「K9護岸」の建設工事が実は「仮設工事」だった
安倍政府の手によって、力ずくの新基地建設工事が進められている。辺野古崎北側の「K9護岸」(全長316メートル)の建設は、沖に向かって100メートルの地点で止まっているが、その代わり、拡幅・整備作業が進められている。護岸の上を、2台の大型工事用車両がすれ違うことができるよう、2車線分の幅まで拡幅し、鉄板を敷くなどして整地しているのである。辺野古崎南側の沿岸でも、「K1護岸」(216・6メートル)、「N5護岸」(273メートル)の建設予定地に資材を搬入するための「仮設道路」の造成が、急ピッチで進められている。「K1護岸」は、埋め立て予定区域の最西端を形成するものであり、「N5護岸」は、「中仕切り護岸」と呼ばれ、埋め立て予定区域を分割する機能をもつものだ。沖縄防衛局は、「仮設道路」の造成が終わり次第、10月中旬にも護岸工事に踏み込む腹づもりだ。
このうち、「K9護岸」の建設工事については、実は「仮設工事」でしかなかったことが明らかになっている。「沖縄平和市民連絡会」の北上田毅氏が8月初めに暴露したもので、氏によれば、情報開示請求で入手した沖縄防衛局と工事受注業者との間で作成された書類などでは、今回の工事について「仮設工事」と明記されており、しかも当初から100メートルだけの施工予定だったというのである。沖縄防衛局は、4月25日、工事開始のセレモニーを工事現場でにぎにぎしく執り行ない、マスコミを使って「本体工事着工」を沖縄―全国にアピールした。ところがそれは、実はたった100メートルだけの「仮設工事」でしかなかったのだ。「本体工事が始まった」、「新基地建設はもう引き返せないところまで来た」と印象づけ、沖縄労働者人民の諦めを誘うことを狙って、沖縄防衛局がついた大ウソだったというわけだ。
しかも、この100メートルの区間ですら、これから途轍もない「手戻り工事」が待っている。当初の計画では、長く敷きつめた基礎石材の両側面を1個当たり9トンの「被覆ブロック」で蔽い、さらに埋め立ての際に海側となる面(護岸の外側)を1個当たり20トンの「消波ブロック」で固めることになっていた。ところが実際には、基礎石材の両側面に延々と置かれたのは、「被覆ブロック」ではなく、きんちゃく袋状の「根固め用袋材」であり、6月末から設置作業が続けられてきた「消波ブロック」も、重量は12・5トンで、その設置場所は計画とは反対側、すなわち埋め立て面(護岸内側)なのである。沖縄防衛局の説明によれば、約2ヵ月かけて延々と積み上げた「根固め用袋材」も、その上にこれまた延々と積まれた計326個の「消波ブロック」も、「台風の高波による護岸への影響を防止するための一時的措置」であり、いずれはすべて撤去し、「根固め用袋材」は「被覆ブロック」に、「消波ブロック」は20トンのものを新たに造って護岸外側に、すべて設置し直すというのだ。「1から出直し」の作業をやるというのだ。工事は、開始された。しかし、実際には、ほとんど何も進んでいない。これが真相だ。
沖縄防衛局は、沖縄「県」が護岸工事の施工状況に関する質問書に対する8月4日の回答文書でも、「K9護岸は、隣接する護岸が完成するまでの間、台風等の高波浪による基礎捨石の流出などを防止するため、消波ブロックを仮設物として、一時的に設置している」と言っている。「隣接する護岸」とは、「K9護岸」の計画上の先端部から東南に延びる「A護岸」のことであろう。官僚特有の持って回ったような言い回しのせいで、今1つ要領を得ないが、要するに、「A護岸」が完成するまで「K9護岸」の延伸工事はやらない。当面は埋め立て面(護岸内側)への「消波ブロック」の「仮置き」を続ける。そう言っているのであろう。
沖縄防衛局が、「K9護岸」の建設を差し当たり100メートルに留めたのは、その先の海域にはサンゴの群体が多数あり、今後、埋め立て予定区域外への移植が必要になるからだと報道されている。移植のためには「県」知事に対する「特別採捕許可」が必要になるのだが、その手続きが早々に終わる見込みはない。しかし、もっと大きな理由は、「工事用ゲート」前の労働者人民の座り込みによって、資材を大量かつ継続的に搬入できる見込みが立たないからだ。「K9護岸」を計画通りに建設しようとしたら、浜から沖へと進むにつれて大浦湾の水深はますます深くなり、必然的にこれからさらに膨大な量の石材が必要となる。「K9護岸」の建設には、石材だけでもダンプカー9000台分が必要だと言われるが、「工事用ゲート」が「ボトルネック」となって、資材の十分な供給のメドが立たないのだ。労働者人民の闘いは、確実に工事計画の首を締め上げているのだ。だからこそ、沖縄防衛局は、「K9護岸」の延伸よりも、手がつけやすい辺野古崎南側の水深の比較的浅い地域での工事を優先することで、既成事実を積み重ね、「工事の進捗」をアピールすることを選んだのである。
