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東北関東大震災被災労働者人民支援大運動を

高江現地レポート  ヘリパッド建設阻止へ新たな闘いを開始
(1196号5面)

「7・22敗北」の突破かけ頑強な闘いが続く高江現地

 米海兵隊・北部訓練場(国頭村、東村)のヘリパッド建設をめぐり、東村・高江では猛暑のなか、建設阻止をかけた労働者・住民の頑強な闘いが、連日にわたって展開されている。7月22日、労働者・住民が長年にわたって封鎖してきた「N1地区」ゲートが、全国から呼び寄せた数百の機動隊の激しい暴力で突破された。これに対して、闘う労働者人民は、「N1地区」ゲートから南東に直線で約3キロ離れた裏ゲートに闘いの拠点を移し、裏ゲートの封鎖を強化して、テント撤去―封鎖解除を迎え撃つべく、連日の闘いを組んできた。沖縄防衛局が8月5日を期限に、裏ゲートのテント撤去を求める通告を発した。8月5日には、約1000人の結集で裏ゲート前集会をもち、500人がそのまま泊まり込んで、翌日の撤去攻撃に備えた。7日夜にも約300人が泊り込んで、週明けの八日朝に備えた。

 こうした闘いは、沖縄防衛局と機動隊による当面の裏ゲート突破の策動を打ち砕いた。しかしながら、そうしている間にも、「N1地区」ゲートからは、舗装用の砂利を満載したトラックや、作業員を乗せた工事関係業者の車両が連日出入りし、工事を強行している。当面の工事は、「N1地区」ゲートからヘリパッド建設予定地を経て裏ゲートまで続く林道を拡幅・舗装して、工事用道路を貫通させるというものだ。この工事を阻止しなければ、裏ゲートをどんなに固めても、背後の林道から「逆落とし」をかけられる。「N1地区」のヘリパッド建設が進んでしまう。そればかりか、「H地区」「G地区」のヘリパッド建設工事まで可能になってしまう。この工事用道路は、「H地区」「G地区」へのアクセス路線でもあるからだ。

 これまでも、「N1地区」ゲート前をはじめ、「県」道70号で工事用車両に対する行動は、くり返し行なわれてきたが、「7・22」以降の闘いの重心は、裏ゲートにあったし、「県」道70号での行動そのものは、搬入に対する抗議行動であり、阻止行動ではなかった。その重心を「県」道70号に本格的に移し、「N1地区」ゲートに向かう工事用車両を実際に止める、それによって工事そのものを止めるというのが、8月19日の集会であった。

メインゲート前に500人が結集し、工事をストップ

 8月19日午前六時半から、北部訓練場のメインゲート前で大規模な集会が開催された。盆明けの工事再開を全力で阻止すること。そのために、「県」道70号上で「N1地区」ゲートへ向かう工事用車両を阻止するという、新たな闘いを意思一致し、実際に着手すること。これが集会の目的だ。

 早朝だというのに、メインゲート前の「県」道70号に、沖縄各地から500人の労働者人民が結集し、工事用車両を迎え撃つ態勢をとる。通常、工事を請け負う北勝建設のダンプカーは、国頭村の西海岸にある国場組の砂利採石場で砂利を積み込み、十数台で車列を組んで、警察車両に厳重に守られながら南回りで「県」道70号に入り、メインゲート前を経て、「N1地区」ゲートに至る。その車列を、メインゲート前で止めようというのだ。

 メインゲートを完全に封鎖する形で全員が座り込み、集会が開始された。主催は、「ヘリパッドいらない住民の会(高江住民の会)」、「高江ヘリパッド建設反対現地行動連絡会(高江連絡会)」、「基地の県内移設に反対する県民会議(県民会議)」などだ。

 山城博治氏(沖縄平和運動センター議長、「県民会議」共同代表)が司会を務める。山城氏は、「盆明けから工事が本格化しそうだ。工事を止めるには力強い行動が必要だ。今日の行動が成功するなら、今後、同様の行動を週1回ないし週2回やる。沖縄防衛局は、来年2月までにすべて完成させると言うが、それを遅らせることができるなら、3月からはノグチゲラなどの営巣期間に入り、4ヵ月間、工事は止まる。そうなれば、工事現場は、再び森に戻る。全国500、県警500、合わせて1000の機動隊を相手に、堂々と闘って工事を止めよう。その勝利は、日本全国、全世界を奮い立たせるだろう」と、熱く提起した。

