5・23闘争実行委員会が前段集会を開催
全国部落解放青年同盟がメッセージ
午前11時、解放派と全国学生部落解放研究会連合の部隊は、日比谷野外音楽堂の入口に登場した。横断幕を広げ、ゼッケンを身につけ、ビラまきを開始する。すでに集会に参加するため、続々と全国の部落大衆が結集し始めていたが、次々とビラが受け取られていく。日比谷野外音楽堂の入口の周辺では、公安私服どもがビデオカメラを構え、何かあればいつでも弾圧をしかけてやろうと狙っている。部隊は、これを一蹴し、集会直前まで情宣行動を貫徹した。
正午過ぎ、5・23闘争実行委員会が、前段集会を開催する。結集する多くの部落大衆からの注目を集める中、部落解放運動を闘う仲間が司会に起ち、シュプレヒコールで集会が開始された。「狭山差別裁判を糾弾するぞ」「石川氏不当逮捕53ヵ年を糾弾するぞ」「第3次再審棄却を阻止するぞ」「狭山闘争の歴史的勝利をかちとるぞ」「革命的部落解放運動の飛躍・前進をかちとるぞ」。
まず最初に、全国部落解放青年同盟からのメッセージが司会により代読される。「安倍極右政府は、国家権力頂点からの極悪な反朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、反中国―反共・排外主義攻撃を加速させ、戦争熱を煽りたてている。安倍政府が、戦時国家体制構築に突き進む中で、部落解放運動総体もまた大きな試練を迎えている。安倍政府が、部落解放同盟内社民・こえ派などの既成勢力にさらなる屈服を迫り、ファシズム融和運動への転換攻撃を推し進めてくるのは必至だ」「〈差別裁判糾弾、階級裁判粉砕、国家権力糾弾・打倒〉の旗幟を鮮明にして、階級的共同闘争と大衆的実力闘争・武装闘争で闘いぬかなければならない。東京高裁の再審棄却を許さず、狭山闘争の勝利を何としてもかちとろう」「部落差別をはじめ、あらゆる差別が拡大・再生産され、差別襲撃事件が度々引き起こされるこの新たな戦時下の時代において、あらゆる差別と闘う団結を求める目的意識をもった運動を、われわれが先頭で作り出さねばならない。部落解放同盟内社民・こえ派の主導する『差別の法規制』要求運動を踏み越え、吹き荒れる差別煽動をぶち破る闘いとして、差別糾弾闘争の復権を何としてもなしきらねばならない」「全青同は、その歴史的責務にかけて、革命的部落大衆の組織化をなしきり、革命的反戦闘争をともに闘いぬき、部落差別の廃絶をかちとって部落解放の〝佳き日〟をたぐり寄せていく決意を、改めて明らかにする」。
全国学生部落解放研究会連合が基調提起
全国学生部落解放研究会連合より基調が提起される。「第26回『3者協議』で、狭山弁護団が、東京高検に対し、『秘密の暴露』とされた脅迫状を届けた時の『車の追い越し』『車の駐車の目撃』について強く証拠開示勧告申し立てを行なったが、東京高検は、「不見当」なる回答を示した。その後の狭山弁護団の再三の追及に対しても、第27回『3者協議』において、東京高検は、『これらの証拠は不見当であり、当初から存在していたかどうかは不明だ』とする無責任極まりない意見書を出してきた」「狭山弁護団が開示を要求していた『万年筆』『財布』『手帳』関係の証拠開示について、東京高検は、『検討する』と回答した。次回の第28回『3者協議』は5月下旬の予定である」「東京高裁・植村は、検察に対してまったく手ぬるい態度をとりつづけ、自らは、事実調べも証拠調べも行なおうとしていない。棄却のタイミングを虎視眈々と狙っていると言わざるを得ない。そんな東京高裁の姿勢を見透かす東京高検は、狭山弁護団の指摘する物的証拠の存在について、一貫して『不見当』なる回答を繰り返すのみである。東京高検に全証拠開示を迫る闘いをやりぬかなければならない。さらに、東京高検以外の場所にある領置物のリストもただちに開示させなければならない」「不当逮捕から53年の今年、無実の部落民=石川一雄氏の決意に応える闘いを緊張感を持ってやりぬいていかなければならない。石川氏に『見えない手錠』をかけ続け、差別裁判を強行し続ける司法―国家権力に対する『公正・中立』幻想を一切捨て去り、〈差別裁判糾弾、階級裁判粉砕、国家権力糾弾・打倒〉の旗幟を鮮明に、戦闘的部落青年・大衆と連帯し、階級的共同闘争、大衆的実力闘争・武装闘争の爆発で、第3次再審棄却を阻止し、第3次再審闘争勝利へ進撃しよう。狭山闘争の歴史的勝利をかちとろう」「全国で激発する差別事件に対しては、全国水平社の差別糾弾の思想を引き継ぎ、徹底した差別糾弾闘争で闘いぬくことこそが必要だ。部落解放同盟内社民・こえ派の『告訴・告発』方針を踏みしだき、差別糾弾闘争の復権をかちとろう。特に、『鳥取ループ』=宮部龍彦なる輩や、『在特会』などファシストどもによる、法的手段を屁とも思わぬ悪辣な差別煽動に対しては、その極悪ぶりにふさわしい怒りの鉄槌を準備してやらなければならない。部落解放運動のファシズム融和運動への転換攻撃を粉砕し、日帝の朝鮮反革命戦争突撃と対決する部落解放運動の革命的飛躍を切り拓こう。部落差別の根底的廃絶、部落の根本的解放へ闘おう」。
結集した闘う仲間からの決意
集会に結集する各団体からの闘う決意を受けていく。全国「障害者」解放運動共闘会議(全「障」共)の仲間は、「これまで歴史的にたくさんの『障害者』が抹殺されてきたことを肝に銘じ、今なお多くの『障害者』が施設や病院に隔離・収容され、抹殺されようとしていることに対する徹底的な糾弾闘争をやりぬいていかなければならない」「〝7・3、『心神喪失者等医療観察法』施行11ヵ年糾弾!
