9月19日、参院本会議で「安保法制関連法」が可決―成立した。安倍極右政府は、この「安保法制関連法」を振りかざし、矢継ぎ早に戦争政策をうちだしている。中東反革命戦争への本格参戦、朝鮮反革命戦争への突入を日帝軍=自衛隊の実戦軍化によって加速させている。そもそも安倍政府は以前より、米帝との連携を強化しながら、「安保法制関連法」成立を前提として戦争政策を練り上げていたのである。
安倍政府の繰り出す数々の戦争政策、すなわち在沖―在日米軍と自衛隊再編を粉砕する、実力・武装の闘いを、今こそうちぬかなければならない。沖縄・名護新基地建設阻止の闘いをはじめとする、全国の反軍反基地闘争の先頭に起ち、米軍・自衛隊強化を粉砕する実力・武装の闘いに決起しよう。
国連総会を舞台とした帝国主義の反革命戦争加速の動き
9月15日から米・ニューヨークで第70回国連総会が開幕し、半月以上にわたって様々な会合が行なわれた。9月28日には、世界160ヵ国以上の頭目どもが集まり、一般討論演説が始まっている。米大統領・オバマやロシア大統領・プーチン、中国国家主席・習近平、韓国大統領・朴槿恵らが、中東反革命戦争や朝鮮反革命戦争などをめぐる丁々発止の駆け引きを行なう場となった。
そこへ、日帝首相・安倍が、9月19日成立の「安保法制関連法」を引っさげてドカドカと乗り込んだのだ。安倍は、国際反革命戦争の尖兵たらんと世界中に売り込んでみせた。安倍は、9月29日に一般討論演説を行ない、まずは国連総会の主要議題である、「シリアとイラクの難民・国内避難民に向けた支援」への「協力」を型通りに表明し、その上で中東―アラブ諸国への「7億5000万ドルの支援」を掲げての介入強化をうちだした。安倍は、介入強化の具体例としてヌケヌケと「アフガニスタン等での警察官の養成」をあげてみせた。次に、安倍は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対し「拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決のため」に「関係国と協調」と言いなし、対北朝鮮包囲網を強化する姿勢をあけすけにした。さらに、「安保理改革を実現し、日本が安保理常任理事国となり、ふさわしい貢献をする道を追い求める」ために、現在南スーダンで展開する「国連平和維持活動」(PKO)について「幅広く貢献することができるよう、最近、法制度を整えました」と、「安保法制関連法」成立を全世界の頭目どもに報告した。最後に、安倍は、「『国際協調主義にもとづく積極的平和主義』を高く掲げ…安保理常任理事国として、世界の平和と繁栄に一層の貢献をする責任を果たしていく覚悟」を表明し、日帝としてより積極的に国際反革命戦争にうってでる姿勢を鮮明にするとともに、国連安保理常任理事国に成り上がって「一流の帝国主義」に名乗りをあげるための売りこみを行なったのである。日帝の南スーダンPKO派兵を阻止しなければならない。
中東をめぐっては、国連総会の課題として、「イスラム国」対策やシリア内戦激化によるヨーロッパ諸国への数万人規模の「難民」流出などを論議しているが、これらの論議は、最初から米帝―帝国主義の新たな中東反革命戦争の激化を前提とする代物でしかなかったが、シリア内戦介入をめぐる米帝・オバマとロシア・プーチンとの対立が鮮明となった。「自由シリア軍」を支援してアサド政権「退陣」を目指すオバマに対抗し、シリアでの「権益」確保を狙うプーチンは、アサド政権擁護の立場からの軍事介入に突き進んでいる。9月28日、プーチンは、国連総会での演説で「国際法に基づいた、本物の幅広い反テロ連合を形成する必要がある」と、ロシアのシリアへの介入強化を正当化している。また、「シリア難民流入問題」に悩む独帝などは、アサド政権への「柔軟な対応」を主張しはじめている。こうした国連総会でのドタバタ劇の陰で、当の「イスラム国」は、シリアやイラクでのうのうと勢力を拡大しているのである。