「もうゲリラになるしかない」
安倍政府―沖縄防衛局、そして機動隊の「何でもあり」の無法と暴力に対して、沖縄労働者人民は、怒りをたぎらせながら、工事阻止をかけた現地攻防を、連日にわたって展開している。
9月21日の「水曜大行動」には、「N1地区」ゲートに約250人の労働者・住民が結集した。機動隊の圧倒的な暴力で「N1地区」ゲートを突破された「7・22」から約2ヵ月。この日は、「2ヵ月前の記憶がよみがえり、N1ゲート前で座り込むのは勇気がいる。しかし、住民への影響がないよう配慮したい」との「沖縄平和運動センター議長」・山城博治氏の提起で、高江橋などで乗用車をバリケード替わりにして工事関係車両を阻止する戦術はとらず、「N1地区」ゲート前に、言わば「裸で座り込む」形となった。これまで反対運動の側が道路を封鎖したのは、10トントラックの車列など工事関係車両が迫った時だけで、その他の時間帯は、まったく滞りなく車両が通行できていたのであって、機動隊による野放図な道路封鎖や交通規制こそが、交通渋滞の最大の原因なのだ。しかし、住民からの苦情を考慮して、今回の苦渋の選択となった。その分だけ、機動隊の暴力が人に直接及ぶことになる。
実際、この日、機動隊は、集会中の労働者・住民に約300人の部隊で襲いかかり、座り込む労働者・住民を「ゴボウ抜き」にして強制排除。これを受けて、沖縄防衛局は、「N1地区」ゲートからの砕石搬入を強行した。大規模な集会中の強制排除は、初めてのことだ。
それでも、沖縄労働者人民は挫けない。翌22日には、「もうゲリラになるしかない」と、労働者・住民が米軍提供施設区域内に大挙して入り込み、「N1地区」や「H地区」のヘリパッド造成地まで草を分けて山中を進み、阻止闘争を展開した。米軍提供施設区域内での本格的な行動は初めてのことだ。沖縄防衛局職員や機動隊の妨害をはね返し、「N1地区」では重機で引き倒されそうになる木にしがみつくなどして工事を中断させ、「H地区」では、工事用道路を整備していたショベルカーを取り囲んで工事を阻止した。その行動は、この日以降、「N1地区」から「H地区」を結ぶ工事用道路や「H地区」、さらに「G地区」で、連日にわたって果敢に展開されている。
強まる「年内完成」の攻撃
首相・安倍は、9月26日、臨時国会の「所信表明演説」で、ヘリパッド建設に言及し、「20年越しで実現させる」、「もはや先送りは許されない」として、工事の「年内完成」を宣言した。それが「沖縄の基地負担の軽減」になると、強弁することも忘れなかった。
これに先立ち、9月24日には、防衛相・稲田が就任後初めて来沖し、自衛隊ヘリを使って、上空から高江現地を「視察」している。同日の「土曜大行動」には、「N1地区」ゲート前に250人が結集した。午前10時15分、稲田を乗せたと思しき自衛隊ヘリが頭上を通過する。機動隊をどんなに現地に動員しても、労働者・住民の怒りと闘いが怖くて、地上から現場入りすることができないのだ。やむなく、稲田は、工事を急ぐよう、上空から沖縄防衛局に発破をかけたのであるが、そんなことで職員の士気が上がるはずもない。この卑劣な行動に、結集した労働者・住民からは、「堂々と視察に来い」、「県民の声は聞かないのか」と、怒りと失笑が沸き起こる。工事が進む米軍提供施設区域内でもこの日、約80人の労働者・住民が阻止闘争を展開した。
米軍提供施設区域内では、「N1地区」から「H地区」のヘリパッド造成地に向かう新たな工事用道路の建設が進められている。当初は、「環境への影響を考慮」(沖縄防衛局)して、レール幅が狭く、したがって山林の伐採面積が少ないモノレールで「N1地区」から「H地区」を結び、資材を運搬する計画だった。しかも、「N1地区」から、「H地区」、「G地区」へと、順番に工事を進める計画であった。これまた、沖縄防衛局の説明によれば、「環境への影響を考慮」してのことだ。
ところが、安倍の号令を受けて沖縄防衛局は、この計画を撤回し、工期短縮のために、大型車両が通れる工事用道路を、代わりに造り始めたのだ。計画撤回と同時に、「環境への影響」に対する「考慮」も、すべて投げ捨てられた。沖縄防衛局が沖縄森林管理署に出した「事前協議書」や「同意書」によれば、道路は、道幅3メートル、伐採幅4メートル(3ヵ所ある待機所は、幅5メートル、伐採幅6メートル)、長さ1408メートルに及び、そのために約3700本もの立木を切り倒すという。途轍もない自然破壊だ。しかも、労働者・住民たちが実際に現場に踏み込んで計測したところ、待機所以外でも、多くの地点でその範囲を超えており、最も広い場所で、道路幅が七・六メートルあったことも判明している。やりたい放題のデタラメをやっているのだ。
