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東北関東大震災被災労働者人民支援大運動を

辺野古現地レポート  護岸建設阻止をかけた2月の闘い
(1262号6面)

2月3日 「土曜大行動」に300人が結集して工事阻止を確認

 キャンプ・シュワブの南沿岸部では、埋め立てに向けて、「K2護岸」、「K4護岸」の建設工事が、激しく進められている。そのために「工事用ゲート」では、沖縄「県」警機動隊の暴力だけを頼りに、資機材の搬入が連日のように強行され、また海上では、海上保安庁の暴力に守られて、砕石の海上搬入がくり返されている。これに対して「工事用ゲート」前でも、海上でも、さらには国頭や本部町の砕石場でも、石材の海上搬出港―本部港でも、労働者人民の手によって、工事阻止の果敢な闘いが展開されている。

 2月3日には、「土曜大行動」が開催された。労働者人民の現地大結集で確実に工事を止めることを目的に、昨年10月から毎月第1土曜日に設定されたものだ。「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」が主催したこの取り組みに、約300人が結集した。名護市長選の投開票日を翌日に控えて、参加人員は少な目だが、意気は高い。

 午前中、「工事用ゲート」前に座り込んだ労働者人民からは、「浅瀬の簡単な所から工事を進め、県民にそれを見せつけて、諦めを誘おうとしているだけ。工事は、いずれ頓挫する。挫けずに闘いを続けよう」、「基地を移せばいいのではない。なくさなければいけない」、「与那国に続いて、宮古、石垣にも自衛隊基地が作られようとしている。基地の島にさせるわけにはいかない」との声が上がった。

 正午から「メイン・ゲート」前のテントで開催された本集会では、「オール沖縄会議」共同代表・高良鉄美氏が、「安倍首相は、昨日、(新基地を「本土」に造ることは、)本土の理解が得られないと言った。辺野古に新基地を造るのに沖縄の理解は要らないというのは、どう考えても差別だ」と発言し、その後、沖縄「県」選出の国会議員などから、「決して新基地を認めるわけにはいかない。断念させるまで頑張っていこう」などの発言が続き、最後に「団結ガンバロー」で集会を閉じた。

名護市長選挙の結果と、急加速される新基地建設工事

 2月4日投開票の名護市長選は、安倍政府の全面支援を受けた渡具知が、新基地建設反対を掲げる「オール沖縄」の現職・稲嶺を破り、勝利するという結果となった。3458票差での稲嶺の敗北は、残念ながら「大敗」と言わねばならない。

 今回の市長選は、名護新基地建設を強行するために、安倍政府と国政与党が人口6万人の一地方自治体に総力戦で襲いかかりるという、「異例・異常な選挙」(琉球大学名誉教授・比屋根照夫氏)となった。稲嶺が相手にしたのは、渡具知という一候補ではなくて、安倍政府―日帝国家権力総体だったのである。政府・自民党は、官房長官・菅を筆頭に、幹部が入れ替わり立ち代わり名護入りしては、名護市内に事業所を置く企業や業界団体の締め付けに回った。現地入りした国会議員は100人を超えたとも言われる。そのほとんどが、「ステルス作戦」と称して街頭演説にも出ずに隠密に企業を回り、票固めに勤しんだ。官房長官・菅にいたっては、東京に戻っても、市内の企業・団体幹部に直々に携帯電話をかけまくり、票固めと期日前投票への動員を、事細かに指揮していたとも報道されている。菅が選挙対策に投じた官房機密費は、5億とも10億ともささやかれている。前回は、「自主投票」だった公明党も渡具知を推薦し、創価学会とともに全国動員で市内をうろつき回った。

 選挙の「異例・異常」さを端的に示しているのが、期日前投票の数字だ。有権者の四四・四パーセント、投票総数の実に57・7パーセントが、投票日を待たずに2月3日までに投票を済ませていたというのだ。組織ぐるみの強引・不正な集票活動―投票動員が、想像をはるかに超える規模で行なわれた証だ。

