Accident〜Zack Side〜


思えばこれがきっかけってヤツかも知れない。
とりあえず、”来るもの拒まず、去るもの追わず”の如く、仲間とフラフラと出歩いては”その気の女”と近場にしけ込み、外泊なんて事も多々あった。
それがどういう訳だ!?仲間に誘われてもその気になれないどころか、周りの女どもを清算し始めてるってのは・・・・。





2ヶ月ほど前に、新兵として入社して来た奴等の中でも、一際目立ってるヤツを発見した。
例えて言うなら・・・・・・”チョコボ”か??とにかく、此処らへんじゃ滅多に拝めねぇ、プラチナ・ブロンドときたもんだ。ブロンド程度なら幾らでも居るけどよ。
そんなもんで、目立たん方がおかしいと思わね?しかも、や〜らかそうな髪。
あれだ・・・・・”チョコボ頭”!こう、動く度にフワリと風に靡いてる、あの頭の天辺がソックリ!!

「・・・・・・くくくっ・・・・・。」
「あ?どうしたザックス。」

思い出したらしっくりとハマり過ぎて、笑いが抑えられなくなって、隣に居た仲間に聞かれちまった。

「いや、ちょっと思い出し笑い。」
「思い出し笑いって、なーに思い出してんだよ、このスケベ!」
「ちげーっての!そっちの話じゃねぇ!!」

そりゃぁ、今まで女遊びも多々して来たさ!だからって、思い出して笑えるような事なんざ、これっぽっちもねぇっつーの!!

「・・・・ふ〜ん。じゃぁ、どっちの話だ?」
「あー、まぁ。色々と・・・・?」
「なんだそりゃ!?・・・・・あ!?もしかして、本命ちゃんでも現れたか!」

だから勝手な憶測で物事を決めるなっての!
本命も何も入社したての新兵で、しかもあの子はここに居るんだから、間違いなく男だ!!
まぁ、顔はメチャクチャ好みの美人さんだけどな?いや、だからってどうって事じゃねぇんだぞ??
・・・・・って、何言い訳してんだ俺。

「で?その本命ちゃんは美人なのか?」
「だーかーらーっ!女の事じゃねぇっつーの!!」
「なんだ、面白く無いヤツだな〜。女遊びばっかしてないで、本命探ししてみたらどうよ?」

お・・・・お前には言われたくねぇな・・・・。俺より遥かに女遊び激しいじゃねーか。

「本命はいいぞ〜!」
「何が??」
「”行き当たりばったり”ってよ、何かいい加減どの女も同じに見えて来ないか?それに比べりゃ、本命 は一味もふた味も違う女に見える!!」
「・・・・・・・・あー、そーですか。」

要はただの惚気を聞かされただけか・・・。
俺はどうなんだろーなー?確かに、あのや〜らかそうな”チョコボ頭”は捨てがたい。でも、性別は間違いなく男だろう。神羅が間違えて女を入れてなきゃだけどな。
とりあえず、仲間の惚気を聞かされた俺は、仲間に”勝手に惚気てろ”と毒を吐きつつ別れ、”チョコボ頭”君の情報収集に勤しんだ。

「な〜にやってんだかなぁ、俺・・・・。」

そんな独り言を呟きながら、手当たり次第に新人君をとっ捕まえては”チョコボ頭”君情報を得ている訳だけど。
そんで判ったのは、名前だな。・・・・・クラウド=ストライフ。なぁ〜んか見た目飯っぽい名前だよな。
聞けば、新兵の中でも妙に目立ってて、しかもあのツラ。その上、エラく愛想が悪いとかで、新兵どもからの印象派桁外れに宜しくないらしい。

「今日はこんなトコでいっか。」

一通り情報収集を終え、部屋へ戻る途中に、何とも良過ぎるタイミングでクラウド発見!!

「お〜い、そこの金髪新兵君!!」

こんな呼び方もどうかと思うが、いきなり名前で呼ばれてもビビるよなぁ?
自分の事を呼ばれてることに気付き、何やらキョロキョロしてるけど、動作がチョコボソックリだな。

「はいはい、そこのお・ま・えっ!」

ポンと頭に手を乗せ、肩を掴んで体を反転させると、やっと気付いたらしく、俺を振り仰ぐ。
驚いてんのか焦ってんのか、ちょっとした緊張が目に見えて判る。まぁ、それもしゃーねぇか。
いきなり話し掛けられたかと思えば、相手がソルジャーだもんな?

