暴虐な建設工事を弾劾する
安倍政府―沖縄防衛局は、7月22日、米海兵隊・北部訓練場(国頭村、東村)の「N1地区」、「G地区」、「H地区」の3地区・4ヵ所において、ヘリパッド建設工事の着工を強行した。全国から警視庁をはじめ約500人の機動隊を動員し、「まるで戒厳令」(『琉球新報』)のような厳戒態勢を周辺地域に敷いた上で、圧倒的な数と暴力で沖縄労働者人民の闘いを蹂躙し、労働者・住民たちの車両やテント、物資を破壊・強奪し、工事に踏み込んだのだ。怒りを込めて弾劾し、猛然と反撃の闘いに起ち上がっていかねばならい。
工事着工の攻撃は、7月11日早朝から開始された。7月10日投開票の参院選で、現職の沖縄北方担当大臣が、10万票以上の差をつけられて沖縄選挙区で落選したその翌日のことだ。安倍政府が、選挙結果を見越した上で、この日に合わせてあらかじめ周到な準備を進めていたということだ。それは、「沖縄の民意」など歯牙にもかけない安倍政府の差別性、強権性、凶暴性を露骨に示すものだ。
7月11日午前6時、政府―沖縄防衛局は、「県」警機動隊約100人、民間警備員約20人を使って、労働者人民が抗議行動などで使用していた北部訓練場のメインゲート脇の空き地を鉄柵で囲い込み、これに抗議する労働者人民を力ずくで排除した上で、メインゲートから機材を基地内に搬入した。メインゲートは、新たなヘリパッドの建設先の「N1地区」にはつながっていないが、建設地への入路となる「N1地区」ゲートまでは目と鼻の先だ。そこは、高江住民を先頭とする闘う労働者人民が、車両やテントで実力封鎖を続けている。この日以降も、沖縄防衛局は、連日のように早朝から大型車両を連ね、機動隊の暴力で労働者人民を排除しながら、メインゲートから、プレハブや簡易トイレ、水タンク、大型発電機などの資機材の搬入を強行した。
7月15日には、米軍属による「女性殺害事件」を受けて、防衛省が「再発防止策」と銘打ち、「沖縄・地域安全パトロール隊」として沖縄に送り込んだ同省職員60人を、高江や辺野古の警備に振り向ける計画が、報道によって明らかになった。米兵、米軍属が相手の「防犯」目的の部隊のはずが、いつの間にか、沖縄労働者人民に対する監視・警備目的の部隊にすり替えられているのだ。そして、実際この部隊は、7月16日夕方から「N1地区」ゲート前に登場し、白ヘルメット、作業服姿で労働者人民に対峙した。7月18日には、警視庁機動隊をはじめ、全国から動員した機動隊約500人が、「N1地区」ゲート近くを中心に周辺地域に配備された。
これに対して、闘う労働者人民は、7月16日夕方以降、メインゲート前から「N1地区」ゲート前に攻防の拠点を移し、権力の弾圧に一歩も引かずに、連日にわたってゲート封鎖の闘いをやりぬいた。7・22の激突を頂点とするこの過程を、天皇上陸阻止沖縄青年実行委員会(沖縄青年実)と沖縄・首里日雇労働組合(沖日労)は、泊まり込みも含んで連続的に決起し、ともに闘いぬいた。
〈7月21日〉 1600人の現地大結集でゲート前の抗議集会を開催
工事開始を目前にした7月21日には、午後2時から、「N1地区」ゲート前において、抗議集会が開催された。「ヘリパッドいらない住民の会(高江住民の会)」、「高江ヘリパッド建設反対現地行動連絡会(高江連絡会)」、「基地の県内移設に反対する県民会議」(県民会議)」の3者による共催である。平日にもかかわらず、しかも那覇市内から車で2時間半以上かかる遠隔地であるにもかかわらず、沖縄各地から多くの労働者人民が結集した。
焼けつくような暑さのなか、「ゲートを開けないぞ」、「ヘリパッドを止めるぞ」、「やんばるを守りぬくぞ」、「団結して闘うぞ」という熱いシュプレヒコールで、集会は、開始された。
司会は、「県民会議」の共同代表を務める「沖縄平和運動センター」議長・山城博治氏だ。山城氏は、「安倍政権が全国から機動隊を動員して県道を封鎖し、座り込みを実力で排除して工事に入ろうとしている。県民を脅迫しているようだ。断じて許すわけにはいかない。ぜひとも集会を成功させて、明日からの闘いにつなげよう。この闘いは、一つの基地建設の問題というより、安倍政権と県民全体の闘いだ」と提起した。