 こうして政府・与党総がかりで地方選挙に全面介入し、力とカネにモノを言わせて、意に沿わぬ首長の首を切り飛ばしたのである。安倍政府がここまで躍起になって介入した最大の理由は、名護市長が持つ行政権限が新基地建設の進捗を実際に阻んできたからだ。この「阻害要因」を取り除かない限り、新基地建設の展望が立たないという焦りからだ。

 稲嶺の敗因については、様々な指摘が行なわれているが、結局のところそれは、有権者の圧倒的多数が「新基地建設反対」であったにもかかわらず、それを票として固めることができなかったことにある。NHKの出口調査によれば、投票者の75パーセントが「新基地反対」と回答し、「琉球新報」の調査でも、61・7パーセントが「反対」と回答していた。しかし、結果は、稲嶺の「大敗」である。「琉球新報」の調査によれば、「反対」と回答した人のうちの約24パーセント、このうち「どちらかと言えば反対」と回答した人の約6割の票が渡具知に流れたという。「新基地建設の賛否を一切明らかにしない」という渡具知陣営の「争点隠し」の選挙戦術が功を奏したとも言えるが、この見え透いた選挙戦術が功を奏するには、それなりの理由がある。その最大の理由とは、「新基地建設には反対だが、工事は進んでいて、もう止められない」、「『オール沖縄』には、本気で工事を止める力もつもりもない」という有権者の諦めと不信の拡大であり、これに対する「オール沖縄」の等閑視である。

 現在の工事の激しい進行は、「県」知事・翁長が、2016年12月、「埋立承認取消」を自ら「取り消し」たことに発している。これによって工事が再開され、2017年2月には工事が本格化し、4月からは護岸建設が開始され、今や埋め立てのための土砂投入までが、さかんに叫ばれるまでになった。その間、翁長は、「あらゆる手段で建設を阻止する」と言いつつ、「埋立承認撤回」を渋るばかりか、護岸用石材の海上搬送のための奥港、本部港の使用まで許可してしまった。こうした現状に、「オール沖縄」候補への無力感と不信が拡がらないわけがない。今回の選挙の敗因は、翁長が自ら作ったものと言わざるをえない。

 この結果を受けて、安倍はさっそく2月5日朝、「(2016年の)最高裁判決に従って進めていきたい」と鼻息を荒くし、菅にいたっては、「選挙は結果がすべてだ。相手候補は必死に埋め立て阻止を訴えていたではないか」と言い放って、選挙期間中の「辺野古隠し」はどこへやら、あたかも「新基地建設賛成の民意が示された」かのごとく吹聴しつつ、新基地建設工事を加速させることを表明した。防衛相・小野寺は、6日の記者会見で、新基地建設をめぐって渡具知と「早期に協議に入る」と表明、在沖―在日米軍再編に「理解と協力」を示す市町村を対象にした「再編交付金」約135億円の支給にも言及した。これに対して渡具知もまた、「拒む理由がない」とホクホク顔で応じている。

 工事加速の動きは、即座に辺野古の現場にも表れている。市長選の翌2月5日には、「工事用ゲート」から、301台の工事用車両の搬入が強行された。6日には287台、7日にも318台の搬入が強行された。2月6日には、安倍政府―沖縄防衛局が、6月にも土砂投入を開始する計画であることも明らかになった。政府関係者が明らかにしたもので、名護市長選の「勝利」に味を占め、工事を加速することで、労働者人民の「諦め」と「辺野古離れ」を一気に拡大しようという魂胆だ。

 しかし、沖縄労働者人民は挫けない。市長選の結果に落胆の色は隠せないが、安倍政府総がかりの選挙介入への怒り、凶暴な新基地建設への怒りの方が、何倍も強烈だ。「工事用ゲート」前では、「名護市民にどうせ工事は止まらないという思いがあったのだと思う。埋め立て承認の撤回をしない県の対応に問題がある」、「とにかく基地を造らせず、工事を止めること。諦めない」、「県民の基地反対の気持ちは、簡単に変わらない。選挙結果で一喜一憂していたら運動はできない」と、怒りと闘志に満ちた叫びが上がった。

