２０１９年１月に入り、辺野古では、米海兵隊のキャンプ・シュワブ南側沿岸部の「埋め立て区域�◆州院廚遼笋疥�て作業が、激しく続けられている。大浦湾側の「Ｋ９護岸」に接岸した台船から移し替えた土砂を、十数台のダンプカーでピストン輸送し、現場に投入しては、ブルドーザーで敷き均すという作業だ。「工事用ゲート」からは、１日３００台前後の工事用車両による資機材の搬入がくり返されている。資材の中には１メートル前後の砕石も目立つ。護岸などの基礎石材であり、新たな護岸建設が迫っていることを示すものだ。名護市安和の「琉球セメント安和桟橋」からの埋め立て土砂の搬出も、１月７日から再開された。ダンプカーで敷地内に運び込んだ土砂を、桟橋に接岸する運搬船にベルトコンベアで積み込み、大浦湾に運んでいるのだ。
これに対して現地では、海上でも、「工事用ゲート」前でも、さらに「琉球セメント安和桟橋」ゲート前でも、頑強な闘いが展開されている。１月５日には、「土曜大行動」が辺野古現地で開催された。「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議（オール沖縄会議）」が主催するこの行動に、１０００人超の労働者人民が結集した。昨年１２月１４日からの土砂投入にも関わらず、闘いを諦める者は誰ひとりいない。新基地建設への怒り、安倍政府への怒りは、いっそう激しく燃え上がっている。
１月９日 埋め立て用土砂の搬出阻止をかけた｢安和水曜大行動｣
 １月９日、第１回目の「安和水曜大行動」が「琉球セメント安和桟橋」ゲート前で取り組まれた。「オール沖縄会議現地闘争部会」が呼びかけたもので、毎週水曜日については安和に全力で集中し、土砂搬出を止めようという新たな試みだ。
「安和桟橋」からの搬出は違法ずくめだ。土砂搬出港として予定していた本部港塩川地区（本部町）の岸壁が、昨年の台風２４号による破損で当面使えなくなると、政府―沖縄防衛局は、名護市安和の民間企業の施設である「安和桟橋」からの搬出に切り替えて、昨年１２月３日から土砂の積み込みを強行した。しかし、「埋立承認願書」に添付された「埋め立てに用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書（土砂に関する図書）」では、搬出場所は「本部地区」と明記されており、それを変更して名護市安和から搬出するには、「留意事項」に基づき知事の「承認」が必要なのだが、沖縄防衛局は、その手続きを一切行なっていない。しかも、この桟橋は、「琉球セメント」が自社のセメント製造に使う燃料などの搬入や製品の出荷などに使う施設として、「県」から建設と使用を許可されたものであり、それを沖縄防衛局が使うのは、「又貸し行為」であり、それを新基地建設のための土砂の搬出拠点として使うのは、「目的外使用」だ。いずれも「県公共用財産管理規則」に違反する。加えて、建設されたばかりの桟橋は、土砂積み込みの時点で、「県公共用財産管理規則」に基づく「工事完了届」が出されておらず、敷地内に堆積していた土砂についても、「県赤土等防止条例」で義務付けられた「事業行為届」が出されていなかった。
ところが、政府―沖縄防衛局は、作業主体は沖縄防衛局ではなく、作業を受託した「琉球セメント」だと強弁して、「又貸し行為」批判をすり抜けるとともに、「目的外使用」などの違法行為のすべてを「琉球セメント」に押し付けて、「県」による抗議も作業中止の行政指導も、すべて突っぱねたのだ。「作業主体は沖縄防衛局ではない」と言うなら、沖縄防衛局の職員が連日大挙してやってきては現場を仕切っているのは、どういうことか。そして、「琉球セメント」が事後的に「工事完了届」を「県」に提出したこと、搬出に当たって、敷地内に堆積した土砂を使わずに、ダンプカーで新たに運び込む土砂を使うことで、「行政指導の根拠とされた指摘は解消された」と勝手に称して、沖縄防衛局は、「安和桟橋」の使用を続けているのだ。しかし、１２月３日に搬出され、すでに辺野古に投入されてしまった少なくとも運搬船１隻分の土砂は、「事業行為届」が提出される前の違法状態で積み出されたものだ。しかも、「事業行為届」なしに敷地内に堆積した土砂は、いまだにブルーシートがかけられたまま、敷地内に山積みされている。雨が降るたびに赤土が岸壁から流出し、海を汚している。政府―沖縄防衛局がやっていることは、すべてが違法、無法だ。