「なぁ。お前、新兵??」

いや、聞かなくても判ってんだけどさ。

「・・・・・そうですが、何か?」

え〜っと、ちょっと機嫌・・・・悪いか?
あ、これがもしかして新兵が言ってた”愛想が悪い”ってやつ??
綺麗な顔してっから、目元がキツくなると結構、冷めた感じに見えるってか。
こりゃぁ、新兵どもに嫌われる訳だよなぁ。

「何って・・・・・、特に用は無いんだけどさぁ。チョコボ頭が目立ってたもんで。」
「は!?・・・”チョコボ頭”って・・・!」

・・・・・やべ。すっげ眉間に皺寄せて、こめかみに青筋が見えそう・・・・。

「あ、怒った?悪気はねぇんだけど、お前の名前知らねぇし。」

”ごめんな?”と両手を合わせて謝る。
いや、知ってんだけどさ。手当たり次第に新兵からやっとで聞き出した名前。
が、眉間の皺が治まっても、すっげー無表情。

「しっかし、見事なプラチナ・ブロンドだよなぁ。・・・あ!俺、ザックス。ソルジャ
 ー・クラス2nd。ヨロシクな!!」

名乗ったと同時に、クラウドの手を取るなり、ブンブンと音が聞こえそうな勢いで握手してみた。
俺様のとびっきりの笑顔付きで!
けど、何か驚いてねぇ?・・・・・・もしかして、魔晄の瞳って見るのが初めてで、俺がソルジャーって事に気付いてなかったのかも。

「で、お前は?」

今更聞く必要も無いけど、此処はやっぱ、順を追ってだなぁ・・・・・・って、何故に無言?

「おい?」

もっかい声を掛けてみる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

やっぱり返事が無い。っつーか、考え事に没頭してるって感じだな、これは。
それとも、そこら辺の奴らと違う特技でもあんの?例えば、

「・・・・立ったまま寝てるのか?」

いや、ありえねぇだろ!幾ら寝るのが好きな俺でも出来ねぇな。
目の前で手をヒラヒラと振ってみる。
その動きに釣られ、考え事に没頭していたのが我に返ったかのようにピクリと動く。

「はっ・・・・!えっ?」
「おいおい、大丈夫か?」

何も聞こえてませんでしたぁーって?面白いな、コイツ。

「あ、はい。大丈夫です。」
「そか?ならいいんだけど。んで、話は戻すけど、お前の名前は??」

まるで空に吹き出しで疑問符が飛びそうな感じだ。
さっき俺に聞かれた内容、見事にすっぱ抜けてんな。

「だから、名前。なんてぇの??」
「・・・・・クラウド。クラウド=ストライフです。」
「クラウドか!!それじゃぁ、改めて宜しくな、クラウド!!俺の事はザックスでいい。」

肩を一つポンと叩き、改めて挨拶。これ、常識ね。

「・・・・・はぁ・・・・?」

何言ってんだコイツ的な目で見られてもなぁ・・・・。



まぁ、そんなこんなで、今は立派にクラウドのお友達をやってるんだが、どうも最近何かが変だ。
何なんだ??・・・・・・お!?あれは!

「おー、居た居た!!」

体をビクッとさせたかと思うと、突然猛ダッシュでクラウドが走り出した。

「えっ!?おい、何で逃げるんだーっ!!」

何?何で逃げられなきゃならねぇんだ!?
そりゃぁ、あいつの居るとこ居るとこ、顔は出しちゃいるけどよ。逃げられる覚えは無いんですけど。
それよか、一般兵のお前が、ソルジャー・ザックスさんから簡単に逃げられると思うなよ!?

「・・・・はぁ・・・・はぁ・・・。ちょ、離せって!」

意外と簡単に捕まるもんだなぁ。ま、体力の違いってやつ?クラウド君、残念!!
しかも暴れるし。

「それは無理。お前、手ぇ離したらまた逃げんだろーがっ!」

でも、幾ら体力が違うからったって、瞬時に猛ダッシュは流石に堪える。
ちょっと休もうと、クラウドの手を取ったままその場にしゃがむ。
クラウドはと言うと、呆れ顔を貼り付けて俺を見てる。簡単に諦めるようなザックスさんじゃねぇって。

「くはぁ〜、いきなりのダッシュはツライなぁ。・・・っつーか、何で逃げんだ?俺、何か気に触ることしたか??」
「・・・・・・・・・・・。」

少し何かを言い掛けたが、そのまま口を閉じてしまった。悔しいからもう一度粘ってみる。

「なぁなぁ。何か気に入らねぇ事した?」
「・・・・・・・・・・・・アンタの存在そのもの??」

・・・・・・・・・・は?な、なんでですか、クラウド君!?”存在そのもの”って・・・・。
ひでぇ言われようだけど、やっぱコイツはおもしれぇ!明らかに自分より身分違いのヤツを相手に、普通、”存在そのものが気に入らない”なんて言えるか!?

「・・・・・・それ、ちょっと酷くね?」

そう言いながらも、楽しくなった俺が笑うと、訝しそうな目で見る。
それでもクラウドの腕を掴んだまま離さない。
こんな追いかけっこも悪くねぇ。覚悟しとけよ、こん畜生。