新基地建設工事に関連する名護市長の権限をめぐって

 新基地建設工事に関連する名護市長の許認可権には、①美謝(みじゃ)川の流路変更、②辺野古ダムの湖面の使用許可、③辺野漁港の占用許可などがある。稲嶺は、「この権限を行使して新基地建設を阻止する」姿勢を堅持してきたため、これまで実際に工事の進捗を阻んできた。市長選の「敗北」により、この権限が、稲嶺の手から渡具知の手に移ったことで、新基地建設工事全体にも大きな影響が出ることは否めない。

 ①「美謝川の流路変更」について
 美謝川は、辺野古ダムやキャンプ・シュワブ内を通って、大浦湾の埋め立て予定区域のど真ん中に注ぎ込んでいる。埋め立てによってその河口がふさがれることになるため、流路を変えなければ、新基地そのものができない。そこで、沖縄防衛局は、当初、辺野古ダムから東北方向に暗渠や開水路を引き、国道329号をくぐって「K9護岸」の北側に流すという最短コースの流路変更を計画していた。これに立ちはだかってきたのが稲嶺市政であった。美謝川は国の管理だが、中流域にある辺野古ダムや水道施設は名護市の管理で、一帯の流域も市の管理となっており、市の「法定外公共物管理条例」でも、流路変更には「市との協議」が必要だと定めている。この計画では、市との「協議」が避けられず、その同意を得ることは望むべくもない。

 そこで沖縄防衛局が思い立ったのが、市の管理域より下流から流路を変更するという新計画である。「これなら市との協議は必要ない」というわけだ。ところがそれは、市との「協議」を回避することだけを目的に、ひたすら無理と無茶を重ねたために、とんでもないものになってしまった。新基地の地下に1キロ以上にわたって暗渠を築き、しかもその暗渠を途中で直角に北に曲げて、「K9護岸」の北に河口をもっていくというものである。立案・設計に携わった者たちのうちで、「洪水の際には一体どうするつもりなのか」という素人の質問に自信をもって答えられる者は、多分、1人もいないであろう。

 沖縄防衛局は、2014年9月、この無茶な計画案を盛り込んだ「設計概要の変更申請」を当時の知事・仲井真に提出したのだが、さすがの仲井真も難色を示したため、沖縄防衛局は、この計画案に関する「変更申請」を取り下げざるをえなかった。以来、今日まで、この問題はずっと「棚上げ」状態が続いてきた。ところが今回、こうして流路変更を阻んできた市長権限が、渡具知の手に渡ることとなった。早晩、沖縄防衛局は、渡具知との「協議」を経て、原案通りの流路変更工事に突き進むであろう。

 ②「辺野古ダムの湖面の使用許可」について
 沖縄防衛局は、当初、埋め立てに使う土砂の一部を辺野古ダムの周辺の山を崩して調達すること、そのために国道329号を横断する形で、「第2ゲート」近くにベルトコンベア付き高架橋を建設し、辺野古ダム付近から埋め立て現場まで、ダンプカーとベルトコンベアで土砂を搬入することを計画していた。しかし、辺野古ダムにベルトコンベアを設置するには、名護市長の「辺野古ダムの湖面の使用許可」が必要であり、その許可が見込めないことから、ベルトコンベア付き高架橋の建設は計画倒れの状況が続いてきた。

 ちなみに、国道329号を「メイン・ゲート」から辺野古変電所方向に向かう途中に、国道の下をトンネルでくぐる軍用道路がある。国道の両側がキャンプ・シュワブだ。現在、このトンネル付近で大規模な工事が進められている。軍用道路をダンプカーが往来できるようにするための拡幅工事か、あるいは国道をまたぐ高架橋の建設工事だと思われる。これまで名護市長の反対でベルトコンベア付き高架橋を造ることができなかったため、ダムの湖面を通らずに、辺野古ダム周辺の土砂を、この軍用道路を使って南回りで埋め立て現場まで搬入しようという、沖縄防衛局の苦肉の策であろう。しかし、「湖面の使用許可」権限が渡具知の手に移った以上、今後は、この軍用道路とベルトコンベア付き高架橋の両方を使って、土砂搬入を一気に加速させるという可能性すら出てきた。
 ③「辺野漁港の占用許可」について
 沖縄防衛局は、当初、辺野古漁港とその周辺をブロック製作の作業ヤードとして占用することを計画していたのだが、稲嶺の反対によりそのメドが立たないため、埋め立て予定区域のうち、辺野古崎先端部に「中仕切護岸」を新たに追加設置し、先行的に埋め立てを行なって作業ヤードとすることを目論んでいた。それが今回、当初計画通りの占用が可能になろうとしているのだ。そのことはとりも直さず、労働者人民のカヌーや抗議船による海上抗議行動の拠点を奪い去ろうという許しがたい攻撃でもある。

