8月13日から15日までの3日間、福岡・築港日雇労働組合(福日労)を軸とする「福岡日雇い団結夏祭り実行委員会」の手によって、天神近くの須崎公園において、団結夏祭りが開催された。今年の夏祭りは、「失業も、夏の暑さも吹っ飛ばせ!
力を合わせて生きぬくぞ!」をメイン・スローガンに闘いぬかれた。
会場の設営から撤収までの作業を担う設営班や、炊事班、洗い場班、警備班など、「実行委員会」の各班には、「仕事よこせ」の対市役所行動に関わってきた仲間たちをはじめ、多くの日雇い・野宿の労働者が積極的に参加した。新たに野宿を強いられた労働者も参加した。また、生活保護をとっている仲間たちも参加した。これらの仲間たちが諸作業を担い、さまざまな催しに参加することによって、活気ある夏祭りがかちとられた。「一人の野垂れ死にも許すな」と、労働者自身の手で仲間の命を守りぬくこの取り組みには労働者人民の共感が集まり、反戦や反原発運動に関わる労働者・市民をはじめ、野宿する仲間へのボランティアの方など、多くの人々が支援に加わり、炊事、洗い場などの仕事を担ってくれた。多くの資金と物資のカンパも寄せられた。こうした力で、夏祭りの成功はかちとられたのだ。
福岡市の高島市長は、今年の2月11日、「日本会議福岡」の「日本の建国をお祝いする集い」において、「国旗は国家の象徴としてなくてはならないもの」とする発言をした。このように高島は、安倍との結びつきを強め、「アベノミクス」の目玉の一つである「国家戦略特区」の「グローバル創業・雇用創出特区」なるものを推進している。「労働規制の緩和」をもって、劣悪な労働条件での雇用を可能にすることで、内外の企業を呼び込もうというものだ。「解雇自由化」の国策を全国に先駆けて推し進めようというのである。労働者には、激しい競争と切り捨て、タダ働きと過労死の押しつけが強められるだけだ。膨大な失業者と「非正規雇用」の労働者が生み出され、野宿へと追いやられる労働者が、ますます増やされようとしているのだ。
福岡における日雇い・野宿の労働者の状況は、より厳しさを増している。築港の寄せ場では、朝の5時から立っても、業者が来ない日々が常態化している。寄せ場に立っても仕事がないことから、築港に来ること自体をあきらめてしまった労働者が多く、朝の寄せ場に1人の労働者が立つこともない日々も増えている。もはや寄せ場としての態をなしていないと言っても過言ではない状況だ。こうしたなかで「仕事があるなら何でもやりたい」という日雇い・野宿の労働者の足元を見透かして、タダ同然でこき使う業者が横行している。とりわけ、福島の「原発事故」処理関連の仕事の現場などへと労働者を引っ張っていき、使い捨てにしている。アルミ缶を集めてかろうじて命をつないできた多くの労働者たちには、一昨年から「罰金」付きの「条例」が施行されている。生活保護費の削減も強行された上で、「生活保護ホットライン」なる「たれ込みダイヤル」により、生活保護受給者にも厳しい締め付けが加えられている。「1億総活躍」のかけ声のもと、生活保護受給者を原発労働に動員しようという動きなぞ、絶対に許してはならない。
福日労は、7年余りにわたり、毎週のように「仕事よこせ」の対市役所行動を行ない、「生活保護より仕事がほしい」「体が動くうちは働いて生活したい」という労働者たちの声を市に突きつけてきた。こうした要求を無視し続けている行政は、労働者に「野垂れ死ね」と言っているに等しい。こうした行政の姿勢とも相まって、野宿する労働者への排撃も強められている。福日労が夏祭りの会場にしている須崎公園のステージの一角で野宿していた労働者たちのテント小屋2軒が、この6月に焼失した。何者かによって放火された可能性がとても高い。街の中心近くで、白昼、このような事態が引き起こされたことを軽視してはならない。
夏祭りでは、政府―厚生労働省の出先機関である福岡労働局と福岡県に対する要求書の提出が行なわれた。後日、これへの回答をめぐって、福日労と労働局との交渉が持たれる予定だ。民間企業による首切りが強められるなか、「民間企業における雇用の拡充を促進する。失業対策事業の方式はとらない」と言い続ける政府の労働行政に対して、またこれを盾に取って公的就労対策の要求を受けつけようとしない福岡市、福岡県に対して、さらなる闘いを叩きつけていかなければならない。「民間における雇用の拡充」なぞまったく期待できない中で、「原発労働があるではないか」という居直りを、絶対に許してはならない。ますます増え続ける「非正規雇用」労働者をはじめ、全国で失業・貧困に呻吟する労働者の先頭に起って、寄せ場―日雇い労働運動こそが、仕事をかちとる闘いの前進を切り拓いていかなければならない。