猛暑も弾圧も労働者人民の闘志を挫くことはできない
沖縄は、この8月、平均気温が平年より1・4度も高い「歴史的酷暑」(「琉球新報」)となった。その焼けつくような日差しの下でも、辺野古現地では、熱く激しい闘いが連日にわたって打ちぬかれている。とりわけ、労働者人民が座り込む米海兵隊のキャンプ・シュワブの「工事用ゲート」前の暑さは、別格だ。日差しを遮るものは何もない。背後は、置きっ放しの機動隊車両3台に阻まれて海風も通らない。その機動隊車両は、陽に焼かれて熱を発する。下はコンクリートとアスファルトで、路面近くの温度は40度を優に超える。しかし、このような状況下にあっても、沖縄労働者人民は不屈だ。焼けるような日差しが照りつけようが、そこに激しいスコールが襲おうが、座り込みの現場を離れようとする者は、いない。資材搬入のためにやってくる工事用車両を迎え撃つべく、ひたすら粘り強く座り込みを継続しているのだ。海上でも、抗議船やカヌーによる工事阻止の闘いがうちぬかれている。
こうした闘いを機動隊と海上保安庁の暴力を使って抑え込み、無理やり工事を進めているのが安倍政府―沖縄防衛局だ。そのため、「工事用ゲート」からの資材搬入は、激しさを増すばかりだ。沖縄防衛局は、連日のように、「北勝重機運輸」「丸政工務店」「まるくに」「大宜味産業」などなど、「県」内の建設会社、運送会社を総動員して、石材を満載したダンプカーや、資機材を積んだトレーラー、コンクリート・ミキサー車などの搬入を強行している。それは、ほぼ1日3回、延べ数十台から百数十台に及ぶ。「集中行動日」として、多くの労働者人民が集まる水曜日にも、7月中旬以降、資材搬入が強行されるようになった。そして、そのたびに、「県」警機動隊による労働者人民への暴力的な排除がくり返されているのだ。座り込む労働者人民を「ゴボウ抜き」で強制排除し、フェンスと機動隊車両で囲った「仮設収容所」に押し込んで、工事用車両の搬入・搬出が完了するまでの約一時間の間、何の法的根拠もないまま拘束しているのである。炎天下であろうが、土砂降りの雨であろうが、まったくお構いなしだ。
逮捕攻撃も相次いでいる。8月1日には、国頭村にある「国場組」の砕石場から出てきた工事用車両の「通行を妨害した」として、1人を「道路交通法違反」容疑で逮捕し、2日、21日、23日には、「工事用ゲート」前で強制排除に抵抗したことに対して、「警察官を押した」だの「警察官の足にしがみついた」だのと、無理やり「公務執行妨害」容疑をデッチ上げて、それぞれ1人を逮捕している。23日には、「仮設収容所」の内側で写真を撮っていた女性に対して激しい暴力にも及んでいる。機動隊員に突き飛ばされ転倒させられた女性は、地面で頭部と腰を強打し、起き上がることができぬまま救急車で病院に搬送された。29日にも、国頭村の路上で工事用車両の「通行を妨害した」として、またも1人を「道路交通法違反」容疑で逮捕した。安倍政府と警察庁に尻を叩かれた沖縄「県」警の凶暴化は著しい。搬入時以外でも、熱中症などの体調不良を起こした参加者の休憩場所として、救護班が「工事用ゲート」付近に日除けのシートを張ったり、簡易テントを置こうとしても、たちまち機動隊が部隊で出て来て、暴力的に撤去してしまうのである。
暴虐な安倍政府への怒りは高まるばかりだ。沖縄労働者人民は、「埋め立て工事の即時中止」を求めて4万5000人が結集した8月12日の「県民大会」をも力に、一層強力な現地闘争をやりぬいている。猛暑も弾圧も、その闘志を挫くことはできない。8月23日の「水曜行動」では、「闘いはこれからだ。辺野古で新基地を止め、安倍の暴走を止める」、「沖縄から日本を変える」との力強い叫びが上げられた。
酷暑と台風下の9月の闘い