そればかりではない。政府―沖縄防衛局は、「安和桟橋」から搬出している土砂について「岩ズリだ」、「石材だ」と言い張っているが、実際には、そのほとんどが赤土なのだ。現に「埋め立て区域�◆州院廚療攤重蠧�現場は、赤土で海水の汚濁が激しく進んでいる。「埋め立てに投入された土砂は明らかに赤土を含むものと考えられ、環境に極めて重大な悪影響を及ぼす恐れが否定できない」という「県」の指摘にも馬耳東風だ。
昨年１２月１４日の土砂投入に先立ち、「県」は土砂の「性状検査」（土砂に含まれる物質などを証明する検査）が行なわれていないことを指摘し、投入前に検査結果を提出するよう行政指導を出していた。ところが、沖縄防衛局が検査結果を出したのは、何と土砂投入の後であり、しかもそこには、２０１６年３月の検査結果まで含まれていた。沖縄防衛局が提出した土砂の性質とは、まったく違う土砂が投入されている可能性が高いのだ。やることがまったくデタラメだ。
さらに、埋め立てに使う土砂について沖縄防衛局は、「埋立承認願書」添付の「環境保全図書」では、岩石以外の細粒分を含む割合が「概ね１０パーセント前後」のものを使うと明記していたにもかかわらず、２０１７年１１月に土砂を調達する際には、細粒分の割合を「４０パーセント以下」として、業者に発注していたことも判明している。言うまでもなく、細粒分の割合が大きくなればなるほど、砂や土が多く含まれることになり、土砂を投入した際に、海水の汚濁をはじめ環境への負荷は増大することになる。２０１３年１２月の「埋立承認」の際の「留意事項」では、「環境保全図書」に変更がある場合、「県」と「事前協議」を行なうことが義務づけられていたのだが、沖縄防衛局は、何の説明も協議もないまま、裏でこんなことをやっていたのだ。詐欺行為としか言いようがない。しかも、これについて防衛省整備計画局は、「なぜ変更したかは分からない」とシラを切り、「県」が土質の品質を確認するための現場への立ち入り検査を求めていることに対しても、防衛省は、「調査を求める法的根拠を示せ」と言い放って頑なに拒否している。現場を確認されたら、さぞかし不都合なことがあるのであろう。これが、「環境保全措置にも最大限配慮しながら対応している」（官房長官・菅）という埋め立て工事の真相だ。
 こうしたやり口に、沖縄労働者人民の怒りは沸き立つばかりだ。１月９日の「琉球セメント安和桟橋」ゲート前では、早朝から約１５０人の労働者人民が結集した。採石場で土砂を積んだダンプカーが「安和桟橋」に入構するためには、国道４４９号を東進し、信号機のある交差点を右折しなければならない。そのすぐ先が、入口ゲートである。ここでは、連日にわたって搬出阻止の闘いが取り組まれているが、沖縄防衛局職員、「県｣警機動隊、「帝国警備保障」のガードマンの数の力に押し切られてきた。しかし、１５０人が集まればそうはいかない。ゲート前で労働者人民が、デモをしながらダンプカーを迎え撃つ。ダンプカーが来るたびに労働者人民が詰め寄り、入構を阻む。これを機動隊が排除して通路を確保しダンプカーを入れるものの、また次の１台が来ると労働者人民が詰め寄る。交差点の信号が１回変わる毎に、１台、多くても２台程度しか入構できない。後続のダンプカーは、車列を組んだまま、路上でほとんど立ち往生だ。２００メートルほど離れた出口ゲートでも抗議行動が取り組まれた。