続いて、「高江住民の会」、「高江連絡会」、「県民会議」、「ヘリ基地反対協」、「うりずんの会」、「沖縄平和市民連絡会」が登壇し、「高江での座り込みは、今年で10年目になる。新たなヘリパッドは、6ヶ所のうち、まだ2ヵ所しか完成してない。75メートルのヘリパッドを、わざわざ木を伐採して造るのは許せない」、「オスプレイが毎晩、家の上空を低空飛行で飛ぶので、今は、国頭村に避難している。生活ができない。村を出ていく道しか残されていないのか。国は、どこまで私たちを苦しめるのか。この美しいやんばるの森に、オスプレイのヘリパッドは絶対に造らせない」、「ハワイでは、コウモリを保護するために、オスプレイの飛行が禁止されている。沖縄県民は、コウモリ以下か」、「辺野古新基地も、オスプレイパッドも絶対に造らせない。海にも山にも基地は造らせない。政府は、辺野古と高江で工事を進めて、反対運動を股裂きにするつもりだろうが、臨機応変の闘いで、2つともにぶっ潰そう」と、次々に熱い決意を述べた。
最後に、「沖縄平和運動センター」事務局長・大城悟氏から、「参加人員は、1600人」との発表が行なわれると、会場からは大歓声が沸き起こった。続けて、大城氏は、「71年間、私たちは、闘ってきた。工事は、止められる。沖縄の未来を私たちの手で切り拓こう。明日未明に予想される車両・テントの強制撤去に備えて、1人でも多くの人がここに泊まってほしい」と呼びかけて、集会を締めくくった。集会は、体を張った闘いで建設を阻止する強い決意を打ち固める場となった。
〈7月22日〉 数百の機動隊を相手に着工実力阻止の激闘が闘われる
攻防は、前夜(7月21日)の午後6時40分から始まった。数十名の機動隊が、急造の「駐車禁止」の携帯看板を携えて、「県」道70号の北側から乱入してきたのだ。「県」警機動隊は、「本日午後5時に名護警察署長が駐車禁止を決定した。今から規制する」と宣言する。「N1地区」ゲート前を挟んだ「県」道の南北約1キロにわたる区間は、沖縄各地から労働者人民が車で結集し、翌朝の攻防に備えていたのだが、突如として権力は、その区間を「駐車禁止」にすると言い出したのである。労働者人民のゲート前結集を禁圧するとともに、ゲートを二重に封鎖している車両を強制撤去する「法的根拠」を無理やりねつ造しようという、にわか仕立ての卑劣な策動だ。その過程で、機動隊の指揮車が市民をはね飛ばして逃げ去るという事態も発生した。権力による「ひき逃げ」だ。取り残された機動隊部隊を労働者・住民が取り囲み、足止めして、深夜11時半まで抗議行動が展開された。結局、この日、機動隊は、「違反切符」を切ることも、「違反車両」をレッカー移動することもできずに、看板を守るわずかばかりの機動隊員を残して撤退せざるをえなかった。
7月22日の激闘は、午前2時すぎから開始された。権力が、ゲート周辺の「県」道を南側(東村側)と北側(国頭村側)で封鎖し、闘う労働者人民を分断・孤立させた上で、南北双方から挟み撃ちにして、ゲート前に雪崩込もうと目論んでいることは歴然だ。これに対して労働者人民は、駐車していた各自の自家用車など約170台を、約1キロにわたって路面に「八の字」型に並べ、バリケード代わりにして、「県」道を「逆封鎖」する。機動隊車両やレッカー車の突入を阻止するためだ。さらに、その「逆封鎖」の南端と北端の2ヵ所に座り込んで「阻止線」を作り、機動隊の来襲を迎え討つ態勢を整える。その数は全部で約200人。
午前5時、「県」警に加えて、警視庁、千葉県警、福岡県警など、大量の機動隊車両が南北の「阻止線」近くに集結。北側には大小複数のレッカー車も見える。そしてついに5時30分、車両を降りた機動隊が一斉に労働者人民に襲いかかった。バリケード代わりに置いた車と車の間に座り込む労働者人民に対して、激しい暴力を加えて「ゴボウ抜き」にしていく。しかし、労働者人民は、ひるまない。後には引かない。強制排除されても、機動隊の囲みを突破して再び座り込みに合流する。激しい押し合いが各所で展開される。