少なくとも米帝―帝国主義に、「イスラム国」台頭を招き、「大量難民」を生み出した根源であるシリア内戦をまともに解決する意志も能力もないことは明白である。そんな米帝―帝国主義が、かりそめの「対イラン協調」をうちだして中東支配危機の回避を図ろうとすることに対し、苛立ちをあらわにしたのが、イスラエル首相・ネタニヤフである。ネタニヤフは、10月1日の国連総会の演説で「ここでどのような決議が採択されようが、イスラエルは自衛のために必要な行動をとる」なぞと対イラン反革命戦争突撃とパレスチナ解放闘争圧殺を絶叫するパフォーマンスを演じている。米帝―帝国主義は、そんなイスラエルを戦争遂行の尖兵として手なずけ、中東―アラブ諸国労働者人民に多大な犠牲を強制しながら、帝国主義の中東支配強化に突き進もうというのだ。米帝―帝国主義による中東反革命戦争の拡大・激化、特に日帝の参戦拡大を、断じて許してはならない。
朝鮮半島情勢をめぐっては、日・米・韓による北朝鮮包囲網強化を確認している。9月29日、日帝外相・岸田と米国務長官・ケリー、韓国外相・尹炳世による3ヵ国会談が開かれた。北朝鮮・金正恩による「長距離弾道ミサイル発射」の動きについて「明白な安保理決議違反であり、国際社会の断固たる対応を招く」との認識で意思一致している。さらに、「南シナ海(ママ)情勢」「東シナ海(ママ)情勢」などについても意見交換し、岸田は、北朝鮮による「日本人拉致被害者の再調査」に関し、結果報告が遅れている現状を説明し、「拉致問題」をネタとする圧力強化を宣言している。岸田は、「今月成立した安保法制関連法の意義は大きい」とし、日帝が対北朝鮮攻撃の尖兵になることを売り込んだのである。これに対し北朝鮮は、帝国主義の包囲網強化に対抗する意図を盛んにアピールした。北朝鮮外相・李洙墉は、10月1日の国連総会の演説において、「長距離弾道ミサイル発射」について「人工衛星打ち上げ」と主張した上で、「平和目的の宇宙開発は主権国家の正当な権利だ」「平和的な衛星打ち上げを問題視するという不公平な行動に対し、可能な自己防衛的措置で強く応じ、尊厳を守るというのがわが国の立場だ」と強調した。さらに、米帝に対し、「国連を独占的に支配している」「米韓合同軍事演習を通じて北朝鮮に脅威を与えている」と非難し、米帝による「人権問題」追及への怒りを露にした。その上で、米帝が「北朝鮮への敵視政策をやめるなら、大きな変化が生まれ、米国の安全保障上の懸念も解消される」と、「平和条約締結」をみすえた対米交渉開始への〝売り込み〟も行なってみせた。日・米・韓による朝鮮反革命戦争突撃を粉砕しなければならない。
進行する戦時体制形成の動き(中見出し)
安倍政府は、2013年11月に「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」を制定し、そして同年12月に「特定秘密保護法」を強行成立させた。今年9月19日に強行成立した「安保法制関連法」は、「日本版NSC」と「特定秘密保護法」の存在があって初めて機能する「戦争法」である。その「日本版NSC」と「特定秘密保護法」の強化が進行している。
通常国会での審議の過程で、安倍政府は、実際の「安保法制関連法」の運用、すなわち「集団的自衛権行使」について、「日本版NSCで審議する」と説明している。また、防衛相・中谷は、「集団的自衛権行使が必要と判断した情報に特定秘密が含まれる場合がある」と答弁している。
