全国「障害者」解放運動共闘会議
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全国「障害者」解放運動共闘会議(全「障」共)は7月19日、「報徳会宇都宮病院入院患者差別・虐殺31ヵ年糾弾! 現地集会」と「報徳会宇都宮病院(宇都宮病院)への糾弾デモ」を闘います。全国の「精神病者」「障害者」、共に闘う労働者人民・学生に、この闘いへの結集を呼びかけます。
宇都宮病院に隔離・収容されていた安井健彦さんは1984年3月、看護人らの暴行で2人の入院患者が虐殺された事実を暴露しました。1人の仲間は「飯がまずい」と言っただけで、もう1人の仲間は面会に来た家族に「ひどい病院だから早く退院させてくれ」と訴えただけで、鉄パイプや木刀で暴行され、虐殺されたのです。
宇都宮病院は、差別者・石川文之進が「精神病者」差別法=「精神衛生法」(当時)を利用し、「精神病者」隔離・拘禁・虐殺の収容所として設立・運営してきました。警察や福祉行政と結びつき、各地の病院に「手に負えない患者を引き受けます」とビラを配り、山谷労働者を刈り込んで勝手に「精神病」と診断するなどの強引な手法で患者集めを行ない、入院患者約1000人の大病院に膨れ上がりました。文之進は、いつも「十手」と呼ばれる鉄製ゴルフクラブを持ち歩き、「ここは北関東医療刑務所だ」と豪語し、患者たちを入院の度ごとに「ヤキ入れ」と称して保護室に幽閉し、暴行を加えました。また、「作業療法」と称して、報徳冷凍庫など関連会社で、わずかばかりのタバコやラーメンと引き換えに奴隷労働を強制し、病棟の増・改築、文之進宅の造園、文之進が興じたゴルフの玉拾いにも患者を使役しました。果ては、患者にレントゲンや脳波をとらせ、投薬はもとより注射や点滴を打たせるといった医療行為までさせたのです。宇都宮病院では、医療の実態は皆無に等しく、約1000人の患者に医師は文之進1人、看護人も規定の半分もいない状況でした。にもかかわらず、病院の宣伝も含めて東大医学部脳研究施設と癒着し、入院患者を研究材料として食い尽くし、「東大で脳が欲しいと言われると入院患者が死ぬ」と言われたほどでした。このような宇都宮病院を拒否すれば、入院患者は暴行・虐殺を強いられたのです。
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宇都宮病院では、告発までの3年間だけでも222人もの入院患者が暴行・虐殺され、「不審死」と片付けられました。私たちは、この事実を胸に刻み、仲間たちの怒り、無念を晴らしていかなければなりません。
安井さんによる宇都宮病院告発は、日本はもとより世界的にも問題にされ、「精神衛生法」は、「精神保健福祉法」に変えられました。しかし、「精神障害者」差別法としての根本は変わっていません。だからこそ、宇都宮病院は今なお存続しているのです。
3人の元入院患者たちが石川文之進を「傷害」で告訴しましたが、検察はこの告訴を無視して「傷害罪」での起訴をしませんでした。そのため、裁判は行政法違反のみに終始し、医師法違反すら無視するという文之進を守るための裁判として行なわれていきました。文之進は、「2人の虐殺と、222人の『不審死』が起こった病院の管理責任」「3人に対する傷害」の責任を一切問われぬまま、わずか1年の実刑となりました。その結果、文之進は、1984年5月に精神衛生鑑定医の資格を取り消され、1987年4月には保険医の登録を取り消されたにもかかわらず、旧厚生省や栃木県行政が文之進の医師免許を剥奪しないという「不作為」の暴挙が成立したのです。石川文之進は、自らのホームページで「虚言症の患者の作話をそのまま報道した大新聞を始め、多数のマスコミにより、誤り、歪められた当院の姿が何度も報道されました」なぞと患者虐殺を居直った上で、「当院は真摯に反省し」なぞと言い放っています。石川文之進は、安井さんの告発後も、東大医学部との結託関係を維持し、入院患者のデータを利用した約200もの研究論文を発表したことを自慢するなど、到底「反省」なぞしておらず、エラそうに振舞いながらのうのうと生き延びています。そして、宇都宮病院自体も、私たちに対する面会破壊の攻撃をエスカレートさせており、宇都宮病院の一旦隠された毒牙が再びむき出しになってきています。断じて許してはなりません。
そんななか、2013年11月23日に安井さんが、東京都目黒区内の自宅で逝去されました。安井さんは、2013年の集会で「宇都宮病院が何で今も続いているのか。その理由は3つある。1つは社会がいまだに容認していること!