これについて、沖縄防衛局は、「問題はない」、「(『事前協議書』で示した)範囲はあくまでも標準的な範囲を示したものであり、工事用道路のすべての部分において、四メートル(の伐採幅)に限定したものではない」と居直っているのだが、国有林を守るべき立場の森林管理署までが、「標準範囲を超えた地点はあったが、必要最小限の道幅だった」などと、沖縄防衛局のデタラメを擁護する始末だ。
トラロープで縛り強制排除
そればかりではない。米軍提供施設区域内での労働者・住民の抗議行動を封じるために、権力は凶暴な弾圧にも撃って出ている。沖縄防衛局は、9月27日、「H地区」の工事現場で「24日に職員が暴行を受けた」として、「県」警に「被害届け」を提出し、これを受けて「県」警は、実際に、10月4日、1人を「傷害」容疑で不当逮捕した。
さらに、9月28日には、「H地区」の工事現場で、立木伐採に抗議し座り込んでいた労働者・住民十数人に対して、機動隊が1人ずつロープで縛って斜面を引き上げ、強制排除するという暴挙まで行なっている。標識用の細いトラロープを使って、脚や腰をグルグル巻きにして拘束し、高さ10メートル以上ある急斜面を引っ張り上げたのである。強制排除を受けた労働者からは、「木や切り株にしがみつきながらでないと、上に上がれない斜面だった。無理やりロープで引っ張れば、けがをするのは当然だ。あんな細いロープで縛り上げられれば、痛いに決まっている」と、激しい怒りの声があげられた。
しかし、沖縄「県」警は、この行為を「安全確保の措置」だの、「命綱の代わりにロープを腰などに結び付けた。災害救助をする形」だのと強弁している。多数の労働者・住民を負傷させ、1人に救急搬送を余儀なくさせておいて、この言い草である。
さらに、9月29日には、米軍提供施設区域内で抗議行動を展開する労働者・住民に対して、防衛省が「刑事特別法」を適用して逮捕することを検討していることも、明らかになっている。警察が米軍基地内で警察権を行使するには米軍との間で複雑な手続きが必要となるため、沖縄防衛局職員が、労働者・住民を「刑特法」違反の「現行犯」として「私人逮捕」し、訓練場の外まで連行して行って、警察に引き渡すというのである。純然たる公務で施設内にいる政府―沖縄防衛局の職員が、逮捕の時だけは「私人」に成りすまして逮捕権を行使するというのだから、もうメチャクチャだ。しかも、米軍提供施設であるとはいえ、北部訓練場の境界はフェンスなどで明示されておらず、誰でも入ることができる状態にある。どこまで進めば「刑特法」が禁じる米軍提供施設への「無断立ち入り」にあたるのか、まったく定かではないのである。どんな無茶・無理を通してでも沖縄労働者人民の闘いを押しつぶし、工事を推し進めようと躍起になっているのだ。
労働者・住民の頑強な闘い
こうしたなか、9月28日の「水曜大行動」には約250人が「N1地区」ゲート前に結集し、米軍提供施設区域内での阻止行動と結びついて、座り込み闘争が闘われた。ゲート前集会では、「沖縄防衛局は、『N1地区』、『H地区』、『G地区』の3地区で、計4つのヘリパッドの建設作業を同時並行で進めるつもりだ。沖縄防衛局は、『環境に配慮して進める』と言っていたが、守られていない。首相が『年内に』と言ったことを受けてだと思うが、あまりに無謀な工事だ」、「安倍は、所信表明演説で、『沖縄の基地負担の軽減』を口にしたが、高江と辺野古に新たな基地を造ることの、どこが負担軽減か」という怒りの発言が相次いだ。
9時20分、機動隊300人が集会中の労働者・住民に襲いかかり、ゲート前からの強制排除にかかる。結局、砕石を満載したトラック12台分の搬入が強行されたものの、2時間近くの攻防を展開することによって、作業を大きく遅らせた。「大行動」の効果は大きい。
ところが、沖縄防衛局は、これに対する報復として、「大行動」以外の労働者住民の結集が少ない日に、トラックで砕石を集中的に搬入するという手に出ている。北部訓練場のメインゲート内に砕石を貯めるだけ貯めておき、労働者人民の結集が手薄な日に、メインゲートから「N1地区」ゲートまで、トラックでピストン輸送するというのだ。とりわけ、9月30日には、トラック12台が3往復して、計36台分の砕石搬入が強行された。1日に入れた量ではこれまでで最多だ。