こうした攻防が終日展開された。通常、１日当たりの土砂は、ダンプカーにして６００台分前後。それを概ね３隻の運搬船で搬送しているのだが、この日は、午後２時すぎにようやく１隻の積み込みを完了するという状態であった。そこを今度は海上から、カヌー隊が海上保安庁職員の暴力と拘束をはね返して運搬船を取り囲み、あるいは運搬船のアンカーロープにロープを結びつけて、出航を阻止する。「安和水曜大行動」の効果は絶大だ。以降も安和では、毎週水曜日を焦点に、激しい闘いが続けられている。
１月２６日 ３０００人が現地に結集し｢県民投票キックオフ集会｣
１月２６日午前１１時から、辺野古現地において、「県民投票を成功させよう！ 県民投票キックオフ集会」が開かれた。冷たい雨が時折落ちるこの冬一番の寒さにもかかわらず、この集会に３０００人の労働者人民が結集した。
当初、「そんな時間があったら辺野古現地に集中すべき」、「知事選のほかに、何度民意を示せばいいのか」など、辺野古現地で闘う労働者人民からは批判の強かった「県民投票」だが、今やそれは、沖縄階級闘争の大きな政治焦点となっている。そうなったのは、沖縄労働者人民の意思を無視し問答無用で工事をゴリ押しするばかりか、沖縄労働者人民の意思表示の機会すら徹底的に奪い取ってしてしまおうという強権・卑劣な安倍政府への怒りが、全島的に爆発したからだ。政府・自民党は、衆院議員・宮崎政久を使い、「県民投票」潰しの「指南書」を作って市町村議員を対象に「勉強会」なるものを開催し、市町村議会での「県民投票」関連予算の否決と、首長による投票事務の拒否を組織し、実際にこの「指南書」に沿う形で宜野湾、沖縄、うるま、宮古島、石垣の５市長に「不参加」を表明させるなど、その破壊に躍起になった。安倍政府とこれに追随する自民党沖縄「県」連、５市長に対する怒りが、激しく燃え上がり、動転した自民党沖縄「県」連は、「改正県民投票条例案」の賛否を巡って「空中分解」を起こし、５市長も姿勢を翻したことで、「全県実施」（沖縄「県」下全４１市町村での実施）へと至ったのである。
同時にそれは、新基地建設阻止を闘う者にとって、失敗が許されない厳しい展開ともなっている。投票形式は妥協の結果、｢賛成｣「反対」の２択から「賛成」「反対」「どちらでもない」の３択になった。選択肢に「どちらでもない」を加えることの意味は、「反対」票をそぎ落とすことにあることは歴然であり、さらに、「反対」票が多数を占めても投票率が低ければ、「どちらでもない」票に白票と棄権票を加えて、「『どちらでもない』が最大の民意だ」と、政府や御用マスコミが勝手な解釈を加える余地を与えることにもなりかねないからだ。
今や安倍政府は、表面上は「県民投票」を無視する姿勢をとりつつも、裏ではこれを明確に意識して、「もはや引き返すことができない所まで工事は進んだ」、「どんなに反対しても工事は止まらない」と印象づけることで、沖縄労働者人民に諦めを植え付け、新基地建設反対の意思と闘いを挫くことに躍起になっている。沖縄防衛局は、１月２１日、現在進められている「埋め立て区域�◆州院廚卜拈椶垢襦嵋篶�区域�◆廚悗療攤重蠧�を３月２５日から開始すると「県」に通知したが、これもそうした策動の一環だ。今回狙われている区域は、辺野古側の３３万５５０平方メートルで、現在の「埋立区域�◆州院廚裡鞠椣幣紊量明僂箸覆襦�
このような中で、集会は、開催された。午前１１時からの本集会に先立ち、発言に起った「沖縄平和運動センター」議長・山城博治氏は、「安倍は、３月２５日に、埋め立て区域�△謀攤修鯑�れるという。大浦湾の工事も、軟弱地盤で設計変更申請が避けられない状況だが、知事から権限を奪ってでも工事を強行するだろう。しかし、沖縄は、不屈の精神で闘い続ける。安倍には負けない。安倍に譲る未来はない。２月の県民投票で新基地反対を示し、その民意を行動で示す万余の結集をもって、新たな土砂投入を迎え撃とう」と訴えた。本集会は、「参加しないだの、３択にしろだのと、訳の分からない状況が続いたが、県民投票は、全市町村でできそうだ。われわれの意思を２・２４で示そう」という前名護市長・稲嶺進氏の発言などを受けて、最後に、「日・米両政府に翻弄されることなく、沖縄のことは沖縄県民が決める。政府が言い訳のできないような圧倒的な辺野古新基地建設反対の県民の民意を示すために奮闘しよう」という集会アピールを採択していった。
｢Ｎ４護岸｣｢Ｋ８護岸｣建設への踏み込みを断じて許すな
 沖縄防衛局は１月２８日、新たに大浦湾側で、「Ｎ４護岸」の建設に踏み込んだ。「Ｎ４護岸」は、辺野古崎の先端部から東方向に伸びる全長１３５メートルの護岸で、これまでに着工された護岸としては８ヵ所目となる。さらに、その完成後には、護岸の先端部から大浦湾の沖合に向かって伸びる「Ｋ８護岸」の建設にも着手する計画だという。
「Ｋ８護岸」は、全長５１５メートルだが、その建設予定地付近の海底には、移植対象のサンゴ群が生息している。このサンゴ群を含む小型サンゴ３万９５９０群体、大型サンゴ類２２群体について、沖縄防衛局は、昨年１２月、「特別採捕許可申請」を行なっていたのだが、「県」は１月１６日、「埋め立て承認を撤回している」ことを理由に「不許可」とした。これに対して、沖縄防衛局は、２２日、御用学者どもをかき集めて開いた「環境監視等委員会」で、「サンゴを移植せずに護岸工事に着手しても、サンゴの生息環境に影響がない」なる「判断」を出させ、これを盾に、サンゴ群まで約５０メートルの距離に迫る「２５０メートル分の護岸建設は可能だ」と強弁して、工事に突き進んでいるのだ。しかし、「Ｋ８護岸」の２５０メートル分だけでも、辺野古崎から長島に至る海域を塞ぎ、大浦湾の海流を大きく妨げることになるのは必至であり、サンゴの生息に破壊的影響を与えずにはおかないことは、素人目にも分かることだ。
政府―沖縄防衛局の意図は、明らかだ。それは、３月２５日に策動されている「埋立区域�◆廚悗療攤重蠧�と連動したものだ。現在、埋め立て土砂の海上からの搬入に使っているのは、大浦湾の最も北側にある「Ｋ９護岸」１本だけで、１日当たりの土砂の供給量は限定的だ。これでは、「埋立区域�◆州院廚茲蠅呂襪�に大量の土砂を必要とする「埋立区域�◆廚遼笋疥�てに、いつまでかかるか分かったものではない。そこで、「Ｎ４護岸」とその後に続く「Ｋ８護岸」の一部を早期に建設し、これらを「Ｋ９護岸」に次ぐ２本目の荷揚げ用桟橋として使って、埋め立ての作業効率を一気に倍増させようという算段だ。軟弱地盤があるために着工できていない大浦湾側で新たな護岸建設に着工することにより、「県民投票」を前に、「工事の進捗」を強くアピールする意図も透けて見える。
言うまでもなく、「Ｋ９護岸」にしても「Ｋ８護岸」にしても、埋め立て土砂の荷揚げ用桟橋として使うことは、「埋立承認願書」には書かれていない。明確な工法変更であり、知事への「設計概要の変更申請」とその「承認」なしには、到底できないことだ。違法に違法を重ねる許しがたい行為だ。
新たな護岸着工に、海上からも、「工事用ゲート」からも、「違法工事をやめろ」、「埋め立てをやめろ」という怒りの声が上がった。
追いつめられているのは政府―沖縄防衛局の側だ
こうして、しゃにむに埋め立て工事に踏み込んだ政府―沖縄防衛局だが、先の展望があるわけではまったくない。何よりも、大浦湾側の埋め立て予定地直下には、「活断層の可能性」が指摘される２本の断層が走っており、なおかつ「マヨネーズ並み」とも言われる「超軟弱地盤」が横たわっている。誰がどう考えても「立地不適」だ。