護岸工事の強行を許すな

 1月のこのレポートで、埋め立ては「『N5護岸』の東側(辺野古崎寄り)区域、すなわち、『N5護岸』、『K4護岸』、『N3護岸』で囲われる区域が最初になる可能性が高い」と書いたが、それについては、訂正が必要となった。その区域を囲うための「K4護岸」の延伸工事がストップしたからである。最初の埋め立ては、「N5護岸」の西側(辺野古漁港寄り)区域、すなわち、「K1護岸」、「K2護岸」、「K3護岸」、「K4護岸」、そして「N5護岸」で囲われる区域となる模様だ。

 事情は以下の通りである。「K4護岸」の建設工事は、海に突き出す形で造成された「N5護岸」の先端部から開始された。工事は、「N5護岸」を道路代わりに使って、砕石を積んだダンプカーやクレーン車をその先端部まで運び、そこを支点にして、東向き(辺野古崎方向)と、西向き(辺野古漁港方向)の双方向に向かって砕石を投下していくというものであった。この「K4護岸」は、「N5護岸」の先端部から見て、西向きの護岸の長さよりも、東向きの護岸の長さの方がはるかに短いため、護岸の造成もそれだけ早く終わり、したがって「N5護岸」の東側区域から埋め立てが始まると見られていたのだが、実際には、東向きの砕石投下は、「N5護岸」の先端部から約35メートル東に進んだ地点で、ストップしてしまった。その代わり今や、西向きの砕石投下が猛烈な勢いで進められているのである。

 東向きの砕石投下がストップした理由は、1月下旬に名護市教育委員会が、「県」教育委員会とともに、辺野古崎突端部にある「長崎兼久遺物散布地」の陸上部分で、文化財調査を2月にも始めるという方針を打ち出したからだと言われている。同「散布地」は、「N3護岸」、「N4護岸」の建設予定地と重なっている。「文化財保護法」に基づく調査であり、調査が終了するまで、同「散布地」の範囲内ではいかなる工事もできない。調査に長期間かかったり、重要な遺物が発見された場合には、工事はさらに遅れることになる。工事のこれ以上の遅延を嫌った沖縄防衛局は、「それならば」とばかり、反転して、西向きの護岸工事に全力を集中し始めたのだ。

 「K4護岸」の工期は、沖縄防衛局の「工程表」では「22ヵ月程度」とされる。「K4護岸」の「K」は「傾斜提護岸」の頭文字だが、「傾斜提護岸」は、基礎砕石を敷きつめて長い「堤防」を造り、その両脇を「被覆ブロック」で固め、その上部を「均しコンクリート」などで蔽い、そのまた上部にコンクリート製の「擁壁」を載せ、さらに外側(海側)には「消波ブロック」を積み上げて、はじめて「完成」となる。海面からの高さは、現在で約4メートルだが、「完成」すれば約8メートルにも達する長城がそびえ立つことになる。「K4護岸」の場合、こうした工事をすべて「完成」させるのに「22ヵ月程度」を要するということであって、現在進められているような、砕石と「被覆ブロック」で「海を仕切る」というだけの工事なら、数ヵ月で終わる。沖縄防衛局は、この「K4護岸」と「K1護岸」、「K2護岸」、「K3護岸」が繋がり、海に「仕切り」ができ次第、各護岸は「未完成」のままにしておいて、直ちに土砂搬入―埋め立てに入ろうという腹なのである。

 沖縄防衛局が、こうして「突貫工事」に遮二無二突き進む意図は明らかだ。「埋め立て着工」という既成事実を、一刻も早く手にするためだ。「後戻りできないところまで工事は進んだ。どんなに反対しようが工事は止められない」という印象操作で、沖縄労働者人民に闘いを諦めさせるためだ。それだけが狙いの極めて政治的・アリバイ的な工事だ。