国立精神・神経医療研究センター糾弾デモ〟、〝7・18、『入院患者差別・虐殺32ヵ年糾弾! 宇都宮病院糾弾闘争〟を闘おう」。東部朝鮮史研究会の仲間は、「2ヵ月にわたる米韓合同軍事演習が強行された。即開戦に転じることのできる激しい訓練を通し、朝鮮反革命戦争突入の時が切迫している」「熊本地震で、『朝鮮人が井戸に毒を投げている』なる差別煽動が吹き荒れた。断じて許すことはできない」「朴槿恵政権打倒を闘う韓国労働者人民と連帯し、日朝連帯闘争の前進をかちとる。5・29日朝連帯集会に結集しよう」。東京・山谷日雇労働組合の仲間は、「労働組合として、差別と闘うことが重要と考えている。差別と闘わずして、アブレ(失業)、野垂れ死にを強制する資本家や国家権力に打ち勝つことができないと考えるからだ。資本家の搾取・収奪との闘いと、差別糾弾の闘いを1つの物として闘いぬく」。「反戦・反失業を闘う釜ヶ崎労働者の会」の仲間は、「差別の元凶=天皇・天皇制は打倒しなければならない。大阪市行政による、花園公園での行政代執行による野宿労働者叩き出しが強行されている。命を削って必死に生き抜いている仲間たちへの攻撃を許すことはできない」。福岡・築港日雇労働組合の仲間は、「安倍政府は、おれたち日雇い労働者に対し、『野垂れ死にか、戦争のために最後まで働くかだ』『原発で働いて死ね、これが国のためだ』と迫っている」「石川さんとともに、差別糾弾を闘いぬく」。最後に、反安保労研全国センターの仲間は、「部落大衆と労働者たちが結びついた階級的共同闘争と大衆的実力闘争・武装闘争こそが勝利のカギを握る」「安倍政府の語る『同一労働同一賃金』とは、労働者の賃金を引き下げるための攻撃であり、粉砕あるのみだ。戦争遂行の安倍政府を打倒しよう。6・12―6・15安保粉砕・政府打倒全国統一行動を闘おう」。
司会が前段集会終了を宣言し、再度全体でシュプレヒコールをあげ、本集会へと合流していく。
日比谷野外音楽堂で本集会
石川氏の決意表明と弁護団報告
本集会の会場である日比谷野外音楽堂では、既に多くの戦闘的部落大衆や労働者たちが結集するなか、「アコースティック・バンド」である「ジンタらムータ」のミニコンサートが行なわれていた。
コンサート終了後の午後1時、「狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会」主催の「不当逮捕53年! いまこそ事実調べ・再審開始を!」と題した集会が開始される。
部落解放同盟の組坂委員長の開会あいさつ、各政党あいさつに続いて、無実の部落民=石川一雄氏が登壇すると、会場全体から歓声があがる。石川氏は、「第3次で決着をつけねばならないと、不退転の決意を固めている」「検察官が数々の証拠を隠し持っていることに対し、出させることが闘いであり、勝利のためにはみなさんの支援が必要だ」と訴えた後、得意の短歌を披露する。「冤晴らす
気概を胸に 真実を 黙する司法に 総意で喝」。最後に「まだまだ77歳。まだ先がある。元気なうちに、無罪をかちとっていきたい」。石川氏の発言終了後、会場全体から大きな拍手が沸き起こった。
石川早智子氏からのアピールに続き、弁護団報告がなされる。狭山弁護団の主任弁護人である中山武敏弁護士から、「部落差別による予断と偏見による違法捜査があったのは明らかであり、石川氏は無実だ」「狭山闘争は、重要な時期にある。『3者協議』で185点の証拠が開示され、警察による証拠の捏造が明らかになる。弁護団は、182点の新証拠を提出した」と成果を強調した。次に、今回初めて狭山弁護団に参加することになった、憲法学者の小林節弁護士からのあいさつがなされる。元々中山主任弁護人との個人的関係があったことを強調し、「憲法学者ならではの協力をする」とした。弁護団報告の最後に、事務局長の中北龍太郎弁護士が登壇する。中北弁護士は、狭山集会に結集した弁護団を紹介した後、『3者協議』の現状を報告する。「185点の証拠開示を手がかりに、有罪確定判決を崩してきた。中でも取り調べテープは、重要な証拠である」とし、「取調べテープ」を基に、埼玉県警が石川氏にウソの「自白」を強制するプロセスを解明してきたことを、明らかにする。