とりわけ「超軟弱地盤」をめぐっては、このかん、深刻な状況が次々と明らかにされている。水深が極めて深い大浦湾の埋め立てをめぐって、沖縄防衛局は、当初、海底の基礎部分に石材を敷き詰め、その上に「ケーソン」と呼ばれる大きなコンクリートの箱（最大で長さ５２メートル、高さ２４メートル、幅２２メートル）を並べて護岸とすることを計画していた。これが「Ｃ護岸」（「ケーソン護岸」）である。その計画の大前提は、「基礎地盤については、砂・砂礫層が主体であり、長期間にわたって圧密沈下する軟弱な粘性土層は確認されていない」（「埋立承認願書」の「設計概要説明書」、「環境保全図書」）ということだったのだが、２０１６年３月に沖縄防衛局に提出されたボーリング調査の報告書は、その想定が大きな誤りであったことを示した。
地盤の強度は、「Ｎ値」で表される。「Ｎ値」とは、「ボーリングロッド」（試料採取用の筒状の鋼管）の先端に「サンプラー」（試験杭）を取り付け、「ボーリングロッド」の頭部に重さ６３・５キロのハンマーを７５センチ落下させて、「サンプラー」を３０センチ地中に食い込ませるために必要な、ハンマーの打撃回数である。「Ｎ値」が大きいほどその地盤は強固とされ、一般的に、大型構造物の基礎としては「Ｎ値５０」以上が必要だと言われる。ところが、大浦湾の調査では、その「Ｎ値」が「ゼロ」の地点が多数見つかっている。「Ｎ値ゼロ」というのは、地盤が軟らかすぎて、ハンマーで打撃を加えるまでもなく、「サンプラー」を置いた途端に、その自重だけでズブズブと地中に沈み込んでしまい、測定ができない状態のことだ。地盤が「マヨネーズ並みの軟らかさ」（日本大准教授・鎌尾彰司氏 地盤工学）だということだ。こうした軟弱地盤が広範囲で広がっているのである。その上に構造物を載せれば、地盤沈下や液状化は避けられない。その前に、投下した基礎石材も「ケーソン」も、すべて泥の中に沈むことになる。「県」が、このままでは「護岸倒壊の恐れがある」として、「埋立承認撤回」の理由の一つにこの問題をあげたのは、まったく当然のことだ。
その深刻な事態を隠すため、これまで沖縄防衛局は「超軟弱地盤」の存在について、「調査中」だの、「地盤の強度はＮ値だけでなく総合的に判断する」だのと称してシラを切り通してきたのだが、２０１８年１０月、「県」の「埋立承認撤回」に対して国交相に「行政不服審査請求」を行なった際の「審査請求書」で初めて「軟弱地盤」に言及し、「地盤改良工事を行なう」と表明し、そしてついに１月３０日には、衆院の代表質問で首相・安倍本人が「軟弱地盤」の存在を認め、「改良工事が必要になる」との考えを政府として初めて明らかにし、３１日には「設計変更を県に申請する」方針を公式に表明せざるを得なくなっている。要するに、大浦湾の埋め立てには大規模な地盤改良工事が避けられず、それをやるなら「県」知事に「設計概要の変更申請」を行ない、その「承認」を得なければならないのだが、「承認」の見込みはなく、その時点で工事は止まるということだ。
地盤改良をめぐる困難はそればかりではない。政府―沖縄防衛局は、「サンドコンパクションパイル（ＳＣＰ）工法」、「サンドドレーン（ＳＤ）工法」によって、「所定の安定性を確保して行なうことが可能」（「審査請求書」）だとうそぶいているが、その破綻が日に日に明らかになっているのだ。「ＳＣＰ工法」とは、海底地盤にケーシングパイプによって砂の杭を大量に打ち込み、振動させることで、強固に締め固めた砂の杭と軟弱な枯土層を一定の割合で強制的に置き換えて、地盤の強度を増加させる工法であり、また「ＳＤ工法」は、海底の地盤に砂の杭を打ち込み、砂の杭と敷いた砂の層を通して粘土層に含んだ水を排出させて地盤を強化する工法だという。
