事前集会に150人が結集
4月16日、「埋立承認取消訴訟」第1回公判が開始された。12時半より那覇地裁前広場において事前集会が開催される。同訴訟の原告団を先頭に、闘う沖縄労働者人民約150人が結集した。はじめに、「ヘリ基地反対協」共同代表の1人であり同訴訟の団長である安次富浩氏がマイクを握る。「原告団には675人が集まった」「ウィスラー四軍調整官が『普天間基地の五年以内の運用停止はありえない』と言っている。抵抗で頓挫したが、かつて辺野古には『軍民共用空港建設』や『15年使用期限』といった計画があった。これらは空手形だった。『5年以内の運用停止』も空手形に過ぎない」「美(ちゅ)ら海を人殺しのための基地に変貌させてはならない」「仲井真『県』政は国の代理機関となっている。知事を裁判に引っ張り出そう」と熱く訴える。つづいて、総勢44人の弁護団を代表して池宮城紀夫氏が発言に起った。「昨年12月、知事は仮病を使って東京に行き、埋め立てを承認した。1日も早く知事を辞めろという怒りを裁判にぶつけていこう」「1月19日、名護市長選は4000票差で圧勝した。だが国は2日後に埋め立て手続きを開始した。4月11日には、漁港使用の申請書をコソコソ持ち込んだ。やり方が汚い」と怒りを込めて訴える。
その後、結集した各団体から発言を受けていく。「沖縄平和運動センター」は、「10年前は知事も市長も推進派だった。それでも座り込んで計画を止めた。押し込んでいるのは、われわれだ。追い込まれているのは防衛局、政府だ。力づくでもはね返して闘おう」とさらなる闘いを呼びかける。「沖縄平和市民連絡会」の真喜志好一氏は、「米国でジュゴン訴訟を闘っている。米国には、合衆国が国外で事業を行なう際に相手国の法律で守られている物事を合衆国も守らなくてはならないという『国家歴史的財産保護法』という法律がある。これを使って裁判を進めた。2008年1月、裁判所は国に対し『ジュゴン保護策を示せ』と判決を出した。これを使えないかと。『建設予定地』は提供水域内にある。提供水域に入るには基地司令官の許可が必要であるが、これを認めてしまうとジュゴン保護ができない、だから認めてはならない。こういう訴訟を準備している」と訴える。
第1回公判は、午後1時半から開始された。あふれ出た仲間たちは広場で待機し、その間、弁護団から公判内容について説明を受ける。代表して法廷に立った2人の陳述書も読み上げられる。参加者は法廷内外で仲井真「県」政への怒りを燃え上がらせたのである。
午後2時過ぎ、事後集会が行なわれ法廷内の状況が説明された。陳述を行なった2人から発言を受ける。安次富氏は、「知事はいまだに『公約を撤回していない』と居直っている」「日本政府は、米政府に『普天間5年以内の運用停止』について沖縄からの要望として伝えたのみ。実現する気はない」と厳しい口調で語り、知事と政府を弾劾する。名護市東海岸でエコツーリズム事業を行なっている仲間は、「人間の都合で自然を破壊して基地を拡大しても、豊かな暮らしにはつながらない」と毅然として訴える。弁護団事務局長を務める三宅俊司氏は、「『県』の答弁書が提出されているが、『都道府県知事』の承認を受けずに国が埋め立てたとしても罰則はない、承認しなくても国は埋立できる、『公有水面埋立権限』は国にある、というものだ。私が、法廷で『この答弁書を公判で維持するのか』と質問したら『県』は、はっきりしない。裁判長に促されて、やっと『維持します』と回答した。『国の言い分には何も逆らえないよ』というのが知事の本質だ」と怒りをもって訴える。参加者全体からも、三宅氏の報告に怒りの声が上がる。公判闘争に駆けつけたすべての弁護士が紹介され、喝采が浴びせられた。最後に、安次富氏のガンバロー三唱で第一回公判闘争は閉じられた。
辺野古埋め立て着工阻止へ