まず、埼玉県警が、石川氏に「自白」を誘導する際に、ひらがなの書き方を指導していたことを示し、当時の石川氏に脅迫状を書くことが不可能であることを明らかにした。そして、埼玉県警が、石川氏に対し、「筆跡鑑定は、間違いない。もう、否認しても決まっている」なる恫喝を連日の取り調べで繰り返していたこと、石川氏に「ウン」と言わせてウソの「自白」を誘導していたことを暴露した。こうして埼玉県警が、自分たちが作ったストーリーに沿って「自白調書」を捏造した上で、あたかも石川氏が「スラスラと自白していた」かのごとく言いなした悪辣な手口を暴露し、埼玉県警が「自白」を補強するために「秘密の暴露」を加えたことを示し、新証拠によってその「秘密の暴露」が次々に崩れている実態を明らかにする。中北氏は、最後に、「大きな展望を切り拓くことが必要」「石川氏の〝佳き日〟を作ろう!」と力強く締めくくった。
首都中枢をデモで席捲
部落解放同盟・片岡副委員長からの基調提起の後、足利事件の菅家利和氏、布川事件の桜井昌司氏、さらに袴田巌氏の姉の袴田秀子氏、「袴田氏を救援する清水・静岡市民の会」の山崎俊樹氏からの連帯アピールがなされる。「市民の会」からのアピールとして、噺家の古今亭菊千代氏、歌人の道浦母都子氏が発言に起った。その後、部落解放中央共闘事務局長の則松佳子氏からの「1日も早く石川さんの『見えない手錠』をはずすために、狭山事件の再審を実現しよう」とする集会アピールが読み上げられ、参加者全体の拍手で確認される。「市民の会」事務局長の鎌田慧氏の「まとめ」の後、4月14日、4月16日の熊本地震を受けた被災地・熊本からの報告として、部落解放同盟熊本県連からの発言がなされ、最後に、閉会あいさつと「団結ガンバロー」で、本集会が締めくくられた。
集会後、5・23闘争実行委員会の隊列は、会場からデモに起つ全国の部落青年・大衆に共に闘う決意を明らかにすべく、シュプレヒコールを行ない、アジテーションを開始する。「階級的共同闘争と大衆的実力闘争・武装闘争で闘うことが勝利をかちとる道だ」「第3次再審闘争に勝利しよう」「革命的部落解放運動の飛躍・前進を切り拓こう」「戦争遂行の安倍極右政府を打倒しよう」と訴える。そして、日比谷公園からデモへと撃って出る。霞門から出撃した青ヘルメットのデモ隊は、東京高裁にむけて怒りのシュプレヒコールを叩きつける。「東京高裁は、事実調べを行なえ」「第3次再審棄却を阻止するぞ」。その後、政府官庁の集中する霞ヶ関一帯を青ヘルメットのデモ隊列が席巻する。道行く人々の圧倒的な注目を集めながら最後まで戦闘的デモをうちぬいた。デモ隊が解散地点の芝公園に到着すると、全国学生部落解放研究会連合からの「今日の集会での石川氏の激を受け、狭山闘争の勝利にむけさらに進撃しよう」「『伊勢志摩サミット』を粉砕しよう」「6・12―6・15安保粉砕・政府打倒全国統一行動を闘おう」の集約提起とシュプレヒコールで、この日の闘いをしめくくった。
狭山中央闘争の翌日の5月25日午後4時から東京高裁で、第28回目の「3者協議」が開かれた。狭山弁護団が証拠開示を求めていた「万年筆」「財布」「手帳」について、東京高検は、「不見当、関連性、必要性がない」と開示を拒否した。このふざけきった態度を前にしても、東京高裁・植村は、「証拠物の保管と一覧表の作成などの取り扱い」について東京高検に具体的な説明を求めるのみであった。
今こそ、石川氏の怒りと無念さを共有し、再審棄却を許さない闘いを司法―国家権力に叩きつけていかなければならない。〈差別裁判糾弾、階級裁判粉砕、国家権力糾弾・打倒〉の闘いの基調を一歩も後退させてはならない。狭山闘争の幕引きを加速する部落解放同盟内社民・こえ派の制動を突破し、奮闘を続ける石川氏を激励し、第3次再審闘争勝利、狭山闘争の歴史的勝利へ断固として進撃しよう。差別主義・排外主義煽動を粉砕し、差別糾弾闘争を断固闘い、部落解放運動の革命的飛躍を切り拓こう。
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