問題は第１に、その砂杭の本数である。昨年末の時点で沖縄防衛局は、使用する砂杭は護岸部で２万本、埋め立て部で２万本の計４万本という想定を国土交通省や「県」に示していた。それだけでも気が遠くなるほどの数なのだが、追加で行なったボーリング調査の結果を受けて再検討した沖縄防衛局の「報告書」では、使用量の想定が計約６万本に跳ね上がっている。内訳は、「ＳＣＰ工法」を使う護岸・岸壁部（約１７ヘクタール）の地盤改良に約４万本、「ＳＤ工法」を使う埋め立て部（約４０ヘクタール）に約２万本を使用するという。しかも「琉球新報」によれば、計約６万本という数字は過少申告で、「報告書」を詳細に分析すると、その他にさらに浅瀬部分で１万３５４４本を使うことになっており、合計では７・６万本のぼるという。地盤改良工事の範囲も、５７ヘクタールから６５ヘクタールに広がる。「軟弱地盤」は、これまで指摘されてきた「Ｃ１護岸」建設予定地周辺ばかりでなく、大浦湾側の埋め立て予定地の全域と言っていいほど広範囲にわたっているのであり、途方もない費用と工期を要する大工事とならざるをえない。「報告書」では、すべての地盤改良工事を３年８ヵ月で完了することになっているが、それは突貫工事ができた場合の話で、実際の工期はさらに延びることになる。
したがって、必然的に第２に、使う砂の量がこれまた膨大になるのだが、その調達が困難なことから、沖縄防衛局は、杭の材料として、砂だけでなく「スラグ」（金属の製錬に際して溶融した金属から分離してできる鉱物成分などを含むカス）を使用することも検討しているという。言うまでもなく、７・６万本もの砂杭を大浦湾に打ち込んだら、海底に堆積した泥が湾全体に拡散・流出する。加えてこんな「スラグ」まで大量投入したら、鉄などの鉱物成分が溶け出て、水質を激しく汚染することは明白だ。こんなことをやったら、大浦湾全体を「死の海」に変えてしまうことになるのは、火を見るよりも明らかだ。こんな途方もないデタラメ、こんな途轍もない破壊行為が許されるわけがない。
第３は、政府―沖縄防衛局の想像をはるかに上回る「超軟弱地盤」が、新たに発見されていることだ。沖縄防衛局が２０１４年から１６年まで行なったボーリング調査では、最も深い軟弱層は水深約７０メートルまでとされていた。水深約３０メートルの海底から、軟弱層が約４０メートルの深さまで達しているというものだ。ところが沖縄防衛局の先の「報告書」によれば、追加のボーリング調査を大浦湾の約５０地点で実施したところ、これまで判明しているものよりさらに２０メートルも厚い軟弱層が、「Ｃ１護岸」の建設予定地点で見つかったというのだ。水深３０メートルの海底から約６０メートルにもわたって軟弱層が続いているというわけだ。護岸内側の埋め立て部分でも、水深約８０メートルの厚い軟弱層が発見されているという。同じ「報告書」には、工事が可能な最大深度は水深７０メートル程度だとも記載されている。前出の鎌尾氏は、「水深９０メートルまでの地盤改良工事は知る限り例がない。国内にある作業船では難しいのではないか」、「改良深度が２０メートルほど足りない分、未改良の軟弱地盤が下層に残り、長期間にわたる地盤沈下が発生するだろう」と指摘している。政府―沖縄防衛局は、まさに深い深い泥沼にはまっているのだ。
新基地建設は、民意を力で蹂躙し戦争を準備する暴虐な工事だが、技術的にも「荒唐無稽な工事」（「琉球新報」）であることが、ますます鮮明になっている。窮地にはまり、追いつめられているのは、政府―沖縄防衛局の側だ。沖縄労働者人民の怒りと闘いはいっそう強く、激しく燃え上がっている。３月２５日の「埋立区域�◆廚悗療攤重蠧�の策動に対しては、「３・１６県民大会」の開催が呼びかけられている。勝利のカギは、現地集中と実力闘争の爆発だ。天皇上陸阻止沖縄青年実行委員会は、沖縄労働者人民の怒りの先頭で闘いぬく決意だ。
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