その激闘は、3時間以上にもわたって展開された。数百の機動隊が、たった1キロの区間を南北双方から同時に攻め立てて、その中心に位置するゲート前に到達するまでに、3時間以上もの時間を要したのだ。「逆封鎖」の時点から数えれば、数時間にわたる攻防だ。それは、労働者人民の怒りと抵抗のすさまじさを示すものだ。
しかし、ついに、午前9時、機動隊による総攻撃が始まる。南北からゲート前に到達し、労働者人民をサンドイッチにする形でぶ厚い壁を作っていた機動隊が、「排除」の号令一下、一斉に労働者人民に襲いかかる。労働者人民を暴力的に機動隊の壁の後方や「県」道の外へと排除し、駐車車両を次々とレッカー移動していく。そればかりではない。ゲートを塞ぐ形で置かれた2台の宣伝カーの上で抗議行動を続けていた十数名の労働者人民に対しても、機動隊や公安どもが、まるで蟻がたかるように大挙して殺到する。宣伝カーをメチャクチャに踏み壊しながら屋根にのぼり、労働者人民に激しい暴行を加えた上で、無理やり引きずり降ろしていく。反対運動の拠点となってきたテントも無残に破壊された。負傷者が続出し、救急搬送される者も相次いだ。
闘争参加者たちは、態勢を立て直すため、新川ダム近くの公園まで一時撤退を余儀なくされた。
高江―辺野古を貫いた現地実力闘争の爆発をかちとれ
マスコミ報道によれば、この日午前6時すぎ、沖縄防衛局は、労働者が数人で守っていた「N1地区」裏ゲートをも急襲し、ゲート前を制圧して、鉄板や鉄パイプなどの資材の積み下ろしを強行した。「H地区」、「G地区」のそれぞれのゲートに続く道路も封鎖して、工事車両を次々に入れたという。
安倍は、名護新基地建設の強行を前に、高江において「圧倒的な力の差」を見せつけ、思い知らせることで、沖縄労働者人民に挫折感、無力感を植えつけ、その反戦・反基地の闘志を粉々に打ち砕いてしまおうと考えたのであろう。しかし、その目論見は、完全に失敗した。暴虐な工事着工への怒りは大きく燃え広がっている。闘う労働者人民の意気は高まるばかりだ。実際、翌7月23日午後2時から開催された「N1地区」ゲート前での抗議集会には、120人以上の労働者人民が結集するなど、以降も、多くの労働者人民が高江現地に連日結集し、着工に抗議し工事車両を阻止する闘いを果敢に継続している。
安倍政府は、ヘリパッド建設と併せて、「和解」の成立によって建設工事が止まっている名護新基地についても、7月22日、「埋め立て承認取り消し」に対する国の「是正指示」に知事・翁長が応じないのは「違法だ」として、福岡高裁那覇支部に「不作為の違法確認訴訟」を起こした。さらに、米海兵隊のキャンプ・シュワブ内の陸上部分の工事について、「和解協議の対象である埋め立て工事とは関係ない」、「県が同意しなくても工事はできる」と強弁して、「早期に工事に着手する」(防衛相・中谷)ことを宣言している。工事再開の内容は、隊舎と生コン製造施設などだとされるが、それらが新基地建設の一環であることは疑う余地がない。とりわけ生コン製造施設は、そのまま埋め立て工事にも転用される可能性が極めて高い。これまで反対運動によって、生コン車が思うように基地内に搬入できなかったことから、今度は、生コンを基地内で造ってしまおうという魂胆だ。「沖縄防衛局は、8月上旬にも工事を再開する方針」と報道されている。これが、安倍が言う「和解」の実相だ。
高江ヘリパッド建設工事着工を弾劾し、工事を阻止しよう。陸上部分の工事再開を許さず、名護新基地建設を阻止しよう。高江―辺野古を貫く現地実力闘争の爆発をかちとろう。沖縄青年実と沖日労は、闘いの最先頭に起つ決意だ。
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