9月に入っても酷暑が続く。そのなかを「工事用ゲート」前でも、海上でも、懸命の闘いが連日展開された。とりわけ9月11日、防衛省から、MV22オスプレイが昨年12月に名護市安部の海岸に墜落した事故をめぐり、墜落を「人為的ミスによる不時着水」とする「オスプレイ墜落事故報告書」が発表されると、報道に接した「工事用ゲート」前の労働者人民からは、「あれだけ大破してどうして不時着か」、「オスプレイは、欠陥機だ。人のせいにする日・米両政府は卑劣だ」、「新基地が造られ、そこに欠陥機が100機も配備されたら、沖縄はどうなる」、「根本的な解決はオスプレイを撤去することだ」という怒りの声が相次いで上げられた。
9月13日の「水曜行動」は、台風18号の接近による嵐のような激しい雨風のもとで闘われた。こんな荒天でも工事用車両の搬入を強行する沖縄防衛局と「県」警機動隊に対して、100人を超える労働者人民が、ずぶ濡れになりながらも果敢に立ち向かった。台風の影響による風雨が続く15日にも、座り込みの強制排除と車両の搬入に対して、阻止の闘いが取り組まれた。その際、女性1人が機動隊に倒され後頭部を打って出血し、救急搬送されるに至っている。22日には、搬入された工事車両が207台にのぼった。
こうした激闘のなか、9月27日11時から、「新ゲート」前のテントにおいて、島袋文子氏のトーカチ祝い(旧暦8月8日に行なわれる88歳の祝い)が盛大に開催された。島袋氏は、凄惨な沖縄戦の生き証人として、辺野古の住民として、この闘いが始まって以来毎日ゲート前に通い、反戦・新基地阻止を訴え、労働者人民を鼓舞し続けてきた闘士であり、辺野古の闘いを象徴する人格だ。「文子さんトーカチ祝い実行委員会」などが主催したこの催しに、400人余の労働者人民が駆けつけた。三線の演奏と歌、舞踊・「かじゃでぃふぅ」、喜歌劇・「戻り駕籠」などなどが続き、最後にマイクを取った島袋氏が、「カジマヤー(旧暦9月7日に行われる97歳の長寿祝い)は、ここで祝ってはいけない。皆さん、基地がなくなるまで頑張りましょう」と発言すると、ひときわ大きな歓声と拍手が沸き起こった。このトーカチ祝いが行なわれた約3時間の間、工事用車両を1台も近寄らせることはなかった。労働者人民の大結集に、沖縄防衛局が恐怖したからだ。
資機材の海上搬入を許すな
9月25日、キャンプ・シュワブ内で、沖縄防衛局が、「被覆ブロック」の製造を進めていることが判明した。鉄製の枠型にコンクリート・ミキサー車から生コンを注ぎ込み、固まったら枠型を取り外すという作業で、25日には、枠型から外された「被覆ブロック」8個が確認された。先述のように、沖縄防衛局の計画では、多くの護岸は砕石を基礎とし、その両脇を「被覆ブロック」で固め、さらにその上に「消波ブロック」などを並べて造ることになっているのだが、「K9護岸」の建設工事では、これまで「被覆ブロック」の代わりに、「根固め用袋材」が使われてきた。だからこそ沖縄防衛局も「K9護岸は仮設工事」と言っているのだが、「被覆ブロック」を作り始めたということは、今後は「仮設」ではなく、本工事に入るということを意味する。差し当たりはこれを、「K1護岸」と「N5護岸」の工事に使うと思われる。まさに、本格的な護岸建設が開始されようとしているのだ。
9月27日には、防衛省―沖縄防衛局が、護岸工事に使う石材などの資材を海上から搬入することを検討していることも判明した。防衛省によれば、資材を載せた台船を牽引船でえい航して「K9護岸」に接岸し、そこで資材を降ろして、「K1護岸」、「N5護岸」の建設現場まで搬入するという計画だという。防衛省は、台船1隻当たりダンプカー約190台分の資材運搬が可能となるとしている。
これで、「K9護岸」の建設が100メートルの「仮設工事」であったことの意味も、これを拡幅して、上面に対面通行可能な道路を造成してきたことの意味も鮮明になった。要するに「K9護岸」を、資材搬入用の台船を係留するための「桟橋」として使おうという魂胆だ。「K9護岸」の完成を後回しにし、これを桟橋代わりにして大量の資材を運び込み、「K1護岸」、「N5護岸」の建設を手始めに、沿岸の水深が浅い区域の工事を一気に進めてしまおうという魂胆だ。その目的について、防衛省は、「大気汚染や騒音、振動などの環境負荷が軽減される」と白々しい説明をしているが、資材搬入を阻止するために「工事用ゲート」前に座り込む労働者人民の闘いを回避し、無力化し、工事を本格化・加速化させようという狙いであることは明らかだ。
