東京都教職員研修センター前で抗議行動
2016年度卒業式において、「日の丸」「君が代」を強制する東京都教育委員会の「10・23通達」と対決する教育労働者2人が、「君が代」不起立を闘った。都教委は、この闘いに対して、懲戒処分(不起立4回目の工芸高校教員A氏に減給10分の1・1月、不起立3回目の葛西南高校教員B氏に戒告)を決定した。さらに、都教委は、この2人の教育労働者に対して、懲戒処分だけでなく、「服務事故再発防止研修(再発防止研修)」の受講を命令した。第1回目の「再発防止研修」は、5月10日に2人を東京都教職員研修センターに呼びつけて強行され、続いて8月29日にB氏に対する2回目の「再発防止研修」の受講命令が出された(A氏に対する「再発防止研修」は、9月6日に強行された)。B氏は、東京「君が代」裁判4次訴訟原告として東京地裁で処分取り消しを求めて係争中である。「君が代」不起立の闘いを「服務事故」と決めつけ、命令で「研修」を課すことは、「学校教育法」・「教育公務員特例法」が定める「研修」の趣旨から著しく逸脱するものだ。2004年7月、東京地裁は、「そのような研修をくり返せば、違憲・違法の可能性がある」と決定している。「再発防止研修」は、司法判断さえも無視して思想転向をせまる攻撃だ。絶対に許してはならない。
8月29日、早朝から東京都教職員研修センター前には当該を支援する教育労働者など70人が駆け付け、都教委に対する抗議と、B氏を激励する行動に起ち上がった。この日の行動には、東京・山谷日雇労働組合(東京・山日労)、神奈川県地域連合労働組合の仲間も合流した。
午前9時、この日の行動を呼びかけた「『日の丸・君が代』不当処分撤回を求める被処分者の会(被処分者の会)」の岩木共同代表が、司会を務め、早速、門前での抗議集会が開始された。
集まった仲間たちが怒りのシュプレヒコールを立ちはだかる都教委職員に対して浴びせかけ、「被処分者の会」の近藤徹事務局長が、行動提起を行なう。「都教委は、2004年から13年以上『再発防止研修』を強行してきました。信念に従った教育労働者に対して、当該1人を5人で取り囲んで『反省しろ』『転向しろ』と強制する『研修』を絶対に許すわけにはいきません。道徳の教科化、『教育勅語』の礼賛や、柔剣道の体育への導入など、教育内容の国家主義・軍国主義化が強まる中で、裁判闘争と運動を両輪にして『日の丸・君が代』強制と闘い、勝利していきましょう」。
続いて、弁護団の澤藤弁護士が、「Bさんの行為は、尊敬すべき行為であり、それを『反省しろ』と強制する『再発防止研修』は、憲法19条が保障する『思想・良心の自由』に反するものであり、ただちに止めるべきだ」と「申し入れ」を行なったが、対応した研修センター総務課長は、「必要な研修ですので、予定通り実施します」と事務的な対応を繰り返した。「被処分者の会」の抗議声明が読み上げられ、「河原井さん根津さんらの『君が代』解雇をさせない会」、「許すな!『日の丸・君が代』強制、止めよう! 安倍政権の改憲・教育破壊全国ネットワーク」(「ひのきみ全国ネット)などが、「再発防止研修を中止せよ」という要請書を読み上げ、総務課長に回答を迫る。総務課長は、「『要請書』は受け取ります」と答えるだけで、抗議声明や要請書の内容に対しては、一切答えようとはしない。
シュプレヒコールと拍手で該当者を激励
「研修」開始時間の9時半前に当該のBさんが到着する。Bさんを拍手で送り出すと同時に、シュプレヒコールが都教職員研修センターに対して叩きつけられる。「送り出し」の後も「研修」という名の転向強要攻撃と対決し、当該を激励するための集会は続けられた。
東京「再雇用拒否」第3次訴訟原告団は、「2016年4月の地裁不当判決、2017年4月の高裁不当判決を受け、5月9日に上告および上告受理申立てを行ないました」と報告した。東京「君が代」訴訟第4次原告団は、「9月15日の判決公判への結集をお願いします。40秒座っただけで、1年間定期昇給はなく、担任も外され、半年にわたり『研修』を強要することを許すことはできません。4次の原告団には、もう1人の当該であるAさんもいます。4次の原告は、現職教員が沢山います。何としても勝利判決をかちとりましょう」。東京・山日労は、「皆さんからの支援を受け、『山谷夏祭り』を成功させることができました。ありがとうございます。『山谷夏祭り』で広がり、深まった団結をもって、日雇い労働者の命と権利を奪う攻撃に対して、厚生労働省や東京都山谷対策係との交渉を闘いぬきました。戦争に向けた攻撃を許さず、『日の丸・君が代』強制を許さず、闘います」と発言した。「都教委包囲首都圏ネット」からは、10月24日に取り組む「都教委包囲・要請行動」への結集が呼びかけられた。また、東京「君が代」訴訟第1次原告団のメンバーであり、「予防訴訟」の事務局メンバーである金信明さんが韓国人被爆者追悼行事に参加するために訪韓中、意識不明の重体になっていることが報告され、日本への帰国費用や治療費のカンパが呼びかけられた。
最後に、「研修」終了時刻の午前11時30分の10分前に再度研修センター前に結集することが確認され、抗議・激励行動は一旦終了した。
午前11時16分、当該のBさんが、「研修」を終えて出てきた。Bさんは、「今日の朝は、足が動かず、イヤイヤながら家を出てきました。『研修』では、都教委がテープレコーダーのように『職務命令違反だ』『学習指導要領に拘束力がある』『憲法違反ではない』と繰り返しました。『研修受講報告書』には『服務事故を起さない』『服務命令に従う』といったことが書かれ、それにレ点を付けるようになっていますが、私は、嘘をつくのが苦手なので、レ点は付けませんでした。都教委は、何故私が『服務事故』を起したのかについてはまったく聞きません。私が台本通りにしゃべらないから、都教委は閉口していたようです」と、「研修」への怒りと、その内容を報告した。
「被処分者の会」の星野共同代表は、「『研修』は予定より早く終わったが、都教委にやる気がなくなったのかどうかわからない。日本会議に所属する都知事・小池の下で、都教委の職員は、『おかしいことはおかしい』と言うべきだ。『一緒に声を上げよう』と言いたい」と呼びかけた。
集会の最後に、近藤氏が、「今日は、早朝からありがとうございます。9月15日には4次訴訟の判決があり、10月22日には、『学校に自由と人権を!10・22集会』を開催します。皆さんの結集をお願いします」と呼びかけ、当日の行動を終えていった。
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