「不動産王」・トランプによるディール（取引）パフォーマンス
６月１２日の米朝首脳会談において、署名された「共同声明」の主な内容は、「トランプ米大統領は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）に安全の保証を与え、金正恩委員長は、朝鮮半島の完全な非核化に向けた責務を再確認」「米朝双方の国民の平和と繁栄を希求する意志に基づき、新しい米朝関係の構築を約束」「朝鮮半島の永続的で安定的な平和体制の構築に尽力」「北朝鮮と韓国による『板門店宣言』を再確認」「朝鮮戦争の捕虜や行方不明兵士の遺骨の回収と返還に取り組む」「会談結果の実行のため、ポンペオ米国務長官と北朝鮮高官による交渉をできる限り早く開催」ということであると言う。この「共同声明」以外でも、トランプは、記者会見の中で、米韓合同軍事演習を「戦争ゲーム」と呼び、「われわれが（北朝鮮と）交渉している状況で『戦争ゲーム』をするのは不適切だ」としたり、在韓米軍の縮小・撤退は「今ではない」と断りつつも、「（駐留兵士を）家に帰還させてあげたい」と、在韓米軍削減に改めて意欲を示してみたり、「北朝鮮が保有する生物化学兵器の廃棄」や「北朝鮮市民の人権問題」「「日本人拉致問題」を米朝首脳会談で取り上げたとしてみたりしている。
この「史上初の米朝首脳会談」をもって、朝鮮反革命戦争突入の危機が遠のいたと考えるとすれば、それは、余りにも早計であろう。
「共同声明」では、「朝鮮半島の完全な非核化」の定義があいまいなままであり、核兵器やミサイルをどう廃棄・搬出するのか、その期限、査察の方法など具体策は示されておらず、「朝鮮戦争の終結」も盛り込まれていない。トランプの記者会見における米韓合同軍事演習の中止発言については、６月１９日に８月実施予定の米韓合同軍事演習・「フリーダム・ガーディアン」の中止を発表しているが、韓国が独自に行なう有事対応訓練・「乙支訓練」をどうするかは、「議論中」であり、他の米韓合同軍事演習の中止についても「未定」となっている。そもそも、トランプのいう米韓合同軍事演習の中止も在韓米軍削減も、その理由は、「とても（費用が）高額だ」というものである。「生物化学兵器の廃棄」や「北朝鮮市民の人権問題」、「日本人拉致問題」にいたっては、「慢性的な反イスラエルの偏見」を理由に国連人権理事会を離脱したトランプが�牴燭鬚�言わんや�瓩任△蹐Α�「史上初の米朝首脳会談」は、前例を踏襲しない「ディール（取引）メーカー」の米中間選挙を見据えたパフォーマンスにすぎない。
「北朝鮮の核問題」の歴史は、「合意と破綻の繰り返し」
「北朝鮮の核問題」の歴史は、「合意と破綻の繰り返し」の歴史であるといわれる。
１９９４年に、米クリントン政権との間で結ばれた北朝鮮の「核問題」に関する「核開発凍結」の「米朝枠組み合意」は、ブッシュ政権の登場と共に「（北朝鮮は、）『悪の枢軸』」とされ、その後、この「合意」は破棄されている。「合意」の内容は、「北朝鮮が黒鉛炉を止める見返りに、日・米・韓などが、軽水炉原発や重油を提供する約束をした」というものである。この「合意」以前に、クリントンは、寧辺の「核施設」への空爆準備を命じ、「北朝鮮は、１００パーセント反撃する。米・韓の死傷者は５０万人以上」とも想定されていたのである。また、２００５年の北朝鮮の「核問題」をめぐる「６ヵ国協議」における「朝鮮半島の非核化に関する共同声明」も、「声明」合意後に破綻し、「６ヵ国協議」自体も破綻している。「声明」の内容は、「北朝鮮は、全ての核兵器と既存の核計画の放棄を約束し、引き換えに米国が北朝鮮攻撃の意図はない」と確認するものであり、「米朝が国交正常化のための措置を取る」ことまでも約束したものであった。
資本主義は、恐慌による一挙的な価値破壊以外に資本の絶対的過剰を解決する方策を持たない。米帝・トランプの「アメリカ第一主義」に基づく保護貿易主義は、通貨切り下げ競争から基軸通貨＝ドルの大崩落をもって表れるであろう未曾有の世界大恐慌の爆発の時を、ますます切迫したものにしている。米帝・トランプは、「安全保障は、あらゆる経済問題を含む」と主張、「安全保障」を理由に日帝をはじめ欧州連合（ＥＵ）やカナダへの鉄鋼・アルミ製品の高関税措置に踏み切った。ＥＵやカナダは報復関税を視野に対抗措置に踏み切る方針を打ち出しており、「主要７ヵ国」（Ｇ７）サミットは、「（米国が孤立する）６＋１という（対決）構図」となっている。米帝は、中国にも知的財産を理由に関税を発動する方針を公表している。このトランプの保護貿易主義は、今や、報復関税の応酬から激しい「貿易戦争」になるに至っている。
こうした世界大恐慌爆発情勢の深化の中で、帝国主義は、世界大恐慌爆発以前に、革命勢力と体制攪乱要因の根絶を狙った国際反革命戦争をますます拡大・激化させていかざるを得ないのであり、朝鮮反革命戦争突入の危機が遠のいたとするのは誤りであろう。
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