 集会では、主催者を構成する各団体をはじめ、「県」議団・市町村議員団、弁護団、各島ぐるみ会議、普天間爆音訴訟原告団、嘉手納爆音訴訟原告団などから発言を受けた。「7・22は、悔しい思いをしたが、流れは変わりつつある。工事は、阻止できる。確信をもって闘おう」、「沖縄差別を許さず、戦争のない日本を造ろう。闘いは、始まったばかりだ」、「7月22日以来、今日初めて、工事用車両を止めている。工事は、動き出したが止められる。必ず勝利しよう」、「高江の闘いなくして、基地撤去はできない。沖縄に、米国の海兵隊も空軍も海軍も要らない。自衛隊も機動隊も要らない」という各団体の発言に、全体が大きな拍手で応えた。集会の途中には、「ウチナンチュの怒りここにあり」などと書かれたむしろ旗を先頭に、「県」道70号を制圧した渦巻きデモも行なわれた。

 この闘いに恐れをなした権力は、午前10時の時点になっても、採石場からダンプカーの車列を出すことができなかった。「今から車列を出したとしても、到着まで1時間以上かかる。少なくとも午前中の工事は完全に阻止した」、「昼まで止めれば、工事は1日止まる。週1回、週2回の集中した行動で、工事を遅らせ、断念に追い込もう」という山城氏の報告と提起に、大きな拍手と歓声が沸き起こる。今回は、「試験的な試み」ということもあり、午前10時で集会を終えることとなったが、全員が、工事阻止に向けた確かな手応えを実感するものとなった。

工事阻止の闘いに、凶暴性を一層強める権力―機動隊

 この日、権力は、全体が解散した午後1時から2時にかけて、ダンプカー10台で砂利の搬入を強行した。午前7時頃に採石場を出て、八時過ぎに「N1地区」ゲートに入るのが通常のパターンだから、実際に、この日の闘いは、約5時間にわたって搬入を阻止し、午前中の作業を丸々潰したことになる。「7・22」以来、初めてのことだ。搬入の際に権力は、メインゲートから「N1地区」ゲートの間を通行止めにした上で、座り込む150人の労働者住民を「ゴボウ抜き」にして強制排除した。

 沖縄労働者人民の不屈で熾烈な抵抗闘争を目の当たりにして、国家権力は、今や、凶暴性をむき出しにして、いっそう激しい弾圧に乗り出している。8月20日には、工事車両の車列を止めようと「県」道70号の高江橋に座り込んだ数十名の労働者住民を強制排除して機動隊車両の間や後方に押し込めて拘束したが、その際、「琉球新報」「沖縄タイムズ」の記者まで、一緒に排除・拘束することまでやっている。現場での恥ずべき暴力を隠蔽するためだ。「報道の自由」も何もあったものではない。

 8月22日には、高江橋の上に乗用車約30台を並べて、道路を封鎖し、工事用車両を止めようとした労働者・住民約90人を強制排除し、炎天下で約1時間半もの間、拘束した。その際、機動隊の激しい暴力によって、辺野古の闘士で87歳になる島袋文子氏が、小指を5針縫う切り傷を負わされるなど、2人が負傷させられ、救急搬送された。8月23日は、午前と午後の2回にわたって、合計でダンプカー20台分の砂利の搬入を強行した。1日に運んだ砂利の量は「7・22」以来、最多となる。しかも、「N1地区」ゲートの南にある高江橋で構える労働者・住民の道路封鎖の闘いを避けて、北周りで「N1地区」ゲートに工事用車列を搬入するという卑劣さだ。「北回り」とは、この日初めてとられたルートで、国頭村与那から安波に向けて横断する「県」道2号を通って「県」道70号に入り、国頭村方面から高江方面に下って「N1地区」ゲートに至るというものだ。やることが汚い。