実際の「日本版NSC」の運用を見ると、2013年以降に開かれた「日本版NSC」の「4大臣会合」の「結論」は、「原則すべて特定秘密を含んでいる」として非公開扱いされている。ましてや、「集団的自衛権行使」に関する情報は、さらに「機密性」が高まるのは必至であり、「結論」が公開される可能性はまずないであろう。「安保法制関連法」の審議の過程で、安倍政府は、「武力行使の新三要件」を掲げ、自衛隊の海外での武力行使の「判断基準」とした。その「判断基準」とは、「1、密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある(存立危機事態)」「2、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない」「3、必要最小限度の実力行使にとどまる」の3点からなる。しかし、どんな状況なら「新三要件」を満たすのかについて、国会で何度も追及されたが、安倍らは、「政府の総合判断」との答弁を重ね、結局あいまいなままにした。海外での武力行使をどうするかについて、時の権力者に「白紙委任」する法律になっているのだ。その決定機関こそが「日本版NSC」なのである。そもそも、「日本版NSC」なる組織自身、現行憲法にはない「国家緊急権(緊急事態条項)」を前提にした組織であり、元々、自民党の憲法草案に、改憲によって制定する組織として明記されていたものである。現憲法66条は、「内閣の連帯責任」を定めているのだが、「4大臣会議」を軸とする「日本版NSC」は「例外」扱いとされた。「日本版NSC」は、非常時に憲法を一部停止し、首相に権限を集中させる「国家緊急権」の導入を見越している組織なのだ。安倍政府は、戦時体制形成の総仕上げとして、いよいよ改憲に踏み込もうとしているのだが、まず安倍政府が着手しようとするのが、「国家緊急権(緊急事態条項)」導入である。安倍政府は、戦争遂行に向けて、強大な権限を政府に集中させようとしているのだ。
安倍政府は、10月7日の「内閣改造」において、「特定秘密保護法」に基づく「特定秘密の適正な運用確保」を理由として内閣官房に設置した「内閣保全監視委員会」の委員長に法相・岩城を充てる人事を発表した。また、「秘密指定の運用などを監視する」とする内閣府の「独立公文書管理監」の事務は、行政改革担当相・河野が担うことになった。「特定秘密保護法」が2014年12月に施行された後、政府内には2つの監視機関が設けられた。まず、「内閣保全監視委員会」は、各府省の次官級で構成し、「特定秘密」の指定・解除を指揮監督する首相を補佐する。「独立公文書管理監」は、閣僚による「特定秘密」の指定や更新が適正かどうかを検証・監察する。管理監は、検察官出身者が務め、事務を閣僚が担当することになっている。管理監は、各行政機関に資料提供などを要請し、是正を求めることができるとされるが、「特定秘密」を強制的に提出させる権限はない。加えて、政府内での身内の検証・観察であり、実効性はないに等しい。10月9日、法相・岩城は、今年12月1日の「特定秘密保護法」の「完全施行」を閣議決定したことを発表した。「完全施行」後は、「機密を扱える人物かどうかを調べる『適性評価』を受け、問題ないとされた職員」だけが指定できるようになる、とされた。こうして、安倍政府は、「特定秘密」についての労働者人民の検証の余地すら残さない傲慢な姿勢をうちだしながら、「特定秘密保護法」の運用をさらに強化しようとしているのである。
安倍政府の戦時体制形成を粉砕せよ
在沖―在日米軍と自衛隊の強化
安倍政府は、「安保法制関連法」成立以前から、在沖―在日米軍・自衛隊の強化に動いてきた。そんな安倍政府の姿勢は、国会での「安保法制関連法」の審議の過程で暴露された自衛隊「内部文書」に現れている。統合幕僚監部は、8月の段階で、8月までの「安保法制関連法」成立を前提として、新「ガイドライン」の内容に沿った自衛隊の実戦軍化にむけた「内部文書」を作成していたのだ。そこでは、「日米共同統合指揮所演習(キーンエッジ16)」の実施なども盛り込んだ、具体的な日程も書かれている。安倍政府は、自衛隊の実戦軍化を矢継ぎ早に強行しようとしているのである。
