「是正要求」撤回に決意を固める
4月8日、「県民広場」において「沖縄平和運動センター」・沖教組・高教組の共催で「竹富町に対する教科書採択に関する『是正要求』撤回を求める沖縄県民集会」が開催された。同集会は、3月14日に政府―文部科学省が竹富町教育委員会に対し、教育行政では初となる「是正要求」をつきつけるという強権発動に出たことに対して開催されたものである。教育労働者をはじめ130人が結集した。天皇上陸阻止沖縄青年実行委員会も呼びかけに応えた。
正午過ぎ、会場には市民団体や労働組合の旗が立ち始める。12時15分、「戦争賛美の教科書を許さないぞ!」「『是正要求』を撤回しろ!」とシュプレヒコールをあげ開会した。「沖縄平和運動センター」は、「文部科学省は、『教科書無償措置法』を盾に、竹富町に『育鵬社』版の教科書採択を押しつけ『是正要求』で圧力を加えてきた。許すわけにはいかない」「辺野古の工事が始まろうとしている。高江も7月から工事が始まる。与那国でも自衛隊が配備されようとしている。団結して闘おう」と熱く語る。沖教組・高教組は、「この問題は、ある政治団体が組織介入したことが発端。そのメンバーが、今や文部大臣となっている」「下村大臣は、『二つの教科書を比較して授業をしてもいいんじゃないか』と答弁している。何でもいいから『育鵬社』版を取って欲しいということだ」と問題の本質を明らかにする。
八重山から現地報告を受ける。「教科書問題は2011年に『八重山採択地区協議会』の規約が次々と変えられ、現場の教師が排除されたことから始まった。それは突如として行なわれた『クーデター』だった」「竹富町は、『教科書無償措置法』を守っている。文部科学省も『違法性はない』と認めている。『是正要求』した文部科学省こそ『法』を破っている。憲法26条に違反している」「『教科書無償措置法』と『地方教育行政法』という二つの『法』の矛盾を放置しておいて、竹富町だけを『違法状態だ』として『是正要求』をするのはひどい」「『是正要求』撤回の署名運動を行なっている」「石垣と与那国の子どもたちは『育鵬社』版で学んでいる。そのことが心配だ」という詳細な説明に、参加者は息をのんで聴き入った。竹富町民で戦争体験者の一人としてマイクをとったメンバーは、「小さな島を潰せば国全体を一色に染め上げられるという考え方が恐い」「真実を伝えることが私たち『艦砲ぬ喰ぇーぬくさー』の仕事。『命どぅ宝』は言葉だけではいけない。地上戦の体験を子や孫たちにさせてはならない」と毅然として訴える。
すべての発言が終了し、声明が読み上げられた。「3月14日文部科学省は竹富町教育委員会に対し直接『是正要求』を行なった。教育行政で国が市町村に直接『是正要求』を行なうことは初めてで異例の措置であり、強権的・不当で断じて容認できない」「教科書無償措置法では『採択地区は同一の教科書でなければ無償措置の対象とならない』とされているが、同一でない三市町でなく竹富町だけ『是正要求』を行なうことは法の下の平等に反する行為である」「『育鵬社』教科書は、去る大戦を『大東亜戦争』と記述し、在沖米軍基地の実態にはほとんどふれず、平和憲法を否定するような内容が多く含まれている。このような内容の教科書を沖縄県の学校の授業で使用されることは、県民感情からしても耐え難いものがある」。声明は満場の拍手で確認された。「是正要求」撤回の決意を込めたシュプレヒコールで集会は閉じられた。
政府―文科省による教育への政治介入を粉砕しよう
八重山教科書問題は、「教科書八重山採択地区協議会」(石垣市・与那国町・竹富町)の会長・玉津が勝手に規約を変えて独断で調査員を委嘱し、2011年8月に「育鵬社」版中学校公民教科書の選定・答申を強行したことに始まる。調査員は選定過程で教科書をまともに読んですらいない。玉津の狙いは、ファシスト団体「新しい歴史教科書をつくる会」系の作った「育鵬社」版教科書を採択することにあった。その作戦指導に当たったのが、文部科学相・下村(現)や同省政務官・義家弘介(当時)らである。石垣市・与那国の両教育委員会は答申通りに「育鵬社」版を採択したが、竹富町教委は現場教師の支持の厚い「東京書籍」版を採択した。玉津らの不当な手法と「育鵬社」版教科書への批判が瞬く間に拡大し、同年9月8日、三市町の「全教育委員協議」の場で「東京書籍」版が採択された。玉津の画策は崩れ去ったのである。闘う沖縄労働者人民の怒りに包囲された玉津らは文部科学省に「協議は無効だ」と泣きつき、これを根拠に文部科学省は「9・8協議」は「整っていない」と否定し、「竹富町は『無償措置法』の対象外」と決めつけた。そのため竹富町では、2012年度より町民有志らのカンパによって「東京書籍」版教科書を独自に配布し対応している。これについて文部科学省は「地方公共団体が自ら教科書を購入し、生徒に無償供与することまで法令上禁止されていない」と言わざるをえない状況にある。
これが一転「竹富町は違法状態だ」と大々的に宣伝され始めたのは、安倍政府が登場してからだ。文部科学省初等中等教育局長も「政権交代後、より強い指導を行なうようになったのは事実」と認めているように、教育への政治介入を方針化した安倍政府は、竹富町への圧力を本格的に開始した。2013年3月、政務官・義家(当時)が竹富町に直接乗り込み、「指導」をつきつけた。竹富町教委はこれを拒否。同年10月には竹富町民をはじめ沖縄労働者人民の抵抗に業を煮やした文部科学相・下村が、「地方自治法」に基づいて「県」教委に対し竹富町教委への「是正要求」を指示した。「県」教委がこの「指示」に従わないため、政府―文部科学省は2014年3月14日、竹富町教委に対し直接「是正要求」をつきつけ、「違法確認訴訟」までちらつかせて恫喝し始めたのである。また4月9日には、改悪「教科書無償措置法」が成立した。これは、「採択地区単位」を「市郡」から「市町村」に変更し、「採択協議会」設置および地区内の同一教科書採択を義務化するという内容である。「採択地区単位」を「市町村」へと変更されたことで、法文上は竹富町を「八重山採択地区」から「分離」する余地を残しているが、文部科学省は「竹富分離」を明確に否定している。竹富町教委は11日、「是正要求」を「不当」として拒否しつつも「国地方係争処理委員会」への不服申し立てについては見送るとし、同「法」を根拠に「町単独での教科書採択」をする方針を「県」教委に報告している。「県」教委は「採択地区」の構成を決める権限を有する。政府は竹富町の決定に「審査申し立てもせずに、是正要求に従わないのは極めて遺憾」(官房長官・菅)としている。今後も政府―文部科学省が「同一教科書採択の義務化」を盾に、竹富町に「育鵬社」版採択を強制しようとしてくることは間違いない。
全国で闘う教育労働者をはじめとするすべての労働者人民に、より一層の注目と連帯・共同闘争を呼びかける。われわれは教科書問題を通した安倍政府による教育への政治介入を粉砕し、反戦・反基地闘争の飛躍をかけて闘いぬく決意である。
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