福日労が、川内原発正門ゲートに決起
川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)に続き、2号機の再稼働が強行された。福岡・築港日雇労働組合(福日労)は、これを阻止すべく、再稼働当日である10月15日早朝より、川内原発正門ゲートに登場した。11日からハンストをしている地元住民や「久美崎テント村」の労働者・市民などが泊まり込み、夜を徹して座り込んでいる。ハンストをしている多くの人は、1号機の再稼働阻止の座り込みなどで、すでに顔なじみだ。青ヘルメットに竹竿のデモ隊を、大きな拍手をして迎え入れてくれた人々だ。「原発は人ば殺して金儲け」と書かれた真っ赤な看板が立てられている。その最先頭の位置に青ゼッケンをつけた福日労の部隊は、「再稼働阻止!」の横断幕を広げ赤旗をひるがえし、警察官とガードマンで固められている正門ゲートに向かって対峙した。
8時からの「川内原発2号機再稼働を許さない! 10・15ゲート前集会」に向けて徐々に労働者・市民が集まってくる。集会は、地元住民を中心として、現地での攻防にこだわっている者が中心となって担われている。地元の住民などの発言で、集会は、はじまった。2013年9月に関西電力・大飯原発3、4号機(福井県)の定期点検入り以来止まっていた全国原発の再稼働第1号である1号機に続き、またしても川内原発を稼働させることへの怒りが口々に発せられる。とりわけ再稼働直後の8月20日、1号機の復水器細管損傷による冷却用海水混入事故時に試運転を続けたこと、2号機の蒸気発生器の取り替えがなされていないことへの不安と怒りが、口々に訴えられた。「加圧水型原発のアキレス腱」とも言われている蒸気発生器に関しては、九州電力自身が危険性を認識しているが故に、2号機に関しては、「2014年夏に交換する」と言っていたものである。1号機においてもたびたび細管損傷事故が起こり、2008年の定期検査で3基の蒸気発生器すべてを交換している。親指ほどの太さの金属パイプである細管は、しばしばひび割れをするシロモノであり、このひび割れが大きくなりパイプが破断することで、原子炉の冷却水が漏れ、大事故につながるのである。1991年、美浜原発では20トン余りもの冷却水が漏れ、原子炉が空焚き状態になりかけ、もう少しでスリーマイル島の原発事故同様の事態を引き起こすところであった。「安全性より運転再開、安全性より企業収益」という九電の姿勢に怒りが叩きつけられた。再稼働を進める薩摩川内市長・岩切と市議会、鹿児島県知事・伊藤と県議会、何よりも原発再稼働に突き進む安倍政府への怒りが発せられた。
ハンスト者たちが次々に、「地元住民は再稼働に同意していない」「税金取って人殺し! 原発いらん! 廃炉たい!」等々訴え、続いて、福日労の仲間が指名され登壇し発言する。仲間は、「安保法制関連法」が成立し本格的戦争への突撃が煮詰まる中、安倍政府による核武装の問題としての原発と原爆の関係を訴えた上で、原発は、事故を起こさなくても労働者に被曝を強制して動いていることを訴えた。1号機の再稼働時の集会で発言した元原発労働者で原発労働裁判を闘っている梅田隆亮氏の闘いについても提起し、集会参加者と原発内で働いている労働者に原発の問題を訴え、集会参加者から大きな拍手を浴びた。司会の「こういう視点から原発を見ることも重要ですね」という集約で、再度の拍手が湧き起こった。
「九州電力は直ちに川内原発2号機再稼働を中止せよ! 廃炉にせよ!」「川内原発1号機の運転を即時停止せよ! 廃炉にせよ」という抗議文を九電側に手渡すべく突きつけるが、九電側は一切対応をせず、受け取りを拒否した。こうした九電の対応に怒りのシュプレヒコールが叩きつけられる。10時半、2号機の再稼働が告げられ、さらなる怒りのシュプレヒコールが叩きつけられる。午後1時、ハンスト解除が宣言され、ハンスト者たちが重湯を口にする。この日の集会は、夕方まで行なわれたが、午後の集会中に福日労は帰りの時間の都合を告げ、再度の発言を行なった。原発では定期点検に3000人の労働者が集まらなければ稼働できないこと、今、原発の危険性が多く知られるようになって、こうした労働者が集まらなくなってきていることを明らかにして、さらに原発労働に動員される構造を撃つべく、反失業の闘いを打ち抜くことを訴えた。福日労は、「一億総活躍」という「国家総動員」のかけ声の下に、「生活保護者やホームレスを原発で働かせろ」という攻撃を打ち砕き、原発労働者がストライキを打てば原発は止まることを訴え、そのような闘いのためにがんばることを発言して帰途に着いた。