 沖縄防衛局の当初の計画では、大浦湾側の埋め立てから先に着手するはずであった。ところが、その見通しがまったく立たないのである。大浦湾側は、水深が深く、ただでさえ大工事、難工事が予想されるのだが、それに加えて、埋め立て予定区域に活断層が存在する可能性や、海底地盤が軟弱すぎて、巨大構造物を載せたらたちどころに地滑りや崩落を引き起こす危険性などが、専門家などからくり返し指摘されてきた。何より、この期に及んでもなお、ボーリング調査を続けているということが、沖縄防衛局の置かれた苦境と苦悩を端的に示している。海底地盤の状態にまったく自身が持てず、工法さえ定まらないというのが現状であろう。「活断層の可能性」に蓋をして、何らかの工法をひねり出したとしても、それは紛れもない「工法変更」であり、今度は、「公有水面埋立法」に基づく「設計概要変更申請」を「県」知事に出さねばならなくなる。追いつめられて焦っているのは、安倍政府―沖縄防衛局の方だ。その現われが、辺野古側の浅瀬埋め立てへの突進なのだ。

2月14日 300人の結集で「辺野古沿岸域活断層シンポジウム」

 2月14日午後6時から、那覇市前島の「かりゆしアーバンリゾート・ナハシェルホール」において、「辺野古新基地建設阻止!辺野古沿岸域活断層シンポジウム」が開催された。「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」が主催したこの催しに、辺野古帰りの労働者・市民をはじめ、300人が参加した。

 キャンプ・シュワブとその周辺を走る「辺野古断層」と「楚久断層」は、「活断層の可能性」か高いこと。この2本の断層は陸上部分にとどまらず、新基地建設予定地の直下や直近の海底まで伸びていること。こうした専門家の指摘や国会での追及に対して、これまで安倍政府は、「既存の文献によれば、辺野古沿岸域における活断層の存在を示す記載はないことから、『辺野古断層』及び『楚久断層』の2本の断層に係るものも含め、辺野古沿岸域に活断層が存在するとは認識していない」、「(海底地盤の安全性については、)問題ないものと認識している」なる「答弁書」を閣議決定して(2017年11月)、否定の強弁を続けてきた。

 安倍政府の欺瞞性は、第1に、「活断層の可能性」を否定するのに、沖縄防衛局がくり返し行なったボーリング調査や音波探査で蓄積してきた膨大なデータの分析・評価を根拠とせずに、「既存の文献」なるものを引き合いに出していることだ。自らが行なった調査では、よほど不都合なデータしか出てこなかったのであろう。ちなみに、政府は、データの開示要求に対して、「データが膨大で、実施中の業務もあり、示すことは困難」だと、理由にもならない理由でこれを拒否し続けている。

 第2に、「既存の文献」とは言っても、『新編・日本の活断層-分布図と資料』(活断層研究会編)という文献では、2本の断層はいずれも「活断層の疑いのあるリニアメント」に分類されている。また『名護・やんばるの地質』(遅沢壮一、渡邊康志編著)でも、それらを「活構造」と指摘している。「活断層の可能性」を指摘する「既存の文献」はいくらでもあるのである。では、政府が根拠にしている「既存の文献」とは何かというと、「国立研究開発法人産業技術総合研究所」がホームページで公開している「活断層データベース」と、「東京大学出版会」が出版した「活断層詳細デジタルマップ」であるという。そこに「辺野古断層」、「楚久断層」の記載がないから、両断層は「活断層ではない」と主張しているのだが、自らに都合のいいものだけ引っ張り出してくる姿勢は、まさに牽強付会としか言いようがない。

 そもそも、活断層の有無を閣議決定で決めることなぞ、できはしない。それは、調査データに基づく科学的検証に拠らねばならない。こんな当たり前のことすらまるで通用しないのが、安倍政府なのである。

