請求」の訴訟を起こしていたが、その判決が仙台地裁であった。裁判長・中島基至は、「障害ある人たちに不妊手術を強いた旧優生保護法は、個人の尊重や幸福追求権を保障した憲法13条に違反する」としつつも「損害賠償請求」は、棄却した。
裁判長・中島は、棄却判決の理由として、「旧法下で行われた優生手術は、憲法13条が保障する幸福追求権から導かれる子を産み育てるかどうかを意思決定する権利(リプロダクティブ権)を侵害し、旧法の規定は無効。母体保護法に改定される1996年まで存続した旧法自体についても、法の存在そのものが被害者の幸福追求権などの権利行使の機会を妨げるものだった」と旧優生保護法が「違憲」としながらも、「不法行為から20年で賠償請求権が消滅する『除斥期間』が過ぎている」「国内で現在に至るまでリプロダクティブ権に関する司法判断や憲法議論の蓄積がない。原告側が主張した優生手術の被害者への救済措置を怠り続けた政府と国会の『立法不作為』については、少なくとも現時点で救済措置の必要性が明白であったとは言えない」を挙げている。
つまりは、「旧優生保護法は、違憲」だが、「賠償請求権が消滅している」「これまで優生保護法が違憲であるという司法判断がなかったので、国会で救済措置の必要がなく、国に責任はない」として、不妊手術を強制された女性2人の訴えを踏みにじったのである。仙台地裁の「棄却判決」を弾劾する。
本年4月、「救済措置法」が議員立法として成立した。法文にはその目的として「われわれはその立場において反省し」「一時金320万円を支給する」とあるが、国や政府の謝罪と責任が明確でなく、不妊手術を強制された当事者を始めとして、強い反対の声が挙がっていた。このような「救済措置法」なぞ認めるわけにはいかない。
旧優生保護法は、ナチス・ドイツの「断種法」をモデルにした日本の「国民優生法」が前身である。1948年、「法の目的」として「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」を明記し、議員立法で成立したが、極めて差別に貫かれた「法」である。「身体」「知的」「精神」などの「障害者」、「ハンセン病」患者、難病の患者など、その対象は幅広く、国は、施行後、「だまして手術してよい」と悪辣な手法を「都道府県」に通知してまで、「不妊手術」や「断種手術」などを強制したのである。
「障害者」運動や女性団体の闘い、国際的な批判を背景に、1996年、「母体保護法」に改定されたが、1996年の母体保護法への改定までに、少なくとも2万5000人が手術されている。
現在、全国7地裁で計20人が起こしている国賠訴訟のうち判決は、5月28日の仙台地裁が初めてである。旧優生保護法をめぐって「違憲」が明示されたが、「損害賠償請求」が認められなかったことで、原告側は控訴するとしている。
「社会にとって価値なき生命」として、「障害者」、「ハンセン病」患者、難病の患者などを抹殺しようとする旧優生保護法の思想的基礎を成していた優生思想との対決は、「障害者」解放闘争にとって重要な課題である。
旧優生保護法によって不妊手術などを強制された当事者は、高齢化が進んでおり、体調や生活も厳しい状況にあるが、「国の責任と謝罪」を求めて裁判を闘おうとしている。
われわれも、政府の優生思想―優生政策と対決し、全力で闘っていかなければならない。
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