その台船には、「ランプウェイ台船」を使用することも取り沙汰されている。「ランプウェイ」とは高低差のある場所を連結する道路のことで、「ランプウェイ台船」とは、接岸地と台船のデッキとの間に高低差がある場合に、接岸地に向かって大型車両が通行可能な橋を架ける機能を備えた台船のことだ。資材を満載したダンプカーなどをこれに載せ、「K9護岸」の先端部に接岸させる。車両はそのまま橋を渡って現場に直行する。こうすることで、満潮時でも干潮時でも、随時の工事用車両の搬入・搬出を可能にし、石材や土砂などをダンプカーに積み替える手間も省いてしまおうというわけだ。
工事の行きづまりは必至だ 新基地建設阻止へ進撃せよ
こうして遮二無二工事を進める政府―沖縄防衛局だが、政府―沖縄防衛局に、この先の展望が決してあるわけではない。そのことは、沖縄防衛局が新たな海上ボーリング調査をやろうとしていることに端的に示されている。今年10月から来年3月31日までの予定で、新たに19ヵ所のボーリング調査をやるというのである。工事が始まっているというのに、今になってこんなことをやり出すというのは、埋め立て予定海域地下の地質の状態や地盤の強度などに、何らかの深刻かつ重大な問題があり、沖縄防衛局が頭を抱え込んでいる可能性が高い。今後、設計や工法など、工事計画が大幅に変更される可能性が浮上しているのだ。
沖縄防衛局が頭を抱え込んでいる問題が何であるか不明である以上、その「問題」との関連もまた不明なのだが、埋め立て予定海域とその付近の地下にある2つの断層が、ともに活断層である可能性を指摘する声も強くなっている。名護市の西海岸から辺野古崎に走る「辺野古断層」と、同市田井等から二見を経て大浦湾沿岸を走る「楚久(そく)断層」が、それである。とりわけ「辺野古断層」は、「V字型滑走路」の建設予定地の直下を走っている。ある地質学者は、2007年8月に当時の那覇防衛施設局(現・沖縄防衛局)が作成した新基地建設のための「環境影響評価方法書」にある辺野古沿岸域の「地層断面位置図」、「推定地層断面図」を分析した上で、「これらの海底地形は陸上の断層とともに活断層である可能性が考えられる」と指摘し、「これを震源とする地震、津波が発生すれば人工構造物の破壊は免れず、海域の深刻な環境破壊をもたらす新基地建設は不適切だ」と、厳しく警告している。本来、多くのデータを持っている沖縄防衛局自身がその可能性を最もよく分かっているはずなのだが、ひたすら知らんぷりを決め込んで、工事を強行しているのである。
海上ボーリング調査の結果、設計の変更が生じても、「県」知事への「設計概要変更申請」がすんなり通る見通しはない。サンゴ類の移植のための「特別採捕許可」も知事権限に属し、先は見通せない。水深の深い沖合の護岸の基礎に使う「ケーソン」(縦52メートル、横22メートル、深さ24メートル、総重量7400トンもある鉄筋コンクリート製の巨大な箱)を仮置きするための「海上作業ヤード」の建設も、取りやめになってしまった。埋め立て予定区域に流れ込む美謝川の切り替えは埋め立ての必須の条件なのだが、そのための手続きも暗礁に乗り上げたままだ。何より、沖縄労働者人民の闘いが、工事の行く手を頑強に阻んでいる。その闘いがある限り、いつになっても新基地が完成することはない。安倍政府―沖縄防衛局にとって、先の展望はないない尽くしだ。要するに、沖縄防衛局が今やっているのは、後先も考えずに、とりあえずできるところから手をつけているだけのことだ。追いつめられているのは政府―沖縄防衛局の側だ。
辺野古の闘いは、本格的な決戦局面を迎えている。攻撃の激化にも、諦める者は1人もいない。10月からは、毎月第1土曜日に「工事用ゲート」前で「県民大行動」を行なうことも計画されている。10月7日、11月4日、12月2日の午前8時から午後4時半までの間、「工事用ゲート」前を1000人規模で制圧し、「工事用車両を絶対に入れない」闘いをやりぬこうという試みだ。現地大結集と実力闘争の爆発。これこそが勝利のカギだ。天皇上陸阻止沖縄青年実行委員会は、現地集中をいっそう強化し、沖縄労働者人民の先頭でこの決戦を闘いぬく決意だ。
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