「包囲ネット」が集会基調
2月9日、午後1時30分から「都教委包囲・首都圏ネット(包囲ネット)」が主催する「『君が代・日の丸』強制と処分反対! 10・23通達撤廃!
2・9総決起集会」が文京区民センターで開催された。この集会には現役・OBの教育労働者をはじめ約90人の労働者人民が参加した。集会賛同団体に名を連ねた東京・山谷日雇労働組合、東京都地域連合労働組合の仲間たちも結集した。
集会は、主催者である「包囲ネット」からの開会あいさつから始まった。「包囲ネット」の代表は、「2020年度から高校で『公共』の科目が始まる。すでに小学校、中学校では『道徳』教育が始まり、国家主義を子どもたちに刷り込んでいる。改元によって過去を消し去ろうとするマジックが使われようとしているが、われわれは、過去を絶対に忘れないことを肝に銘じて闘っていきたい」と呼びかけた。
続いて、「包囲ネット」から集会基調が提起される。基調提起に起った見城氏は、「『10・23通達』から今年で15回目の卒・入学式になる。15年前に比べ、今は、はるかに厳しい状況になっている。これをどう突破するかが課題になっている。公園を使わせないなどのデモ、集会への規制も強まっている。これらに対決する結集軸が明確になっていない。この現状を突破するために、『包囲ネット』もがんばっていきたい」と提起した。
発言者の時間の関係で、「高校の現場からの報告」が、4次訴訟原告の川村氏から行なわれる。川村氏は、「毎日過密スケジュールで吐きそうです。ほとんどの教員が同じです。80時間以上超勤になると校長が『産業医と相談をしろ』と言うだけです。出勤時だけでなく、退勤時にもタイムカードを打ち込むようになったが、校長は『退勤を打刻してから仕事をしろ』と言ってくる。『スマートスクール構想』として民間企業のリクルートが学校に進出し、実力テストもやっている。教師が要らなくなってくる。怖いことだ。今年の3月で定年になり、4年間の再任用のつもりでいた。ところが、『2017年3月に戒告処分を受けており、63歳から年金が支給されるから、63歳以降の任期延長はしない』『再任用の資質に欠ける』『非常勤でも採用しない』と通告された。あきらめずに闘い、4次訴訟が終わったら、5次訴訟の原告になるつもりです」と、「君が代」不起立を闘う決意を明らかにした。
荻野氏が基調講演
基調講演として、元小樽商科大学教授の荻野富士夫氏が、「戦前の教育統制から戦後の教育統制へ―連続・継承と断絶―」と題する講演を行なった。荻野氏は、「現在は、安倍政府が『道徳』の教科化や『教育勅語』を容認・肯定する立場を鮮明にしており、戦前の『日中戦争』前夜と同じような情勢に来ている。底知れない深い谷間へずるずるとすべり落ちてゆく時代のようだ」と講演を始め、「戦争の時、アメリカ側は、日本の国民の『戦意』の変遷を調査していた。1931年の『柳条湖事件』に端を発した『満州事変』の時点では、排外主義が最高潮に達し、その後、『日中戦争』が全面化するなかで低下していた『戦意』が、真珠湾攻撃をもっての対米英開戦の時点では、99パーセントが開戦支持だった。大学でこれを話しても、学生はなかなか納得しない。たしかに、戦争に抵抗する人はいたが、全体の1パーセントにもならなかった。もっともらしい理屈のついた戦争が近未来に勃発した時、99パーセントの国民が戦争を支持する側に属する懸念がある」「一貫して戦前の国民教育の基本は、『教育勅語』の皇室を中心とする日本国体観と、これに基づく『忠君愛国の国民』の養成であった」「戦後教育も戦前の『教育勅語』に固執する文部官僚が居座った。GHQの『教育指令』や1947年の『教育基本法』成立があったが、新たな教育統制が、学生運動や教職員組合の抑圧を基軸にして始まった」「もはや、明らかに『国家主義教育』と呼ぶにふさわしいところまで来ている」「小林多喜二の『東倶知安行(ひがしくっちゃんこう)』という作品の中に、『俺たちの運動は、皆、今、始められたばかりさ、何代がかりの運動だなァ』という言葉がある。私たちも同じような時代を歩んでいるが、歴史の歯車は一時逆転する時はあってもらせん状に前進する」と講演を結んだ。
続いて、「闘いの現場からの報告」が行なわれた。
「『日の丸・君が代』強制反対の闘い・裁判の現状」を「河原井さん根津さんらの『君が代』解雇をさせない会」の根津さんが行なった。根津さんは、「2008年処分に対する控訴審判決が3月14日にある。東京地裁は、過去の処分歴やトレーナー着用などをあげ、6ヵ月停職処分を取り消さなかった。自分に対しては、裁判を受ける権利を認めないに等しいものだ。これを打ち破るために闘いぬく」と決意を明らかにした。
「『道徳』の教科化に抗して」という報告では、小学校教員のMさんが、「『道徳担当教員』がいて、『一つの価値観に持って行ってください』とまで言っている。授業展開や評価の工夫をしている教員に対して攻撃がかけられている。皆さんの応援をお願いします」。
「闘いの現場からの報告」
「教育統制と闘う千葉の高校の実践」という報告では、高校教員のNさんが、「沖縄修学旅行の事前学習で自分が配布した1995年の米兵による少女暴行事件を記事にした『おきなわ通信3号』に対して、校長が回収命令を出した。理由は、『内容が悲惨であり、親からクレームが来るかもしれない』というものだった。2学年の担任団は指示に従って回収した。その後、県教委が2016年3月4日に文部科学省が通知した『学校における補助教材の適正な取り扱いについて』を職員に周知徹底するように指導し、自分の職場でも臨時職員会議を開き、校長が説明した。その結果、予定していた『7号』『8号』は、県教委から『待った』がかかった。実質的な『検閲』をおこない、重大な憲法違反をやっている。権力が教育に土足で入ってくる現状と『平和教育』潰しを、危機感をもって弾劾する」。
「高校生の言論の自由を求める闘い」という報告では、4部制定時制の高校である新宿山吹高校の卒業生・Hさんが、「学校側が嫌がるような内容でもあっても事実を伝える校内新聞を発行し始めたら、学校側からの検閲や妨害を受けるようになった。自分を引き継いだ在学生は、記事の削除や、校長指導での誓約書の強要などで精神的ショックを受け、不登校に追い込まれたが、『自治委員会』をたちあげ、『建設的な和平交渉、和平協定の締結』、『校内における言論・表現・結社の自由の保障』、『学校の民主的運営制度を確立すること』、『入試における内申点と試験の比率を20:3に戻すこと』、『全日化政策の即時中止』の5項目を学校側に要求し、闘おうとしている」。
「天皇代替わりに対する取り組み」の報告では、「靖国天皇制問題情報センター」の中川さんが、「30年前の代替わりは、葬儀と奉祝があったが、今回は奉祝一色になる。政府から出される通知などへの反対の声を上げよう。新元号は使わないようにしよう。自治体へも働きかけよう。代替わり反対の様々な取り組みをやろう」。
「世田谷区新採教員解雇撤回裁判」の報告をWさんが行ない、「2018年3月、校長の恣意的評価で免職処分となった。9月に提訴し、3月18日に第3回口頭弁論がある。支援をお願いしたい」。
最後に、卒業式でのビラまきの行動提起が行なわれ、集会アピールが採択されて集会を終えていった。
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