安倍政府は、「安保法制関連法」成立をうけた自衛隊強化の手始めとして、まず南スーダンPKO派兵を強化しようとしている。安倍は、「安保法制関連法」成立の翌日には、南スーダンに派兵する陸自部隊の任務に、新たに他国部隊の戦闘に援軍として駆け付ける「駆け付け警護」を加える検討に入った。9月28日、防衛相・中谷は、「安全保障法制整備検討委員会」を招集し、南スーダンでの「駆け付け警護」や「集団的自衛権行使」「後方支援」「武器等防護」などの自衛隊の新たな任務に関する「部隊行動基準」(ROE)の見直し作業を開始するよう指示した。「安保法制関連法」を来年3月に施行し、5月に北海道・真駒内の陸自北部方面隊から南スーダンに出兵する施設部隊に対して「駆け付け警護」を初適用することを狙っている。「安保法制関連法」では、PKOの任務として、地域の治安維持のための監視や巡回、検問などを行なう「治安維持活動」も加えている。さらに「武器使用目的」も、従来からある「防衛」のための「自己保存型」に加え、「任務を妨げる武装集団を排除する」ための「任務遂行型」を解禁している。現在のPKOも自衛隊は武器を携行しているが、主に施設部隊と輸送部隊を派遣し、武器使用の確率が高い活動をしてこなかった。そうしたPKO派兵を根底的に転換し、労働者人民虐殺に踏み込もうとしているのだ。現在自衛隊が展開するもう一つの海外派兵が、「海賊対処」を口実とするソマリア沖派兵である。自衛隊はソマリアの隣国・ジブチに基地を作り、海自護衛艦2隻とP―3C哨戒機2機を使って、アデン湾での部隊展開を行なっている。安倍政府はかねてから、この海外拠点の強化を打ち出していた。ジブチの自衛隊基地を、より本格的な中東反革命戦争の出撃拠点としてうち固めようとしている。国会で暴露された防衛省の「部内資料」でも、昨年12月に訪米した統幕長・河野が、統合参謀本部議長・デンプシーとの会談で、ジブチの自衛隊基地について「今後の幅広い活動のためジブチの利用を拡大させたい」と表明していたことが明らかにされている。そして、安倍政府は、10月初旬の段階で、「ジブチ軍の災害時の対処能力の向上を支援するため」と称して、2016年度からジブチ現地に陸自の新たな部隊を派遣する方針を示している。安倍政府は、ジブチ政府の取り込みを進めながら、あらゆる口実を使って自衛隊海外派兵を強化しようとしているのだ。
在沖―在日米軍の再編・強化も進行している。10月1日、米海軍横須賀基地に原子力空母・「ロナルド・レーガン」が入港した。当初予定されていた10月2日を、1日前倒ししての入港である。「ロナルド・レーガン」は、全長333メートル、幅約77メートル、排水量は約9万7000トンで、軍艦としては世界最大級の大きさである。約5700人が乗り組み、艦載機は最大90機まで搭載できる。これまで横須賀基地には原子力空母・「ジョージ・ワシントン」が配備されていたが、2014年1月から、定期点検と原子力燃料棒の交換のために米本国に帰還していた。その交代として横須賀に送りこまれたものである。今後、「ロナルド・レーガン」が横須賀基地を母港化し、アジア太平洋地域ににらみをきかせようというのだ。米軍が在沖米軍基地に配備しているオスプレイの運用が進んでいる。10月初旬に沖縄防衛局が公表した新型輸送機・MV22オスプレイの2014年度の飛行調査結果を見ても、午後10時以降の深夜から未明の時間帯での離着陸が計137回に上り、2013年度の計60回と比較して約2・3倍になった。総離着陸数も1663回から2735回へ大幅に増えた。飛行ルートについても、日・米帝での取り決めからも外れるケースが確認されている。さらに、オスプレイのデモ飛行も行なわれている。8月の東富士演習場での「富士総合火力演習」終了直後、オスプレイが会場上空をデモ飛行したのに加え、神奈川県沖の相模湾で10月18日に行なわれた自衛隊観艦式でも、オスプレイが上空を飛行した。自衛隊もオスプレイ導入を進めており、2015年度までにオスプレイを購入し、佐賀基地への配備を進めようとしている。
