南原 悠
「核カード」を手に米・韓と対峙する北朝鮮
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、「核カード」を手に、スターリニスト国家と金正恩体制の存続をかけた「瀬戸際政策」を展開している。北朝鮮は、「瀬戸際政策」の目的は、米帝を交渉の場に引きずり出し、朝鮮戦争の「休戦協定」を「平和条約」に変えさせることにあるとしており、「瀬戸際政策」の目的は結局のところ、スターリニスト国家と金正恩体制の存続を認めさせる程度のものであり、願望にすぎないものであろう。
北朝鮮は、2月24日から韓国と朝鮮半島周辺の空・海域で開始された米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」と野外機動訓練「フォール・イーグル」に対しては、2月21日から断続的にミサイル、ロケット砲を黄海、「日本海」へ向けて発射している。一連の動向を列挙すると、
2月21日:300ミリの新型ロケット砲4発発射、
2月27日:スカッド系列と推定される短距離弾道ミサイル4発発射、
3月3日:「スカッドB」あるいは「スカッドER」と推定される弾道ミサイル2発発射、
3月4日:300ミリ新型ロケット砲とみられる短距離発射体4発、240ミリロケット砲と推定される短距離発射体3発発射、
3月16日:地対地ロケット「フロッグ」と推定される発射体25発発射、
3月22日:「フロッグ」と推定される発射体30発発射、
3月23日:「フロッグ」と推定される発射体16発発射、
3月26日:「ノドン」とみられる中距離弾道ミサイル2発発射、
3月31日:北朝鮮の海上砲撃訓練中に砲弾の一部が海上の南北軍事境界線と位置付けられる北方限界線(NLL)を越えて韓国側の黄海海域に落下、韓国軍が応射。
国連安全保障理事会は3月27日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難する報道陣向け声明を発表し、ミサイル発射は安保理決議違反とし、今後の北朝鮮の出方などを見極め、適切な対応を講じるとした。これは、北朝鮮が2月27日と3月3日、射程距離200キロ〜500キロの弾道ミサイルを発射したことを受け、韓国と米帝が国連決議違反との意見書を国連安保理に提出したことを受けたものだ。
3月30日、北朝鮮外務省は、国連安保理の報道陣向け声明に対して、「米国の核戦争演習に対する自衛的ロケット発射訓練を非難することは容認できない、正当に防衛する権利はある」とし、「核抑止力をさらに強化するための新たな形態の核実験も排除しない」と4度目の核実験の可能性を示唆する声明を出した。
4月12日、北朝鮮の「朝鮮平和擁護全国民族委員会」報道官は、米・韓両空軍が11日から韓国で始めた過去最大規模の米韓合同上空戦闘訓練「マックスサンダー」を、「わが国への先制攻撃を狙った危険な侵略戦争演習だ」と非難する声明を発し、「敵がわが領空を少しでも侵犯すれば、発進基地はもちろん、本拠地を全て焦土化する」と警告した。
3月下旬に韓国の保守系マスメディアは、韓国内で相次いでカメラ搭載の「小型無人飛行機」が発見され、北朝鮮のものと見られると報じていたが、5月8日になって、韓国国防部は「無人機に内蔵されていたコンピューターのデーターを分析した結果、いずれも離陸・復帰地点が北朝鮮地域であることを確認した」と発表した。5月11日、北朝鮮国防委員会は、これに対し「われわれの立場は明確だ。南朝鮮当局がどれだけ『北の仕業説』を100回1000回捏造してもわれわれとは一切関係ない」とし、「南朝鮮は不祥事があるたびに北朝鮮に責任をおしつけてきた、今回も南朝鮮旅客船事故で政権の危機が高まり、『無人機事件』で難局を突破しようとしている」とした。ちなみに、米CNN放送は、「韓国で発見された無人航空機は玩具店で買える軍隊版ラジコン飛行機だ」として危険性を否定し、「韓国が米国から小型無人航空機感知能力を向上させる低高度レーダー網購入のために計画された自演劇ではないかという疑問を持たせる」と報道している。
朴槿恵政権打倒へと向かう韓国労働者人民の闘い
朴槿恵政権の支持率は、旅客船「セウォル号沈没事故」前は60パーセント前後であったが、「セウォル号沈没事故」の政府の対応への労働者人民の批判の中で、一気に10ポイント前後も下がり、今や50パーセントを割りこんでいる。こうした朴槿恵政権と対決し、韓国労働者人民は果敢に闘いを前進させている。