仲井真「県」政を訴える「埋立承認取消訴訟」は、昨年12月27日に知事・仲井真が名護新基地建設に関する「公有水面埋立申請」を「承認」したことを受けて緊急で呼びかけられたものである。わずか2週間ほどの期間で辺野古・久志住民12人、その他名護市内および宜野座村住民30人を含む沖縄居住者194人の原告団が結成され、1月15日に提訴された。1月末まで原告募集作業を延長した結果、原告団はさらに拡大し675人に達した。
「埋立承認取消訴訟」は、知事の「埋立承認」が「公有水面埋立法」第四条一項の一号から三号に違反することを主旨とするものである。まず二号「その埋立が環境保全及び災害防止につき十分配慮されたのものであること」について。二号要件は、「環境影響評価」(アセスメント)の「評価書」(補正前)に対する知事意見と「補正評価書」をふまえて審査しなければならない。訴状では、知事意見によっては「事業実施区域周辺域の生活環境及び自然環境の保全を図ることは不可能」と指摘し、「補正評価書」によっても「環境の保全を図ることは不可能」とし、こうした内容、無視して「承認」したことは、二号要件を満たしていないとしている。そして、「不可能」の中身について「オスプレイ配備に伴う懸念」「生活環境保全への影響」「自然環境保全への影響」などを具体的に列挙している。三号「埋立地の用途が土地利用又は環境保全に関する国又は地方公共団体(港湾局を含む)の法律に基づく計画に違背しないこと」について。これについて訴状では、「生物多様性国家戦略2012―2020」(国)「琉球諸島沿岸海岸保全基本計画」(沖縄「県」)「名護市景観計画」などを挙げ、「埋立承認」はいずれも充足しないことを指摘する。第一号「国土利用上適正かつ合理的であること」について。ここでは第1に「埋め立ての必要性」を否定する。例えば「国は、普天間基地の危険性除去のため現在の代替施設を設置しようとしているのではない。実態は、新たな基地建設のために普天間の危険性除去を駆け引きの道具にしているに過ぎない」としている。第2に「埋立によって失われるもの」として、「大浦湾の自然環境、景観は県内においても貴重なものであり、一度失われれば取り返しがつかない」と指摘する。「取消訴訟」の本訴のほか、「執行停止申立」も同時に行なっている。
対する「県」側の答弁書はひどい。「『公有水面』を埋め立てるかどうかは、本来、国の判断に委ねられるべきものである」「国が知事の承認を得ずに埋め立てを行った場合であっても、知事から是正を受けたり、罰則を適用されることもない」「知事が承認を行わない場合には、国の知事に対する是正の指示、係争処理委員会による審査、国による代執行などで解決される」と「国」と全く同じ主張を展開している。とりわけ、原告側の「騒音被害」を否定した部分で「普天間爆音訴訟の高裁判決でも、高血圧や頭痛、肩こり等のストレスによる身体的被害の発生に対する不安感等の精神的苦痛を認めるにとどめており、騒音と身体的被害との因果関係を認めたものは見当たらない」と挿入されていることに大きな批判の声がつきつけられている。「健康被害」と「航空機騒音」の因果関係について、「県」自ら語ってきたことすら否定しているのだ。「県」は今回、法務省から派遣された訴訟検事を前面に立てている。答弁書作成に国側の意向が深くかかわっているのである。
第1回公判後、仲井真は「基準に適合していると判断し承認した」「今後も承認が適法であることを主張したい」とコメントを発表している。「沖縄をカネで売った」仲井真が、今さら何を主張しようと驚きはない。だが、沖縄労働者人民はその所業を絶対に忘れることはないだろう。われわれは、知事への怒り、政府への怒りを残らず組織し、あらゆる手段を駆使して名護新基地建設を阻止するため奮闘する。
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