2つにカネの力! 最後に警察だ! このようなことを許している限り、宇都宮病院はいつまでも続く。こんなことが通用するかってんだ! みんな頑張ってくれ。1人でも頑張ってくれ」と参加者に檄をとばしていました。さらに、死の直前まで「石川文之進だけは絶対に許さない」と語っておられました。安井さんは、2013年12月22日に結成された全「障」共に加盟する意思を明らかにしていました。われわれは、そんな安井さんの遺志を引き継ぎ、その怒りと闘いに応え、あくまで闘いぬく決意です。宇都宮病院糾弾闘争の飛躍・前進を切り拓いて、宇都宮病院の解体まで闘いぬいていこうではありませんか。
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安井さんが宇都宮病院を告発し糾弾した闘いを力に、私たちは宇都宮病院での患者虐殺を生み出した当時の日本の精神医療を糾弾し続けてきました。しかし、「精神衛生法」が「精神保健福祉法」に変わった今日においても「措置入院」や「医療保護入院」は存続し、一方では「心神喪失者等医療観察法」による保安処分が強制され、「精神障害者」は隔離・抹殺政策のもとに置かれています。
2013年4月に閣議決定された「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案」(改悪「精神保健福祉法」)は、2014年4月1日から施行されています。「医療保護入院」の要件について「指定医一名による診察・判定」を維持し、「保護者」の同意に代えて「家族等(本法案では、配偶者、親権者、扶養義務者及び後見人又は保佐人をいう)のうちいずれかの者」の同意があれば足りるとし、患者の権利擁護制度である代弁者制度を法律上定めることも見送られています。精神病院の集まりである「日本精神科病院協会」は、「市町村長同意による医療保護入院者数は施行前の半数に減った」「家族等や市町村長同意に関して、支障を来した多数の事例」なぞと悲鳴をあげ、今年4月に「改正精神保健福祉法施行に関する業務のためのガイドライン」を作成しています。すなわち、宇都宮病院などの日本の精神病院は、「『精神保健福祉法』をうまく使いこなして、『医療保護入院』を何としても増やせ」という態度で臨んでいるのです。改悪「精神保健福祉法」を許さず、何より宇都宮病院などの精神病院糾弾の闘いをなしきらねばなりません。
厚労省の2011年の調査では、日本の「精神障害者」の数は約320万人とされていますが、30万人が入院し、うち一年以上の長期入院者は20万人を超えており、国際的にも問題視されています。人口100万人当たりの「精神障害者」の非任意入院者数(年間の新規入院)は日本が約2000人であるのに対して、欧州では十数人から百数十人程度です。政府の政策が「精神障害者」隔離・抹殺に重点を置いていることは明らかです。私たちは、宇都宮病院を糾弾し解体する闘いを頑強に続けることで、宇都宮病院による患者への差別・虐待を阻止し、「精神障害者」隔離・抹殺政策と対決していきます。
今こそ、差別糾弾闘争の飛躍をかちとり、全国の闘う「精神病者」「障害者」、そして医療労働者、福祉労働者をはじめとする労働者人民の闘いを発展させ、宇都宮病院を解体していきましょう。7・19報徳会宇都宮病院入院患者差別・虐殺31ヵ年糾弾!
現地闘争に結集しよう!
〈編集部責任転載〉
7・19報徳会宇都宮病院入院患者差別・虐殺31ヵ年糾弾! 現地闘争
▶日時 7月19日(日) 午後1時
▶場所 宇都宮市陽南第二公園
▶主催 全国「障害者」解放運動共闘会議
*集会後、報徳会宇都宮病院への糾弾デモを闘います。
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