5月22日、東京地裁で、河原井さん・根津さんの2008年度卒業式での「君が代」不起立の闘いに対して都教委が下した「停職6ヵ月」処分の撤回と損害賠償を求める裁判の判決公判闘争が闘われた。
午後1時15分からの判決言い渡しを前に、公判廷に隣接する控え室には多くの支援者がつめかけている。当日の「2008年河原井・根津停職処分(2008年処分)」をめぐる判決の前に確定している「2007年河原井・根津停職処分(2007年処分)」の判決(2015年5月・東京高裁)は、河原井さんの停職3ヵ月、根津さんの停職6ヵ月を取り消し、損害賠償を命じ、都教委もそれを受け入れている。「2008年処分」に対する判決も、同様の判決になるのが当たり前だ。ところが、「10・23通達」をもって「君が代」不起立を闘う教育労働者を処分することで屈服させようとする都教委は、あくまで「君が代」斉唱時に起立を命じる職務命令を正当と主張してきた。加えて、根津さんが勤務中に、2008年以前も以後も「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」というトレーナーを着ていたことを問題にし、「職務専念義務に反する」と処分を正当化する主張をくり返してきた。
結集した2人の当該と支援者は、東京地裁(民事19部・清水裁判長)が、このような都教委の不当な主張を認めず、「2008年処分」の撤回と損害賠償を命じるように迫るため、傍聴席を埋め尽くした。開廷直後に判決主文を読み上げた裁判長・清水は、「河原井の処分(停職6ヵ月)は取り消し、その他の請求は棄却する」と言い放った。根津さんの処分(停職6ヵ月)は認め、2人の損害賠償請求は認めないという、不当判決だ。
この判決に対して、傍聴席からは一斉に「不当判決だ」という怒りの声が巻き起こった。即座に「不当判決糾弾」の旗が地裁正門に掲げられ、地裁判決を許さないシュプレヒコールが叩きつけられた。
午後3時半から弁護士会館で行なわれた報告集会では、弁護士からの判決批判と、当該2人の不当判決に対する怒りと控訴審闘争を闘う決意が表明された。
弁護士は、「非常識・最悪の判決だ。『日の丸・君が代』反対は許さないという裁判官の気持ちが、にじみ出ている。裁判所が安倍におもねる危険なにおいを、感じる」」「2012年最高裁判決の前にもどるような判決だ」「河原井さんの停職6ヵ月を取り消しているが、これは2012年最高裁判決が出ているから渋々取り消すというものだ。停職6ヵ月処分の『相当性を基礎づける事情が不十分だから取り消す』と言っているだけだ」「あくまで『都教委に無制限の裁量権がある』と言い、処分当時は2012年最高裁判決が出ておらず、機械的に処分を重くする『累積加重』について、『都教委が注意義務を尽くさなかったとまでは言えない』と都教委を擁護し、『損害賠償の理由はない』としている」「根津さんの処分については、停職処分を正当化するために2008年だけトレーナー着用を問題にしている」と判決を批判した。
根津さんは、「判決は、『2007年処分は取り消されたが、過去の処分歴やトレーナー着用は、加重処分を行なう具体的事情に当たる』としている。過去の処分歴を新たな処分の『具体的事情』の理由にすることを否定した2012年最高裁判決を無視し、トレーナー着用を取り上げ、『加重されても当たり前』とするものだ」「トレーナー着用を、『学校の規律や秩序を乱す行為をあえて選択して実行したものと評価すべき』という部分は、裁判長の悪意に満ちたものだ。絶対に許せない」と批判した。河原井さんは、「こうした判決を受けて、三権分立を疑いたくなる。必ず控訴審で逆転させたい」と闘う決意を表明した。会場の支援者からは、「行動でなく内心を裁く判決だ」「『共謀罪』先取りの判決だ」という声が上がった。結集した全員が不当判決を許さず控訴審闘争を闘うことを決意し、当日の行動を終えていった。
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