自衛隊の強化が進行している。自衛隊は、2000人~3000人の規模からなる「水陸機動団」の編成を進めている。「水陸機動団」は、離島防衛の専門部隊・「西部方面普通科連隊」を置く長崎・佐世保などに配置されようとしている。「水陸機動団」の海兵隊的機能の中核をなす水陸両用車について、2014年度までに6両を「試験車両」として配備し、運用試験を行なった上で、2018年度までに52両を配備するとされる。陸自は、「水陸両用車」や、オスプレイをも導入しての「離島奪還」の作戦構想を策定しようとしている。南西諸島への自衛隊配備がさらに加速している。自衛隊は、既に「沿岸監視部隊」の基地建設が進められる与那国島に加え、石垣島、宮古島への「警備部隊」配備を進めようとしている。このうち宮古島には800人規模の部隊を、2ヵ所の基地に置こうとしており、地元市長を推進派に取り込んでの配備計画を進行させているが、この動きに対する地域住民の反対運動も開始されている。
激化する軍事演習
自衛隊と米軍による軍事演習がさらに強化されようとしている。既に在沖米海兵隊の実弾砲撃―「本土」移転演習が18年にわたり行なわれ、演習の内容も、実戦を想定し、激化の一途をたどっている。加えて、日米合同演習の規模も拡大し、海外での演習への自衛隊参加も進行している。
10月6日、日・米帝による「日米合同委員会」で、米軍が射爆撃場として使用している北大東村の沖大東島と周辺水域・空域を自衛隊が恒常的に共同使用することに合意した。自衛隊は、護衛艦による「対地艦砲射撃」や「着上陸訓練」などを実施しようとしているのだ。
自衛隊の海外訓練への参加については、10月の動きだけを見ても、10月1日~9日にフィリピン沖で行なわれた米軍とフィリピン軍との合同演習に、自衛隊が視察に出向いている。この合同演習では、「南シナ海(ママ)での離島奪還」を想定した演習が行なわれており、安倍政府の「南シナ海(ママ)問題」への介入の意思をあけすけにするものである。また、10月中旬にインド洋東方海域で行なわれた米軍とインド軍との合同演習「マラバール2015」に、海自護衛艦・「ふゆづき」が参加のために出港した。「海自の戦術技量の向上と、参加各国海軍との連携強化が目的」としており、各種の戦術訓練や射撃訓練、捜索・救難訓練を実施するとしている。自衛隊は、海外での訓練に積極的に参加することで、海外派兵を強化し、朝鮮反革命戦争や中東反革命戦争に備えようとしているのだ。
策動される武器輸出拡大
「防衛省設置法」改悪が強行されている。安倍政府は、9月15日の閣議で、「防衛省設置法」改悪の施行日を10月1日とする政令を定めた。この閣議決定に基づき、防衛省の外局として「防衛装備庁」が10月1日に発足した。
そもそも、今回の「防衛省設置法」改悪により、従来、自衛官の「制服組」=自衛官と内局の「背広組」=官僚で分担してきた部隊運用を、統合幕僚監部で一元的に担うなどの組織改編を実施することになった。これまでの建前として掲げられていた「文民統制」を廃止したのだ。これにより、自衛官が官僚の介在なしに防衛相と直接、情報をやりとりしたり、作戦計画を担ったりすることになる。こうして自衛官の突出が一挙に加速しようとしているのだ。
そして、「防衛装備庁」設置により、日帝の武器輸出が一挙に加速しようとしている。「防衛装備品の効率的調達」を掲げて設置された「防衛装備庁」は、自衛隊の軍備増強を一体的に進めるための組織である。従来、研究開発は技術研究本部、調達は内部部局や陸・海・空三自衛隊と別々に行なっていたものを、一元的に担う組織として起ち上げたのだ。予算規模は、実に2兆円に上る。