〈1日目〉
8月13日、朝6時の集合時刻には、すでにたくさんの日雇い・野宿の仲間が集まっている。軍手とタオルが手渡され、全員そろって打ち合わせを済ませたら、さっそく作業開始だ。朝食ができる頃にはすべてのテントが建ち、寝床が作られ、布団も敷かれた。会場内のステージ上には、団結夏祭りの開催を告げる大横断幕が張られた。暑さの中、仲間たちは、力を合わせて作業を進めていく。会場の形は、早くから整った。
昼食の後、オープニングセレモニーを兼ねて、突入集会が開始され、夏祭りの開幕が大々的に宣言された。「実行委員会」の各班からの決意表明などが行なわれる。突入集会は、「一人の野垂れ死にも許さないために、楽しく意義ある夏祭りをやりぬこう」という実行委員長の言葉と団結ガンバロウで締めくくられた。
夕食の後は、総決起集会だ。
全国の寄せ場でも夏祭りが取り組まれていることが紹介され、連帯メッセージが読み上げられる。東京・山谷日雇労働組合からは、「7月の参院選で『改憲勢力』が3分の2の議席を確保し、改憲攻撃が激化することは必至です。『圧勝』と言われていますが、そのやり方は、徹底的に『改憲』の本音を隠し、『アベノミクス』に『希望がある』というウソとペテンを繰り返した結果でしかありません。ウソとペテンで手に入れた『圧勝』なぞ、長続きするはずもなく、労働苦、生活苦に直面している労働者の実力決起を爆発させ、安倍政府の打倒を1日も早く実現しなければなりません」。「反戦・反失業を闘う釜ヶ崎労働者の会」からは、「センターの周辺では、朝市つぶし、アオカンの仲間の荷物廃棄、花園公園での行政代執行が強行されています。これこそが『センター縮小・移転』の正体です。大阪府・市行政、地域ボスどもは、『まちづくり』と称して、寄せ場―釜ヶ崎を解体しようとしているのです。釜ヶ崎は、おれたち日雇い労働者の街です。おれたちは、一生、釜ヶ崎で生きていきます。おれたちが生きていくうえでこうむる不利益に対しては、絶対に許さず闘いぬきます」。沖縄・首里日雇労働組合からは、「沖縄では、今、安倍政府による凶暴な高江ヘリパッド建設、名護新基地建設の攻撃との決戦攻防の時を迎えています。沖日労は、この攻撃を打ち破るべく、多くの沖縄労働者人民とともに、現地攻防に連続的に決起しています」。福岡の教育労働者からは、「私は、教育労働者として、日々、子どもたちと向き合っていますが、ワーキング・プア状況の増大、生活格差の拡大は子どもたちにまで影響を及ぼし、次の世代に暗い影を落とし続けていることをひしひしと感じています」「誰一人置き去りにしない労働運動の真価を」と訴えるメッセージが寄せられた。
続いて、「実行委員会」を代表して、福日労の仲間から今年の団結夏祭りの基調が提起され、集会の最後には、3日目の15日に行なう福岡労働局と福岡県に対する公的就労対策要求の行動への呼びかけが行なわれた。
娯楽映画の上映で夜も更け、10時の就寝時間となる。その後は、多くの労働者が警備のために不寝番を担った。
〈2日目〉
午前中からさまざまなゲームが行なわれ、祭りの雰囲気は盛り上がる。恒例となった「御輿だ! ワッショイ!」の「福日みこし」は、会場内を所狭しとねり歩き、これに洗い場班を中心とした水かけ部隊が、これでもかこれでもかと水をかけまくる。「みこし」は、ステージ前から外にくり出し、公園まん中の噴水の中にまで突入した。寄せられたカンパ物資による衣類の放出も行なわれ、仲間たちは新しい衣類に着替え、誰もがさっぱりとした姿になった。
夕食前の労働者交流会では、前日のアンケート結果が発表された。回答した仲間たちは野宿、生活保護の受給、年金や日雇い仕事などと様々である。「仕事よこせ」の闘いが重要であることが確認され、福岡労働局と福岡県に対する要求行動が呼びかけられた。