 8月24日にも、権力は、「県」道70号で抗議行動中の1人を「公務執行妨害」をデッチ上げて不当逮捕し、さらに、「N1ゲート」近くで、ダンプカーの搬入阻止を闘う72歳の女性を突き飛ばし、負傷させた。女性は、地面に後頭部を強打して出血し、救急搬送された。8月25日朝には、沖縄防衛局が、「N1地区」裏ゲート奥の林道に、金網の設置を強行している。

 こうした強権的な攻撃に対し、現地では、一歩も引かない沖縄労働者人民の頑強・熾烈な闘いが、連日にわたって展開されているのだ。

現地攻防への集中を強化しヘリパッド建設実力阻止へ

 高江のヘリパッド建設は、1996年の「沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)合意」に基づくもので、北部訓練場の「過半」を返還する条件として、既存の訓練場内にある7ヵ所のヘリパッドのうち6ヵ所を「移設」するというものだ。約4000ヘクタールの返還計画をとらえて、安倍政府は、「沖縄の基地負担の軽減」をしきりに強調するが、それはとんでもないペテンだ。実際には、「返還」「移設」に名を借りた基地機能の強化以外の何ものでもない。

 そのことは、米海兵隊が2013年にまとめた「戦略展望2025」という基地運用計画書にも、明確に示されている。それは、ヘリパッド「移設」計画について、「最大51パーセントの使用不可能な訓練場を日本政府に返還し、限られた土地を最大限に活用する訓練場を新たに開発する」と説明している。「新たな訓練場の開発」とは、「建設から何十年も経っていて、もはや使い物にならない」(米軍関係者)既存のヘリパッドに代えて、オスプレイの訓練が可能なヘリパッドを新設するということに、決してとどまらない機能強化の企みを示すものだ。

 その典型が、「G地区」におけるヘリパッド建設である。「G地区」は、海に近く、その先の宇嘉川河口付近には「SACO合意」に基づいて新たに提供された米軍の訓練水域がある。海兵隊が宇嘉川河口に上陸し、そのまま行軍して作戦を遂行、「G地区」ヘリパッドに集合してオスプレイで回収という、一連の作戦訓練が、北部訓練場で常時可能になるのだ。海兵隊が海上から朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に上陸し、内陸部に電撃的に侵攻して北朝鮮指導部を殺害し、速やかに撤収という、米・韓が新たに作成した「作戦計画5015」に盛り込まれた「斬首作戦」の訓練も、ここで可能になる。「これまで海兵隊は、北部訓練場で陸・空の訓練しかできなかったが、今後は陸・海・空一体の訓練が可能になる」との指摘も出されている。

 米軍・伊江島補助飛行場(国頭郡伊江村)でも、8月22日から、強襲揚陸艦の甲板を模した着陸帯(LHDデッキ)の拡張工事が開始された。拡張工事は、MV22オスプレイや、垂直離着陸が可能な海兵隊仕様の最新鋭ステルス戦闘機・F35の離着陸訓練を行なうためだ。完成すれば、着陸帯の敷地面積は約10万7000平方メートルと、これまでの約2倍になる。F35は、米海兵隊・岩国基地(山口県)に、現行のF18戦闘攻撃機やAV8ハリアー垂直離着陸機に代えて、2017年1月から8月にかけて16機配備することが計画されているもので、岩国配備に伴い、その訓練場として、伊江島補助飛行場を使おうというのである。米空軍・嘉手納基地でも、米海兵隊の半年ごとの「部隊展開計画」(UDP)を支えるため、このF35の格納庫を整備する計画がある。岩国から嘉手納に飛来したF35が伊江島で訓練し、辺野古から強襲揚陸艦に載って戦地に出撃するというわけだ。名護新基地を中軸にして、本島中北部の米軍基地の一体的有機的な機能強化が進められようとしているのだ。

 高江の闘いは、名護新基地建設阻止の闘いとともに、こうした基地再編―機能強化を打ち砕く闘いの重要な一環だ。現地攻防は、ますます白熱している。天皇上陸阻止沖縄青年実行委員会と沖縄・首里日雇労働組合は、現地集中をいっそう強化し、実力闘争への確信を深め熾烈な闘いを打ちぬく沖縄労働者人民の先頭に起って闘いぬいていく決意だ。