10月1日の「土曜大行動」には、「N1地区」ゲート前に230人が結集した。ゲートの向こう側―米軍提供施設区域内にも、「N1地区」裏ゲートから約100人の労働者・住民が入って、阻止行動を展開した。造成されている新たな工事用道路は、今や「H地区」に届きそうな状況だ。立木を伐採して森を切り刻み、そこに砕石や再生路盤材を敷きつめるというものだ。「H地区」から「G地区」に向かう工事用道路についても、立木の伐採作業が激しく進められている。「N1地区」ゲート前と作業現場の双方で、工事を止める闘いが必要だ。
「N1地区」ゲート前の集会では、「野放図な伐採に対して、県や林野庁はどうして動かないのか」、「高江でがんばることで全国とつながる。沖縄から発信することで全国が起ち上がる」、「この闘いは歴史をかけた闘いだ。ここで負けたら、将来2度と声を上げられなくなる。沖縄が屈しなかったことを後世に伝えたい」という叫びが上がった。この日、12台のトラックは、闘いを恐れて「N1地区」ゲートに来ることなく、メインゲートに砕石を降ろして引き揚げた。
台風一過の10月5日の「水曜大行動」には、300人を超える労働者・住民が結集した。米軍提供施設区域内でも行動が取り組まれた。沖縄防衛局も機動隊も、台風で工事が2日間できなかったことの取り戻しをかけて、今日は何が何でも資材搬入をやろうと、必死の形相だ。集会では、「安倍が狙う年内完成は、闘いがあるかぎり不可能だ」、「沖縄県公安委員会が他府県の機動隊の動員要請をしたと言うが、実際は、警察庁の言いなりになっているだけ。県公安委員会は、会議も開いていなければ、議事録もない。デタラメだ。500人の機動隊を撤退させよう」、「全国から動員された機動隊のガソリン代、高速代、故障の修理代を、県が負担している。許せない」などの発言が相次いだ。
9時20分、機動隊が「N1地区」ゲート前の労働者・住民に襲いかかり、座り込む人々を「ゴボウ抜き」にして、砕石を積んだトラック12台をはじめ、計15台分の資機材を搬入した。攻防は、1時間以上にわたった。
10月8日の「土曜大行動」には、約300名が結集した。午前11時半過ぎには、「視察」のために官房長官・菅を乗せたと思しき自衛隊ヘリが飛来。全体で「森を壊すな」、「工事をやめろ」という怒りのシュプレヒコールを叩きつけた。さらに、「N1地区」ゲート脇から約100人で米軍提供施設区域内を進み、作業現場近くで断固たる抗議行動をやりぬいた。
ヘリパッド建設実力阻止へ
10月8日に来「県」した菅は、知事・翁長と会談し、ヘリパッド建設と引き換えの北部訓練場の約半分の返還について、「年内の返還で交渉している」と報告した。これに対して、翁長は、「沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)合意で重要なので、よろしく」と応じ、会談後にも記者団に、「大変歓迎」と表明している。この会談で翁長は、政府―沖縄防衛局による「無法と暴力」に基づくヘリパッド建設への批判は、一切口にしなかった。くどいようだが、北部訓練場の半分の「年内返還」は、ヘリパッドの「年内完成」と完全にセットだ。翁長は、暴虐なヘリパッド建設工事に「歓迎」を表明し、菅に「よろしく」と言っているのだ。翁長に何を期待することもできないのは明らかだ。
安倍政府が、米軍提供区域内での抗議行動を弾圧するために、逮捕容疑として「刑特法」違反ではなく、「威力業務妨害」を適用すること、沖縄防衛局職員による「私人逮捕」ではなく、警察による逮捕を優先することを新たに検討していることも、10月7日になって判明している。そのために、日米両政府の間で、北部訓練場に限定する形で、「逮捕権の行使」を含む「保安活動」を日帝警察に認めることで合意しているという。「県」警は、「日米地位協定17条10項に関する合意議事録」で定める米軍当局の同意をすでに得たとしている。大規模で徹底的な弾圧が発動されようとしているのだ。
安倍の号令一下、弾圧体制が強化され、ヘリパッド建設工事に一気に拍車がかけられている。10月8日の「大行動」を前にして、6日にはトラック32台分の砕石とショベルカーなどを積んだトラック5台が、7日には過去最多となるトラック43台分の砕石と多数の資機材の搬入が強行された。しかし、沖縄労働者人民の怒りは、ますます激しく燃え盛っている。どのような弾圧も、その闘志を挫くことはできない。安倍政府の「年内完成」の策動を打ち砕くべく、逮捕覚悟の激しい闘いを連日にわたって展開している。天皇上陸阻止沖縄青年実行委員会は、現地集中をいっそう強化し、その闘いの最先頭に起つ決意だ。
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