組合員証人の尋問
8月29日午後1時30分、この日は審問であり、結審であるためいつもより大勢の支援者がすでに控え室に結集している。1時40分、急遽調査を入れると労働者委員から連絡があった。第6回調査として公益委員が、証人の陳述書や審問に関する書類を確認し、両者に対して意見の有無を聞き、ごく短い時間で調査が終了した。その後、審問室に移動し審問が開始される。
最初は、組合員証人の尋問だ。主尋問は、2008年6月24日、第1回団交についてパナソニックPDP側は人権侵害行為としての「リペア作業」は「必要があった」として一切謝罪がされていないこと、吉岡氏の「地位確認」についてきちんと団交で話し合う姿勢がなかったこと、上告理由を求めても上告中であることを理由として具体的な交渉を一切拒否したことなど、パナソニックPDP側の不誠実団交の実態を明らかにしていく。続いて、2008年7月30日の第2回団交について、組合側が高裁判決で人権侵害が認定された「リペア作業」の部分だけ切り離して解決を要求しても、会社側代理人弁護士は「不可分一体」「切り離せない」「上告中」として団交での解決を一貫して拒否し続けたことを指摘する。またパナソニックPDPが「引き抜き斡旋行為」をしていた事実について、証拠として提出されていた録音などから事実として認識していたにもかかわらず、パナソニックPDP側の社員、弁護士も「一切ない」と否定していたこと、会社側代理人・魚住と会社側が団交を「平行線」に追いやり、解決する姿勢がなかったことを明らかにした。その上で、パナソニックPDP側が中労委での主張で、組合側が団交を「平行線」にしたかのように装ったことを指摘した。最後に、中労委に対して「非正規雇用」労働者の争議が困難な状況で吉岡氏が起ち上がったことに敬意を表し、争議解決に向けた努力をするよう訴えた。
続いて、パナソニックPDP側から反対尋問がなされる。会社側代理人は、証人が事実に反する主張をしているとして、2009年12月10日の団交要求内容と、2009年12月18日の別件訴訟の要求内容を持ち出し、「組合側は同じと言っているが要求内容が同じかどうか」としつこく言いつのった。証人が、「要求内容に違いはあっても、そもそも話し合いを一切拒否していたためきちんと団体交渉に応じろと要求したことは同じ」と何回説明しても、「内容事項は違うか、違わないか」とくり返し、会場の支援から野次が飛ぶ。「引き抜き斡旋行為」の件では、「本当に担当者と団交の事前折衝をしたのか」と担当者の個人名をあげて質問をし、証人が「名前は聞いていないが、何度か話をしている。その際、団交申し入れを受けとらないのが社の方針とも聞いている」と説明を返しても「担当者と話をしたのか」と繰り返し、「そんなことより責任者連れてきて謝罪しろ」とまたもや支援から野次が飛んだ。見かねた組合側の弁護士から釈明申立がなされ、「府労委の審問では『担当者と直接会話をしてない』となっているのに、補充申立書は『話しをしている』となっていることを比較して質問しているならそれは前提誤認だ」と指摘され、慌てふためき、再度「直接担当者と話をしたのか」と言い直した。証人は、「担当者かどうかは分からないが、話をした」と回答した。「書面は誰が作成したか」という質問に至っては、会場から「そりゃ組合だろう」と失笑が起る始末であった。
吉岡氏が訴える
途中短い休憩が入り、続いて吉岡氏の尋問が始まった。まず主尋問では、2008年の6月24日、同7月30日の団交が終了した時点の感想を質問された吉岡氏は、「平行線だとは思っていない。次回の団交の日程調整の話があり、こちらが引き抜き斡旋について証拠を示しそれに基づいた話をしようとなった」と述べた。また吉岡氏は、職場で嫌がらせがあったこと、「リペア作業」だけではなく「引き抜き斡旋行為」も「私に対する個人的圧迫を与えるような嫌がらせだった」とした。そして、パナソニックPDP自体が「引き抜き斡旋行為」を認識しているにも関わらず、団交では「していない」と主張していたこと、「引き抜き斡旋行為」は現場の人間関係を悪くし「私に対する嫌がらせのなかでも一番大きな要素」であったとした。「引き抜き斡旋行為は無かった」というウソが後日明らかになった経緯について吉岡氏は、別件の労働委員会で会社側が出した証拠のCDRに、団交の休憩中担当者が「ちょこっとやりました」と言っているのが録音されていることを説明した。吉岡氏は、「結局会社側が出した録音の証拠で会話の中から虚偽だということが分かった。明らかに不誠実団交で、不当労働行為というのは認められるのではないかと感じた」と述べた。さらに、録音で魚住が「平行線でいかにゃしょうがない」と言ってることについて、「弁護士が不誠実団交を指南するというのは、弁護士としていかがなものか」と苦言を呈した。また、「魚住弁護士が、組合に対して『あほ(ママ)じゃない』とまで言っている。憤りを感じた」と怒りを爆発させた。
その後の質問では、7月30日の団交がパナソニックPDP側の「最高裁に委ねたから」との理由で、団交の場で議論しない態度であったことが明らかにされた。吉岡氏は、そのような状況でも、団交が「平行線」として決裂したとは思っていなかったこと、組合が日程調整しようとしたがまったく連絡が取れず、会社に直接行っても「担当者はいない。総務に1人もいない」などの対応をされたこと、組合は何度も要請行動を行なっていたことを明らかにしていく。吉岡氏は、2009年7月29日の要請行動で「保安の方々に取り囲まれ羽交い絞めされ押さえつけられた」と不誠実な対応だったことを指摘し、暴力を振るったのは組合側という会社側の主張を打ち崩した。和解案が流れたことに対して吉岡氏は、「和解案では『真摯に受けとめる』ということを言っておきながら、和解の席には誰も出席しない。言っていることと、やっていることが違う。社会的にもひどすぎる対応」と怒りを露にした。最後に吉岡氏は、「公益委員も判断をだし主張したにも関わらず、パナソニック側が出ないということは、私も非常に残念に思っている。公益委員の方も『説得したけど非常に残念』と言われた。少しはこの会社の非常識さが分かっていただけたかなと思っているし、そう言ってくださったことは、不当労働行為に対していい判断をもっていただけていると思います。結果如何に関わらず言葉をかけてくださったことは、ありがたいと思っています」と述べた。
その後の反対尋問では、会社側代理人・魚住が、「吉岡氏は本件を謝罪だけをもとめた事件であるとの認識を示してる」「『真摯に受け止める』という内容では足りないのか」「損害賠償を供託していることが、謝罪していると受け止められないのか」と、あがきとも取れる質問をくり返した。吉岡氏は、「先ほども言いましたが、真摯に受け止めるといいながら、誰も出席しないというのは言っていることとやっていることが違うという認識で、逆にコケにされたと思っている」「法的な問題ではなく、私に向かってきちんと話し合いの場で応じるのは社会的に当たり前のこと。団体交渉に応じろと要請を続けていた。応じなかったのは会社側です」と言いきった。
公益委員が本日をもって結審とすることを宣言し、最終陳述書の提出締め切りを10月末日に決め提出書類の内容を確認し審問が終了した。
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