 こうした政府の強弁に反論するために、シンポジウムは持たれた。企画のメインは、三重大学名誉教授・目崎茂和氏(自然地理学、サンゴ礁学)、琉球大学名誉教授・加藤祐三氏(岩石学、防災地質学)、新潟大学名誉教授・立石雅昭氏(地質学、堆積地質学)の三氏によるパネルディスカッションだ。

 とりわけ加藤氏は、2000年に当時の防衛庁が作った地層断面図で、「辺野古断層」と「楚久断層」の延長線上の海底に、深さ50メートル以上の沈下があることについて、「地震をくり返して層のずれが大きくなった」との見解を示し、「間違いなく活断層だ。燃料タンクや弾薬庫がある基地の直下で地震が起きれば危険だ」と指摘した。さらに、政府が「既存の文献」2冊を根拠に活断層の存在を否定していることについて、「当該2冊の文献には、これまでに知られている長さ10キロ以上の活断層に限るなど、掲載基準がある。辺野古の両断層がその基準に満たなかっただけであり、そこに掲載されていないというだけで、『活断層ではない』と断定することはできない」、「しかも両断層は、これまでに知られている長さが10キロに満たないというだけのことであって、さらに調査をすれば、その長さは、海底に延びている部分も含めて、何十キロに達することもありうる」と指摘し、「あくまで活断層は存在しない、安全だと言うのなら、政府は詳細なデータを公表すべきだ」と訴えた。

 また、東京電力・柏崎刈羽原発(新潟県)に関する新潟県の技術委員も務める立石氏は、原発建設前にないとされた活断層が建設後に判明した例を紹介した上で。「活断層は、過小評価されてきた。防衛省は、辺野古で同じことをしているのではないか」、「新基地建設は無謀で、直ちにやめるべきだ」と訴えた。さらに「辺野古弾薬庫地区を見たが、断層によってできたと推測される崖が見事に発達していた。なぜこんな場所に弾薬庫を作ったのか、不思議でたまらない」とも指摘した。

 工事はできない。工事はさせない。参加者はその意を強くした。

現地結集と実力闘争の爆発で、名護新基地建設阻止へ

 名護市長選の「勝利」に味を占めた安倍政府―沖縄防衛局は、嵩にかかって工事を加速させている。“新基地建設工事の既成事実化こそ、市長選の勝因”と総括し、今度は11月の「県」知事選を見すえて、6月の土砂投入へ、埋め立ての既成事実化へと突進しているのだ。知事選までに、沖縄労働者人民に無力感・挫折感をトコトン植え付けて、闘いを潰しておこうという腹だ。

 「工事用ゲート」からの工事用車両の搬入も、激しさを増すばかりだ。1日で最も多かった搬入台数は、昨年11月が267台、同12月が273台、今年1月が285台だったのだが、名護市長選以降は、1日300台を超えることがくり返されており、2月27日には、ついに338台にも達した。これをテコに、「K2護岸」、「K4護岸」の造成工事が急ピッチで進められている。「N5護岸」、「K1護岸」、「K2護岸」、「K3護岸」、「K4護岸」という囲い込み部分の護岸の総延長は約1700メートルだが、2月末の時点で700メートル、全体の約四割にまで伸びた。土砂投入の日が刻々と近づきつつある。
 これに対して知事・翁長は、沖縄防衛局が昨年10月に申請していた絶滅危惧種のオキナワハマサンゴ一群体の「特別採捕」を許可する(2月16日)など、屈服姿勢をいっそう強めている。申請の名目は、「移動・移植などを行なう技術に関する試験研究」なるものであった。研究機関でもない沖縄防衛局が「試験研究」をするとは、とんだお笑い草だ。沖縄防衛局は、埋め立ての邪魔になるからサンゴの採捕―移植を申請したのであって、この名目を是とし、許可を出すのは、埋め立てに手を貸す行為だ。翁長に対する批判の声はますます高まっている。

 闘いは正念場を迎えた。名護市長選の「敗北」、翁長の屈服姿勢にもかかわらず、沖縄労働者人民の士気は極めて高い。現地では、労働者人民の熱い闘いが連日にわたって展開されている。勝利のカギは、巨万の現地結集と実力闘争の爆発だ。天皇上陸阻止沖縄青年実行委員会は、この闘いの先頭に起ち闘う決意だ。