008 一目惚れ






此処の所、凄く気持ちが落ち着かない日を過ごしている。
その理由が何かは分からないけど、とにかくおかしいんだ・・・・。
特に、彼が傍に来た時なんか。

「お。クラウド君、発見しましたぁ〜。・・・・な〜んって。よ!お疲れさん。」
「ザックス・・・。アンタ、相変わらず元気だな。疲れるって言葉、知らないんじゃないの?」

ほらまた。
いつもは平気なのに、ザックスと会うと心拍数が上がるような気がする。
これじゃ、まるで・・・・・・・・・まるで、何??

「疲れ知らずって、お前。それは心外だなぁ。俺だって疲れんだぜ?けど、その後の楽しみがある
 からな!」

・・・・・・・”楽しみ”。
そう言えば、同僚に聞いた事があったっけ。




「クラウドって、最近、よくザックスさんと一緒に居るけど、気を付けた方が良いぞ。
 あの人、女ッたらしで有名みたいだからさー。」
「・・・・・それがどう関係あるんだ?俺は男であって女じゃない。気を付ける必要があるとは思
 えないんだけど。」

そう言うと、同僚は深い溜め息なんかついてくれて、

「そこだよ、そこ!お前、こう言っちゃ何だけど、ソルジャー・セフィロス並みに女顔。
 しかも、そんじょそこらじゃお目に掛かれない様なプラチナ・ブロンド!」

何かムカつく。女顔とかって失礼じゃないか!
しかも、引き合いに出すのがソルジャー・セフィロス。比べるなよな・・・・。
神羅の英雄と、たかが一般兵じゃ比にならないって。





「どした?体調悪いのか??」

綺麗な魔晄の瞳が、心配そうに揺らいでいる。
どうしてこの人は、ごく一部の奴しか傍にも寄らないような俺に、こうも親身になってくれるんだろう。

「クラウド、大丈夫か?」
「・・・・・・ザックス。ちょっと過保護じゃない?大丈夫だよ。」

”そっか?ならいいけど。”と言って、とても優しい笑みをくれる。目に見えてホッとした表情。
ザックスと出会った切っ掛けは何だっただろう・・・・・・。
突然話し掛けて来て、ウザったいくらいに俺の周りをうろついてて。
きちんと仕事してるのか?と思った事もあった。けれど、今はそれが当たり前になってる。

他の奴らには感じない何かを、俺はザックスに抱いているのかも知れない。
決して口にしてはいけない事かも知れないし、それが何なのかは今は分からないけど・・・・・。
初めて会ったあの時の、彼の優しい眼差しに、俺は・・・・・・・・・・・・・・・・。





切っ掛けなんか憶えちゃいねぇ。
とにかくあの外見に目を奪われたのは確かだ。
だからって、別に・・・・・・・って思ってた。それがどうだ?
気付けばクラウドを探してる。どうしても会いたくて。幾ら疎いクラウドも、同僚やら噂やらで、俺の過去・現在の近況は耳に入ってるかも知れない。
それでもいい。嫌われなきゃそれで・・・・。

「お。クラウド君、発見しましたぁ〜。・・・・な〜んって。よ!お疲れさん。」

早速、綺麗なプラチナ・ブロンドのクラウドを見つけて声を掛ける。
が、何か様子が変だ。新兵ってのは、俺もそうだったけど大変なんだよな。
いらねぇ雑用なんかも押し付けられてよー。

「ザックス・・・。アンタ、相変わらず元気だな。疲れるって言葉、知らないんじゃないの?」

人が労ってるってのに、そりゃねぇだろー?

「疲れ知らずって、お前。それは心外だなぁ。俺だって疲れんだぜ?けど、その後の楽しみがある
 からな!」

すっげー些細な抵抗をしてみる。
今の俺には、仕事の後にクラウドに会うのが日課になってるようなもんだ。
気になる奴に思う存分会いに行ける、俺にとってはこの上ない楽しみ。
ところが、更にクラウドの様子がおかしくなった。
もしかして・・・・

「どした?体調悪いのか??」

俺を見上げたまま微動だにしないクラウドに声を掛けてみるが、案の定返答が無い。
マジで大丈夫かよ。心なしか頬が紅い気がする。
こき使われ過ぎて熱でも出たんじゃないだろうな?んな事だったら、こき使った奴に文句言ってやる!!

「クラウド、大丈夫か?」

めげずにもう一度声を掛けてみる。

「・・・・・・ザックス。ちょっと過保護じゃない?大丈夫だよ。」
「そっか?ならいいけど。」

内容には些か問題はあるものの、何とか返事が返って来ただけでも良しとしようじゃないか!
物事はポジティブに考えなきゃな!そう思いながら、笑ってみせると、何故かクラウドの頬が更に紅くなった様な・・・・・。

それをどう受け止めて良いか分からないが、俺はどうやらこのプチ王子なクラウドに惚れているのかも知れない。
特に、この真っ直ぐ見つめてくる綺麗な翠の瞳に・・・・・・。それに気付いたのは最近だけどな。