7月26日に「実行委員会」を結成、「反戦・反失業」を闘う団結めざし夏祭り準備に突入
8月13日から15日までの3日間、山谷・玉姫公園を会場にして、東京・山谷日雇労働組合(東京・山日労)が呼びかけた「2018年山谷夏祭り実行委員会(実行委員会)」によって山谷夏祭りが開催された。
東京・山日労は、安倍の改憲攻撃が激化する中、2018年前半の闘いを全力で闘いぬいてきた。寄せ場労働運動の原点である「一人の野垂れ死にも許さない」を合言葉にした越年・越冬闘争を貫徹し、その直後には、天皇主義右翼ファシスト=国粋会金町一家の解体にむけた「日雇い労働者全国総決起集会」を全国に呼びかけ、山谷のドヤ街を制圧する戦闘的なデモを闘いぬいた。2018年春闘では、山谷で手配する業者への春闘要求を皮切りに、寄せ場・日雇い労働者の使い捨てによって利益を上げる元請けゼネコン追及行動、安倍の「働き方改革」攻撃を担う厚生労働省との団体交渉、日帝資本の頂点に立つ日本経団連弾劾行動を闘いぬいた。また、寄せ場からあらゆる産別労働者との階級的団結を強化するために、「君が代」不起立を闘う教育労働者の闘いへの支援行動を闘い、労働者の国際連帯を実践すべく、フィリピントヨタ労組の解雇撤回争議への支援行動を闘いぬいてきた。とりわけ強調すべき闘いは、安倍の「働き方改革関連一括法」の成立強行を阻止すべく、「連合」などの労働運動勢力が闘いを放棄する中、唯一の労組部隊として、「翼賛国会粉砕」の旗幟を鮮明にして対国会闘争を闘いぬいたことだ。
これらの闘いを通して、東京・山日労の陣容は強化され、山谷労働者の東京・山日労への共感は着実に増している。東京・山日労は、2018年前半期の格闘と地平を多くの山谷労働者と共有し、さらに2018年後半の闘いが、秋の臨時国会での改憲をめぐった攻防が一挙に強まることが予想される中、闘う山谷労働者の部隊をさらに強化・拡大するためのステップとして山谷夏祭りに取り組むことを決定し、7月26日に「第1回実行委員会(結成会議)」を広く呼びかけた。
2018年前半期の闘いを共に担いぬいた労働者が多数結集して、「結成会議」は開催された。「結成会議」では、山谷夏祭りの基調を簡潔に表現した「『2020年オリンピック』を口実にした日雇い・野宿労働者の排除を許さんぞ」「『働き方改革』を粉砕するぞ」「改憲攻撃を粉砕するぞ」「『反戦・反失業』を闘うぞ」「戦争国家作りを許さんぞ」「安倍政府を打倒するぞ」などの「2018年山谷夏祭り」のスローガンが確認された。その後、「本部」「炊事」「設営」などの班編成が行なわれ、長年の経験を蓄積している労働者を中心に、炊き出し、屋台、ステージ企画などの準備にむけた会議が行なわれていった。
闘いの連続、猛暑の中で夏祭り準備が取り組まれる
「実行委員会」の結成後も、山谷労働者は様々な闘いに決起した。8月に入ると、大間原発建設阻止の現地闘争を闘い、横須賀からの海自護衛艦のソマリア沖出撃阻止を闘い、在沖米海兵隊の北海道・矢臼別に乗り込んでの実弾砲撃―「本土」移転演習阻止の行動を旭川で闘った。8月9日には、狭山上告棄却41ヵ年糾弾闘争に決起した。
一方、夏祭りの準備は多岐にわたる。山谷労働者の現場での経験を活かしたステージ設営にむけた設計や資材の見積もり、工程の計画作りもあれば、アブレ(失業)―野宿生活を強いられながらも、玉姫公園で旧友と出会い、日頃の栄養不足を補う炊き出しへの期待に応えるメニュー作り、日頃の疲れを癒す笑いを呼び起こすようなゲームや「実行委員会」の企画、山谷労働者との結びつきを大切にし、越年・越冬と夏祭りには欠かさず出演してくれる「東京大衆歌謡楽団」との連絡・調整、そして、もっとも重要なのが、3日間の炊き出しや物資輸送、資材購入のための資金作りだ。やることは山ほどある。
まさに、山谷夏祭りの準備過程は、闘いつつ、さらに山谷労働者の団結を強め、闘いへの結集を拡大するための、日頃の活動とは違った苦労がある。だが、「実行委員会」に結集した山谷労働者は、38度を超す気温のなかで、すべての準備を整えていった。「闘う仲間を増やし、闘いを前進させる」という確信がなければ、なかなかできないことだが、「安倍を打ち倒す労働者の団結と闘いを作るんだ」という決意にあふれた山谷労働者たちによって準備は、進められていった。
8月13日、玉姫公園で夏祭りに突入
