公的就労事業を頑なに否定する福岡労働局
11月8日、福岡・築港日雇労働組合(福日労)は、多くの日雇い・野宿の労働者の結集をかちとり、福岡労働局との団体交渉を闘った。
福日労は、今年8月、福岡日雇い団結夏祭りに際して、参加した労働者の生活実態や要求を聞き取るアンケート調査を行なった。その調査結果の多くは、「働いて生きて行きたい」「生活保護に頼りたくない」というものであった。この労働者の要求を政府―厚生労働省の出先機関である福岡労働局に対する要求書としてまとめ、提出していた。要求書の内容は、日雇い・野宿の労働者のための公的就労対策事業を行なうよう求めるものだ。今回の交渉は、この要求書に対して福岡労働局が回答する場として設定された。
午前10時30分、福岡労働局が入る博多駅南の合同庁舎に隣接する中比恵公園には、多くの日雇い・野宿の労働者が結集した。集まった労働者は、福岡労働局を正面に見据える場所に並び、福日労の代表が要求書の内容を読み上げ、その内容を全体であらためて確認する。要求書の内容に「そうだ! 労働局は仕事を出せ」と労働者の声が上がる。次はシュプレヒコールだ。労働者の声が合同庁舎を揺るがし、合同庁舎の窓から中比恵公園に眼をやる姿が見える。遠巻きに監視する公安デカは、労働者から発見されまいと物陰に隠れる。交渉開始時間の11時が近づくと、全体の熱い拍手で交渉団を送り出す。
福岡労働局からは、職業安定部雇用指導開発係、就労支援係が出席し、交渉が開始される。福日労が出していた1番目の要求である「東京都が山谷で行なっている『特別就労事業』のような、日雇い・野宿の労働者のための公的就労対策事業を行なえるよう、本省とともに検討をすること」に対しては、「国の基本は、民間への安定した就労を促進することであり、失業者を吸収する事業は、すべきではないということです」「かつての失業対策事業は非効率で、いつまでも失業対策事業に滞留する労働者が出たためです」「要望があったことは本省に伝えます」というものであった。2番目の要求である「公的就労事業が行なえるよう、福岡県や福岡市に対して、必要・可能な働きかけを行なうこと」に対しては、「要望があったことは、県や市に伝えます」。3番目の要求である「以上の内容について、早急にわれわれとの話し合いの場を設けること」に対しては、「要望はお聞きします」という回答であった。福日労が求める「公的就労対策事業の実施」をめぐっては、頑なに否定するという回答であった。
「就労支援」のアリバイ作りで逃げる福岡労働局
この福岡労働局からの回答に対して、交渉団からは自分の経験を踏まえた怒りの追及が行なわれた。「それでは、失業して、野宿している労働者はどうしたらいいんだ」「行政は、『就労支援センターに入ったり、生活困窮者自立支援制度を利用して仕事に就け』と言うが、就労支援センターに入り、就職するために面接に行っても、就労支援センターの住所を書いているとはねられる」「就労支援センターから職業安定所に行っても、限られた職種しか紹介しない。紹介するのはガードマンやハウスクリーニングくらいだ」「企業は、就労支援センターには良い人材がいないと思い、雇おうとしない」「就労支援センターが面接の時に携帯電話を貸しても、何の役にもたたない」。この具体的な指摘に対して、出席した役人たちは、一言も発することができない。失業して野宿している労働者がどんなに仕事に就くために苦労しているか、その実態なぞまったく知らないのだ。それでもやっと口に出したのは、「生活保護を受けることも考えてください」というものだ。別の労働者からは、福岡労働局が否定する戦後直後から行なわれた「失業対策事業」をめぐった反論が行なわれる。「『失業対策事業』があったから生きてこれた労働者や家族がいることをどう思うんだ」「『失業対策事業』が非効率だったというが、それは労働者に責任があることなのか」。この反論にも役人たちは黙り込むしかない。さらに、「『民間企業に就労することを基本とする』と言うが、使い捨てにされる『非正規雇用』を増やし、違法残業や過労死・過労自殺が蔓延する職場で働けというのは、労働行政を担当する部局としては、あまりに無責任じゃないか」という追及が行なわれる。これに対しても、出席した役人は黙り込むしかない。
1時間にわたって追及を行なった交渉団は、失業―野宿の労働者の要求を否定する福岡労働局を徹底弾劾して、交渉を終えた。交渉団は、中比恵公園で待機していた労働者に交渉の内容を簡潔に報告した。報告を聞いた労働者から、「労働局の役人は、野宿している俺たちを見下し、人間とは思っていない。絶対許さん」と怒りの声が上がった。福日労の代表は、「『公的就労事業』を実現させるために、今以上に日雇い・野宿の労働者の団結を強く、大きくして闘おう」と呼びかけた。最後に、福岡労働局へのシュプレヒコールを叩きつけ、当日の行動を終えていった。
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