全国原発の再稼働・新(増)設阻止へ
安倍政府は、この川内原発の再稼働を皮切りに、「ドミノ倒し」のような全国原発の再稼働と新・増設を狙っている。九州の地においては、同じく九電の玄海原発3、4号機の再稼働が目論まれている。3号機は、プルトニウムとウランの混合酸化物であるMOX燃料を使用するもので、その危険性は福島第1原発の比ではない。玄海原発における運転員の30パーセントが運転未経験者であるという。全国的に未経験者の割合が増える中で、20パーセントという全国平均からしても、信じられないような割合である。川内、玄海ともどもフィルター付きベントがない、「免震重要棟」がない等の危険極まりない状態での見切り発車が進められているのだ。しかも、九電は、大地震、火山噴火、火災、運転ミスなどで、配管等の損傷、送電停止等による過酷事故によりメルトダウンした溶融核燃料を格納容器にためた大量の水に落とし込む方法を採るとしている。高価な「コアキャッチャー」の代用のつもりであろうが、このようなことをすれば、水蒸気爆発で格納容器と原子炉建屋が吹き飛ぶ可能性がかなりの高い確率であることが、科学的に専門家から指摘されている。
10月26日、愛媛県知事・中村により、四国電力・伊方原発再稼働への同意がなされた。伊方原発もまたMOX燃料使用原発である。伊方原発の下には、日本最大級の断層帯である中央構造線がある。今世紀半ばまでに、非常に高い確率で南海トラフ大地震が起きる可能性が専門家から指摘されている。伊方原発は、南海トラフ巨大地震の震源域の北西端の真上にある。長時間の揺れでプラント機能が保てなくなる恐れがあることが指摘されている。また、敷地の一部は、斜面を削って作られており、斜面崩落、液状化、地盤沈下等で、非常用電源に問題が生じ外部電源を喪失するだけで、一挙に破滅的な状況に陥るのである。このような場所に建つ伊方原発の「基準地震動」の設定は「最大650ガル」として、「原子力規制委員会」が承認している。あまりにもデタラメな「出来レース」の上で、原発の再稼働が急ピッチで進められているのだ。
こうしたなか、10月20日、東京電力・福島第一原発の「事故処理作業」で働いていた労働者の被曝による白血病発症の労災認定がなされた。これまで100万人もの労働者が被曝労働を行ない、労災に認定されたのが今回で14人目である。来年1月8日に結審を迎える元原発労働者・梅田氏の訴えにあるように、国は、「原発は安全」という神話を保ちたいがために、これまでも被曝労災認定をはねつけ続けてきているのである。「どこで野垂れ死のうと、被曝が原因かどうかは分からないから」「子どもを作るあてがないから」と、山谷・釜ヶ崎をはじめとした不安定雇用の労働者がかき集められ、被曝労働を強制されているのが原発労働の実態だ。新聞発表されている数字だけでも、「福島原発事故」から今年の8月末まで働いた約4万5000人のうち、累積被曝量が5ミリを超える労働者は約2万1000人いるという。こうした被曝を強制される労働者がいなければ、原発は、1日たりとも動かないのである。「労働者派遣法」改悪等により、低賃金で使い捨ての「非正規雇用」労働者の増加に拍車がかけられ、野宿を強いられる労働者や生活保護に頼らざるをえない労働者が急激に増えている。野宿を強いられる新たな労働者のなかでは、とりわけ若い労働者の存在が目立つようになっている。こうした労働者の原発労働への動員を許してはならない。「仕事よこせ」の闘いの前進が求められている。福日労は、11月4日に、政府―厚生労働省の出先機関である福岡労働局との交渉を予定している。政府の役人共に「公的就労対策事業」で日雇い・野宿の労働者が「自分で働いて生活する」ことができるよう要求し、仕事をかちとる闘いの決意に燃えている。日帝・安倍政府の原子力政策―核武装を許さない革命的反戦闘争の前進が求められている。原発労働者が、劣悪な労働現場の実態と労働条件を問題にし、労働者階級の運命を問題にする中から、原発をぶっ止めるストライキに起ち上がるような闘いを組織していかなければならない。原発労働者のストライキに呼応し、原発施設に殺到し、実力・武装の闘いで、その機能を停止に追い込むような闘いに起ち上がっていかなければならない。福日労は、こうした闘いの前進のために闘いぬく決意を打ち固めている。
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