「障害者総合支援法」施行を阻止しよう
「障害者」の自立と解放を阻む悪法=「障害者自立支援法」を一部見直しただけの「障害者総合支援法」が、6月20日の参院本会議で、民主、自民、公明などの賛成多数で可決・成立した。一部を除き、来年4月から施行されようとしている。
「障害者総合支援法」のもとでは、介護保険制度における「要介護度」や「障害者自立支援法」における「障害程度区分」と同じような「障害支援区分」という尺度が適用されるため、多くの「障害者」が必要な介護(時間・内容)を受けることができない。また、自治体によっても差はあるが、「社会通念上適当であると市町村が認めた場合以外の宿泊のためのヘルパー利用禁止」「政治活動のためのヘルパー利用禁止」など、「障害者」が自立と解放を実現するために不可欠な活動が規制されるのである。しかも、厚労省は、将来的には介護保険制度への統合=介護のさらなる切り捨てと介護費用のさらなる収奪をもくろんでいる。介護の商品化に貫かれた「障害者総合支援法」のもとでは、「障害者」と介護者の間に介護事業者という資本が介在し、介護は資本の利潤追求の手段となり、〈共闘・共生〉の条件も破壊される。このような「法」は撤廃あるのみだ。「障害者総合支援法」成立を徹底弾劾する。
「障害者総合支援法」に先立つ「障害者自立支援法」は、2005年に成立し2006年に施行されたが、「介護サービス」などの利用料の原則一割を本人が負担するという「応益負担」によって低所得者への負担が増大し、しかも、「障害」が重く介護が必要な人ほど負担が急増し、批判が集中した。
2009年に発足した民主党主導の政府は、内閣府に設置した「障がい者制度改革推進本部」のなかに、「障害者」団体を取り込んだ「障がい者制度改革推進会議」を置き、「当面5年間を障害者の制度に係る改革の集中期間と位置付ける」とした。政府は翌2010年1月に「障害者自立支援法違憲訴訟」の元原告団と「遅くとも2013年8月までに障害者自立支援法を廃止し、新たな福祉法制を実施する」という「基本合意」を交わし、同年6月に「法」の廃止を閣議決定した。これを受けて、「違憲訴訟」も同年和解している。
介護の商品化を粉砕しよう
しかし、野田政府は今年3月、廃止するとしていた「障害者自立支援法」を一部見直しただけの新「法」案=「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」案(「障害者総合支援法」案)を閣議決定し、今国会での成立を強行した。「障害者総合支援法」は、「障害者自立支援法」の題名を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に変更するなどの「障害者自立支援法の一部改正」を柱とする「関連法の一部改正」で構成されている。「障害者自立支援法」から変更する内容として、「難病患者を障害福祉サービスの対象に加える」「重度訪問介護の対象者を拡大し、現行の『重度の肢体不自由者』だけでなく、知的障害者や精神障害者もサービスを利用できるようにする」「共同生活介護(ケアホーム)を共同生活援助(グループホーム)に一本化し、グループホームのサービス内容に、入浴・排泄・食事の介護を加える」などが盛り込まれている。しかし、批判の集中した「応益負担」にかんしては、所得の低い「障害者」が「サービス」を利用した際の軽減措置を現行通り続ける一方で、昨年8月に「障がい者制度改革推進会議」の「総合福祉部会」が提言した「サービスの原則無料化」「サービスを受ける際は障害程度区分に基づかず、本人の意向が最大限尊重される仕組みにする」などの「骨格提言」は、そのほとんどが無視されることとなった。「障がい者制度改革推進会議」のメンバーからは「私たちはもう政治に絶望しかけている」「詐欺だ」と不信、不満、怒りの声が上がっている。さらに、「弱者の立場に立って政権を取ったはずだ」と、民主党に対する不信も極まっている。
差別糾弾闘争で闘おう
はっきりさせるべきは、「障害者総合支援法」はもとより、「障がい者制度改革推進会議」が求めている「障がい者総合福祉法」も、介護の商品化に貫かれた「法」である以上、「措置制度」からの改悪ということであり、徹底した差別糾弾闘争で粉砕しなければならないということである。そもそも、ブルジョア政治委員会とブルジョア議会への法制度要求で「障害者」の自立と解放を実現できるなぞと考えるのは、全くの幻想である。そんなことで実現できるのは、せいぜい改良要求だけである。同じ改良要求なら、「支援費制度」よりは「措置制度」のほうがまだましだということだ。「措置制度」から「支援費制度」に変わる時に、高橋かおり同志を先頭に「支援費制度」粉砕闘争を闘いぬいたことを忘れるな。介護の商品化のもとでは、〈共闘・共生〉の条件が奪われ、しかも、厚労省という官僚的軍事的統治機構が一貫してもくろんでいる「介護保険制度への統合」という攻撃に対決しきれない。
介護保険制度においても、厚労省は「施設から在宅介護への移行」を謳い、2012年度からは「24時間訪問介護(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)」がスタートしている。しかし、「24時間訪問介護」と言っても、介護を受ける者が死なない程度に、コマ切れに介護に入るだけの代物である。厚労省は、施設内介護より財政負担を少なくした「在宅介護」を浸透させようとしているのであり、「障害者」介護においても、「地域生活」を謳ったうえで、介護保険制度におけるこのようなコマ切れの介護で済ませようとしているに違いない。介護の商品化を許しておけば、「障害者」の介護制度も脅かされ続けるのだ。
全障連が生命力を失い、歴史的使命を終えた今、全障連の歴史的地平を継承・発展させ「障害者」差別糾弾闘争を闘える新しい全国組織=全国「障害者」解放運動共闘会議の結成をなんとしてもかちとらなければならない。「障害者総合支援法」粉砕かちとり、介護の商品化を粉砕しよう! 「心神喪失者等医療観察法」撤廃かちとり、保安処分施設を解体しよう! 「脳死―臓器移植法」撤廃をかちとろう! 「安楽死・尊厳死」法制化を阻止しよう! 差別糾弾闘争の前進かちとり、「障害者」差別―抹殺攻撃を打ち破ろう! 消費税増税と朝鮮反革命戦争へ突撃する野田政府を打倒しよう!
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