続いて、組合として取り組んでいる熊本被災地支援に係わり、何回も現地に足を運んでいる仲間からの取り組みなどの報告を受ける。まだまったく手つかずと言っていいような現地において、被災者宅の片付けなどに汗を流す様子が細々と語られ、他の仲間たちにもいっしょに支援活動をしようという訴えがなされた。
夕食後は、お馴染みの女性による歌謡ショーを中心とした催しだ。80歳という高齢にもかかわらず、何曲もの歌を溌溂と歌い続けた彼女に惜しみのない拍手が送られた。続いてのお笑いの方々の芸達者ぶりには、誰もが腹を抱えて大笑いだ。こうしてこの日も、夜が更けるまで誰もが楽しい時を過ごした。これらの催しには、たまたま通りかかって会場の盛り上がりに惹かれて会場内にやって来た、福岡の大学で研究をしている海外からの学者のカップルも大喜びだった。
〈3日目〉
朝食をすませ、さっそく「仕事よこせ」の対福岡労働局、対福岡県庁行動だ。厚生労働省の出先機関である福岡労働局と福岡県に対する要求書の内容が全体の拍手で確認される。要求書は、「『民間雇用の拡充』などという方便にはうんざりである。それを言い続けることで、どれだけの日雇い・野宿の労働者が仕事に就くことができたというのであろうか。われわれが知るかぎりでは、皆無と言っていい状態である。その責任を放棄し、日雇い・野宿の労働者が野垂れ死ぬのを待っているとしか思えないではないか」「国の杜撰な政策により、事故を起こした原発の後始末で、何故、被曝労働をして、死んでいかなければならないのか。原発労働にしろ、除染作業にしろ、すべては『民間まかせ』の結果、重層的な下請け構造によるピンハネ、賃金不払い、労災もみ消し等の温床となるだけではないか。被曝労働に対する永続的な補償システムすらない中、末端の違法な人夫出しまかせという、『民間雇用の拡充』の結果、人知れず死んでゆく『システム』が出来上がっているだけではないのか。これが国による『雇用政策』の実態ではないのか。このようなデタラメな姿勢を改め、ただちに失業にあえぐ労働者の苦境を改善する施策に転換することを求める」として、福岡労働局に対して、「東京都が行なっている『特別就労事業』のような、日雇い・野宿の労働者のための公的就労対策事業が行なえるよう、本省とともに検討をすること」、「福岡県や福岡市に協力して、必要・可能な措置を講じること」を要求している。福岡県に対しては、公的就労対策事業の実施を求めた上で、「国への働きかけや福岡市との協力」を要求している。要求行動におもむく代表団を拍手で送り出していく。代表団はまず、福岡労働局の入っている合同庁舎へと出向く。対応に出た総務部企画課長らに対して、要求書を読み上げて手渡した。「福岡労働局は仕事を作れ」、「失業・野宿の押しつけを許さんぞ」、「国は責任を取れ」と、何度もシュプレヒコールを叩きつけた。続いて、福岡県庁に向かう。対応に出た労働局労働政策課企画調整係係長らに要求書を手渡す。その後、代表団は福岡県庁に対し、「福岡県は、日雇い・野宿の労働者のために仕事を出せ」というシュプレヒコールを叩きつけ、須崎公園に引き返した。代表団は、公園内の仲間たちから盛大な拍手で出迎えられるなか、行動の報告を行ない、この秋には国との交渉に起ち上がることを確認した。
昼食時には、歯科の先生が組んでいるバンドによるハワイアンの演奏だ。
昼食の後には、「労働・生活・医療の大相談会」が行なわれた。
午後4時からは、恒例の「福日みこし」が始まる。ハッピ姿にねじり鉢巻の10人ほどの仲間たちが、福日労ののぼりが立った「みこし」を担ぎ、「ワッショイ、ワッショイ」と威勢のいいかけ声で会場内を練り歩き、さらには会場の外までも張り切って駆け回る。バケツやホースで思いっきり水をかけられて全員ずぶ濡れの姿に、会場は大盛り上がりだ。爆笑と温かい野次に包まれて、この日も「みこし」が会場を沸かせた。
夕食時には、三味線の演奏で独特の歌を披露する女性アーティストの恒例のライブだ。労働者がいっしょに歌を歌い、太鼓を叩くなか、会場は爆笑の渦に巻き込まれた。夜は、遅くまで映画が上映された。
翌日の片付けにも、40人余りもの仲間たちが参加し、作業に汗を流した。こうして、2016年福岡日雇い団結夏祭りは、大成功のうちに幕を閉じた。
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