山谷夏祭りの初日である8月13日、東京・山日労と「実行委員会」の労働者は、日頃、労働相談―机出し活動を行ない、「城北労働・福祉センター(センター)」による「立て看」撤去策動をはねのけて山谷労働者に闘いへの結集を呼びかける看板が設置されている「センター前」に結集し、一団となって玉姫公園への移動を開始する。ことあれば弾圧しようと監視する警視庁浅草警察の私服デカは、労働者の勢いに圧され、何の手出しもできない。玉姫公園では、東京・山日労が呼びかける山谷夏祭りのビラを見て、手伝いをしようと多くの山谷労働者が「実行委員会」の部隊の到着を待っている。午前7時過ぎから玉姫公園のゲートが開かれ、準備作業が始まる。
今年の山谷夏祭りの準備で、例年と大きく違ったのが「猛暑対策」だ。昨年の夏も暑かったが、今年の暑さは「殺人的」だ。実際、山谷労働者が就労する「特別就労対策事業」の現場では、日頃の栄養不足、睡眠不足もあるだろうが、熱中症で救急搬送される労働者が相次いでいる。そんな中での準備作業になるため、「実行委員会」は何度も検討を重ねていった。そして、例年はすべて建設現場で使う足場材で作っていたステージの床部分をプラスチックパレットを積み上げることで作業時間の短縮を図った。1枚20キロの重量があるパレットの搬入は、玉姫公園近くの事業所が「うちのフォークリフトで運んでやるよ」と快く引き受けてくれた。山谷労働者の日頃の苦労を間近で見、山谷労働者が山谷夏祭りを楽しみにしていることを知っている人たちからの嬉しい協力だ。
さらに今年は、設営作業や炊き出しの切り込み作業の場所にスポット・クーラーが設置された。決して安くはないレンタル費用だが、例年に増して「山谷夏祭りを成功させてください」という一筆とともに送られてきた資金カンパによって、これらの「猛暑対策」ができることになったのだ。
そして、午後5時、玉姫公園のゲートが開かれ、公園の外周で待っていた300人を超える労働者が、一斉に入ってくる。炊き出しを受け取る労働者、無料のカキ氷、無料のウーロン・ハイのテーブルに向かう労働者、東京・山日労に送られてきた支援の衣類を選ぶ労働者によって、玉姫公園は埋められていった。
全国寄せ場からの連帯メッセージ
山谷夏祭りを楽しみにしてきた労働者によって、玉姫公園が埋め尽くされる中、東京・山日労の労働者がステージに立ち、2018年山谷夏祭りの開会を宣言する。「国会で『働き方改革』の法律が強行成立した。労働者の権利を否定するような風潮が強まっている。インターネットの番組では、山谷労働者が就労している『輪番』の仕事を、隠しカメラ、隠しマイクを使って取材し、『山谷労働者が甘い汁を吸っています』なぞという、予断と偏見を煽るようなコメントを流している。1週間に1日だけの『輪番』の仕事のどこが『甘い汁』なのか。『2020年オリンピック』が近づくにつれ、山谷の日雇い労働者、野宿する労働者を排除する動きが強まるだろうが、山谷夏祭りのために力を合わせてきた労働者の団結があれば、跳ね返すことはできる。安倍は、秋の臨時国会で改憲にむけた動きを一気に強めるだろうが、『反戦・反失業』の闘いをさらに強め、改憲と戦時国家体制作りを粉砕していこう」。
続いて、同じ時期に夏祭りを開催している全国の寄せ場からの連帯メッセージが紹介される。「反戦・反失業を闘う釜ヶ崎労働者の会」からは、「釜ヶ崎では、労働者の拠点であったセンターを奪い、寄せ場を解体する攻撃が強まっています。現在、センターの横を走る南海電鉄の高架の下にセンターの機能を移す動きが強まっています。この動きは、釜ヶ崎で活動する団体を『西成特区構想』の土俵に誘い込み、『労働者の意見も聞いた』というアリバイ作りに利用するというやり方で進められています。労働者をセンターから追い出し、民間企業の金儲けを目的にした『西成特区構想』と正面から対決し、粉砕する労働者の闘いが求められています。8月18日には、全国の寄せ場夏祭りの一環として、『夏祭り上映会』を開催します。これを成功させ、秋からの闘いの前進・拡大を実現していく決意です」。福岡・築港日雇労働組合からは、「福日労は、『福岡日雇い団結夏祭り』の開催をもって、年明け以来闘ってきた、福岡市役所に対する『仕事よこせ』の毎週の『水曜行動』や築城、佐世保、日出生台の現地で闘いぬいてきた『反戦』の闘い、佐賀県玄海町で闘った玄海原発再稼働阻止の闘いの地平を組合員全体で共有し、秋からの闘いに一丸となって打って出る日雇い・野宿の労働者の団結を打ち固めます。安倍は、9月の自民党総裁選で『三選』を果たし、秋の臨時国会で憲法9条に『自衛隊』を書き込み、『戦争を放棄する』と定めた憲法を、まったく逆の、『戦争をする』という内容に変えようとたくらんでいます。