3月31日、「戦争反対平和実現国民行動」など闘う労働者人民は、慶尚南道浦項で「フォール・イーグル」の一環として3月27日から4月7日まで、浦項周辺で行なわれた上陸演習「双竜」に対して演習中止を求める闘いを展開した。5月16日、「民主労総」、「韓国労総」、「平和統一市民連帯」など63の運動団体は、ソウルの日本大使館前で、前日の「安保法制懇」報告を受けた安倍の「集団的自衛権の行使」容認を推進する記者会見に対する緊急抗議行動を闘い、「日本の侵略戦争の被害当事者である朝鮮半島にまた日本の軍隊が進入する状況を決して容認できず、東北アジアの軍事的対立を激化する集団的自衛権保有の動きは今すぐ中断するのが当然だ」と要求した。またこれとは別に「平和と統一を開く人々」も同日、日本大使館前で記者会見と抗議行動を闘っている。
昨年12月に民営化阻止を掲げ22日間のストライキ闘争を闘った「韓国鉄道労働組合」は、報復攻撃と対決しぬき、工場労働者も労働条件をめぐるストライキから街頭へ進撃し、朴槿恵政権打倒へと闘いぬいている。朴槿恵就任1周年をむかえた2月25日、「民主労総」所属の「鉄道労組」と「サムスン電子サービス支会」、大学清掃労働者など合計867の事業場が同時ストライキを行なった。全国で10万人が参加し、ソウルと忠南、忠北、大田、全北、光州、全南、済州、慶南、釜山、蔚山、大慶など同時多発で「国民ストライキ大会」を開いており、ソウルでは4万人が決起し、決議文は「 1、思想の自由抑圧、各種の公安弾圧と労働弾圧などの民主主義破壊に対し、粘り強く闘う。1、路地と市場と現場で、国民と共に民衆生存権争奪闘争を展開する。1、鉄道と医療などの公共部門の民営化阻止と公共性強化闘争を展開する」などとした。2月27日、韓国鉄道公社は、昨年12月の民営化阻止ストライキを主導したことを理由に、キム・ミョンファン委員長など中央委員と支部長などの労組幹部130人の解雇を強行し、支部の幹部と組合員251人に停職、23人には減給などとする大量処分を強行した。3月15日、韓国労働運動の象徴となっている「希望バス」134台で結集した3500人の労働者人民は、ユソン企業忠南牙山工場前に移動し、「全国金属労組ユソン企業支会」組合員や「金属労組」のチョン・ギュソク委員長などが、牙山工場の中にある労組事務室に入ろうとするのを阻止しようとした機動隊との攻防を闘い、「全国金属労組決意大会」を貫徹した。「全国金属労組双竜自動車支部」、「現代自動車非正規職支会」、「サムスン電子サービス支会」などが、会社の労働運動弾圧を弾劾し闘う決意を明らかにしている。5月1日の「民主労総」メーデー闘争は、ソウルで1万人が決起したのをはじめ、全国で5万人が闘い、「朴槿恵退陣」「労働弾圧粉砕」「労働基本権保障」「民営化阻止」「年金改悪阻止」など、11大要求を掲げた。
1960年3月15日の大統領選での李承晩の「不正選挙」に端を発した労働者人民の怒りの爆発=李承晩を打倒した「4月革命」から54年を迎えた4月19日、「統合進歩党」、「進歩連帯」、「民主労総」、「全農」など1500人が、ソウル市の清渓広場で「南在俊国情院長の罷免、不正選挙とスパイ捏造事件を許さない」を掲げて「再び4・19民主回復キャンドル集会」を開催した。「進歩連帯」の韓忠穆共同代表は、「3・15不正選挙で当選した李承晩政権が4月革命により歴史の彼方に消えたように、朴政権もそうなる運命だ」とした。4月22日、米大統領・オバマの訪日、訪韓(4月23日〜26日)を前にして、日・韓の闘う団体が「―朝鮮半島の平和ならびに東アジアの平和の構築のために―韓日平和団体共同宣言」を発した。「宣言」には、韓国から「統合進歩党」、「戦争反対平和実現国民行動」、「民主労総」など55団体、日本から「韓統連」、「日韓ネット」など26団体が賛同した。「宣言」は、「米国と韓日両政府はミサイル防衛網の構築など、攻撃的な武器増強を直ちに中止すること」「米国政府は日本の集団的自衛権行使容認への支持を撤回すること」「日本政府は集団的自衛権行使容認と憲法改悪の立場を撤回すること」「韓国政府は北朝鮮制裁の5・24措置を解除し、全面的な南北関係の改善に乗り出すこと」などを要求している。
韓国労働者人民は、朝鮮反革命戦争粉砕の革命的反戦闘争を闘い、安倍や閣僚の靖国参拝、「従軍慰安婦問題」での日帝の戦争責任の居直りを許さず、反日米帝、朴槿恵政権打倒、南北朝鮮の革命的統一へと闘いぬいている。
闘う韓国労働者人民、在日朝鮮労働者人民と連帯し、日朝連動するプロレタリア革命に進撃せよ。 |