昨年4月に閣議決定された「防衛装備移転三原則」によって輸出制限が大幅に緩和され、武器輸出に道が拓かれた。その上で、自衛隊は、帝国主義諸国らとの共同研究を加速させている。実際、既に英帝とはミサイル技術の共同研究に着手し、オーストラリアとの潜水艦の共同開発や、インドへの救難飛行艇輸出も検討している。武器輸出などの施策を認めるか否かを直接審査するのは、「日本版NSC」である。だが、「防衛装備移転三原則」では、武器輸出を認める場合の「基準」が「平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合」や「我が国の安全保障に資する場合」とあいまいに決められているだけであり、いくらでも拡大解釈が可能だ。政府は、審査の過程について「情報公開を図る」とするが、ただの口約束にすぎない。都合が悪くなれば「特定秘密保護法」を盾に非公開扱いするようになるのは目に見えている。こうして、政府の判断一つで、誰からの検証も受けることもなく、好き勝手に武器輸出が強行されようとしているのだ。自衛隊の軍備増強についても、陸・海・空三自衛隊の連携が強化され、一体化が進行しようとしている中、日帝は、軍事産業の育成を強化して、戦時体制の一翼として組み込もうとしているのだ。日帝は、武器輸出によって「産業報国会」型労働運動の一挙的拡大も目論んでいる。
一挙に進行する安倍政府の自衛隊強化を、実力・武装の闘いで粉砕しなければならない。在沖―在日米軍強化のための最大の攻撃である沖縄・名護新基地建設に対して、闘う沖縄労働者人民の闘いが爆発している。実力・武装の反戦決起を全国で巻き起こしていかなければならない。
労働者人民の戦争動員を許すな
安倍政府による一連の自衛隊強化のただ中で、労働者人民の戦争動員が一挙に加速されようとしている。自衛隊は、人員確保のための方策を進め、種々の「補助金」の拡充を進めている。自衛隊の教育現場への介入強化をもテコにしながら、貧困層をもターゲットにした、新たな形での「経済的徴兵制」導入を狙っているのだ。安倍は、徴兵制導入について「不安をあおるデマ」と言いなしている。しかし、「安保法制関連法」成立を前後して、自衛隊員の動揺が広がっている。退職者が続出し、人員不足になることが想定できる。「経済格差」を最大限利用しながら、自衛隊員をかき集めようと策動しているのだ。実際の国会審議では、2年前、「無職の若者への就職対策」を唱える経済団体幹部に対し、防衛省が任期付きの実習生制度導入の「イメージ」を伝えていたことも明らかにされた。防衛省には現在、自衛隊入隊を条件に、大学生らに学資金を貸し出す制度がある。実際、米帝足下において、米軍は兵士募集の際に、大学入学の「援助」をエサに貧困層をかきあつめている実態がある。これこそが「経済的徴兵制」である。
教育現場でも、安倍政府の自衛隊募集強化に呼応する動きが出ている。高知市の私立高知中央高が2017年度以降、「自衛官にふさわしい人材の育成」を目標とした「自衛隊コース」を普通科に新設することを明らかにした。1週間のうち6時間分の授業を「銃剣道と自衛隊に特化した『座学』に充てる」としている。「座学」では現役の自衛官やOBを講師として招く予定で、3年次には自衛官の採用試験対策も実施する。高知中央高の理事長・近森は自衛隊コース新設の理由を「高知県では年間約100人が自衛隊に就職したり防衛大に進学したりしており、需要があると判断した」「心身ともに鍛えられ、忠誠心をもって日本の国防に当たれる人材を育成したい」と言いなしている。「若者の就職難」が続くなかで、「教え子を戦場に送る」ための教育改変が進行しようとしているのだ。学園の「兵営化」が進行しようとしているのだ。こんな労働者人民の戦争動員を、断じて許すことはできない。
安倍政府の戦時体制形成の加速に対し、社共ら既成勢力を尻押しする「落選運動」への集約なぞ、労働者人民の反戦の機運を体制内へと流し込むだけの代物である。ましてや「ヘルメットも、ゲバ棒もいらない」「〝専守防衛〟の自衛隊、民主警察を守れ」なるスローガンを掲げる、カンパニアとしての「定期的な国会前行動」への集約なぞ、踏みしだいていかなければならない。
実力・武装の革命的反戦闘争の爆発をかちとり、戦時体制形成を粉砕し、朝鮮反革命戦争突撃を阻止し、中東反革命戦争の拡大・激化を粉砕しよう。戦争遂行の安倍極右政府を打倒しよう。
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