戦前のように、朝鮮―中国―アジアの労働者人民の虐殺に手を染めた歴史を再び繰り返さないために闘わねばなりません。山谷の仲間たちが、夏祭りを成功させ、秋からの闘いを闘う団結を打ち固めることを願っています」。沖縄・首里日雇労働組合からは、「名護新基地建設阻止の闘いは、いよいよ決定的な局面を迎えました。安倍政府―沖縄防衛局は、8月17日にも、埋め立て土砂の投入に踏み込もうとしています。問答無用で工事を強行しようというのです。辺野古現地では、猛暑の中、土砂投入を阻止すべく、労働者人民の懸命の闘いが続いています。わが沖日労も、連日現地に通って、闘いを共にしています。辺野古現地を先頭にした労働者人民の闘いこそが、工事を止める力です。現地大集中と実力闘争こそが、勝利への道です。沖日労は、この闘いの先頭で闘いぬく決意です。沖日労は、『反戦』と『仕事寄こせ』の闘いを両輪として、失業も貧困もない沖縄、基地も戦争もない沖縄を目指して闘います。安倍政府の改憲攻撃がますます猛威をふるっていますが、断じてこれに屈するわけにはいきません」。
山谷夏祭りの成功を寄せ場労働運動の前進へ
開会の集会が終わると、第1日目の企画が始まる。恒例のビール早飲みに加えて、今年は、アルコールが飲めない労働者や、子どもたちも参加できるように、ラムネ早飲みも行なわれる。早飲み競争のはずだが、参加者の中には、日頃飲めない冷え切ったビールをゆっくり堪能する労働者もいる。ラムネびんの中のビー玉に邪魔されてびんを空にすることに苦戦する労働者がいる。中には、「何十年ぶりのラムネだ」と言い、味わって飲む労働者もいる。ステージの上で繰り広げられる参加者の様々な仕草が、玉姫公園に集う労働者の笑い誘う。玉姫公園を笑いの渦にした企画に続いて、カラオケ大会が開始される。日頃は無口に見えていた労働者が以外な曲目を選んで歌い、観客から驚きの声が出たり、「飯場で稼いだ金を全部カラオケスナックに注ぎ込んだな」といった野次を誘う。その後は、映画・「山谷(やま)―やられたらやりかえせ」の上映だ。山谷通りで労働者が機動隊とぶつかる場面では、「あの時、俺もいた」と自慢する労働者がいる。当時を知らない山谷に来たばかりの労働者からは、「凄いな」という驚きの声が漏れる。こうして、山谷夏祭りの初日は、玉姫公園に集った労働者が腹一杯食べ、屈託なく笑うことができる夏祭りとして盛況のうちに終了時間を迎えていった。
2日目は、午後5時からの炊き出しから始まり、企画としてスイカ割り、カラオケ大会が行なわれた。例年のように、スイカ割りでは客席を迷走する選手から観客が逃げ惑う場面があったり、一発で割る選手に拍手が起こったりといった場面が続いた。
山谷夏祭りの最終日である8月15日は、多くの山谷労働者が心待ちにしていた「東京大衆歌謡楽団」が出演する日だ。山谷夏祭りに出演することを楽しみにしている「東京大衆歌謡楽団」からは、「綱引き大会の景品にしてください」と、大型クーラーボックス一杯の冷えたビールが差し入れされた。今年も「山日労一座」が迷演を繰り広げる寸劇が行なわれ、「輪番」の仕事を潰すような番組に対する山谷労働者の怒りを表現していった。綱引き大会には、差し入れた当の「東京大衆歌謡楽団」のメンバーも飛び入り参加し、力の入った熱戦を繰り広げた。「東京大衆歌謡楽団」のステージでは、「2度と戦争による苦労がないように」という気持ちを込めた歌も歌われ、皆が一緒に歌った。そして、締めくくりは、「総踊り」として盆踊りが行なわれ、大きな輪ができた。
3日間の山谷夏祭りは、「山谷は、俺たち日雇い労働者の町だ」「日雇い労働者の夏祭りを成功させよう」と頑張る労働者が奮闘し、大きく盛り上がった。また、「非正規雇用」からさえ弾き出され、「特別就労対策事業」を頼りにして山谷にたどり着いた若年層の労働者が、山谷の闘いの歴史に触れる機会にもなった。東京・山日労が様々な産別労働者の闘いに足を運ぶことで山谷との縁を深くした労働者からの支援カンパも昨年以上に増えた。玉姫公園の本部席に置かれたカンパ箱には、多くのカンパが寄せられた。安倍政府による労働者使い捨てに対する怒り、改憲攻撃に対する怒りと、「反戦・反失業」を基調にして闘う東京・山日労への期待が大きく広がっていることを感じさせる夏祭りであった。東京・山日労は、この成果を寄せ場労働運動の更なる飛躍・前進、階級的労働運動の前進・拡大、安倍政府打倒にむかう隊列の拡大に結びつけることを決意している。
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