009 手紙


『 Dear:Cloud


   よっ!ビビったか?(笑)
   こうも任務が長引くとさ、何となくこういうものも出したくなるよなぁ。

   メシはちゃんと食ってるんだろうな?お前の事だから、”面倒だからいいや”
  とか言いながら、抜いてるんじゃねーかとか、俺が居なくて寂しいとか・・・・
  思ってねぇか!(笑)

   あ、ここで『メールで送ればいいだろ』とか思わないように。それは俺も考え
  た末、手紙も良いかな〜と思って書いてる訳だ。

   ところで、そっちはどうだ?
   そろそろ、時期的に寒くなって来てるんじゃねぇ?お前、田舎育ちの割りには
  意外と寒がりだったりするから、風邪引くなよ。
   っつーか、俺が任務に出てからもう2ヶ月になるんだな。早く帰りてぇ!!
   そしたらさ、お前に「お帰り(←これ重要!!)」って言って欲しいな〜。
   一方的な俺の我侭だけどさ。コレ位はいいよな。・・・・駄目か?

   とりあえず、さっさと任務を切り上げて帰るからさ、2人でどこか、旨いメシ
  でも食いに行こうぜ!!んじゃなっ。

   P.S.  言っておくけど、コレで5通目な。たまには返事くれよ〜っ!(泣)
From:Zack 』



「アンタ、真面目に仕事してるのか?て言うか、”重要”って。」

任務についてるソルジャーが、こんなものを書くだけの余裕があるのだろうか。
いや、それはあり得ない。恐らくこの手紙を書く為だけに、自分の睡眠時間を削ってまで、こうして送り付けて来ているんだろう。

「・・・・・仕方ない。たまには書いてやるかな。」

いつも貰ってばかりじゃ、あんまりだよな。
そう思いながら、普段は使ことがほぼ無いに等しい便箋とペンを手に取る。

「気になる箇所がいくつか有ったけど、それは無視してもいいのかな?」

それはそれで、後から泣き付かれるに違いない。
全くもって厄介な奴だな、ホント・・・。

「書くのはいいけど、書き慣れないから何を書いていいか分からない・・・。」

あくまで返事なんだし、書いてあることに沿って書いていけば良いんだろうけど。
いつもならメールでのやり取りだから、こうして一方的に書き綴る事は無い。

「面倒な事させるなよな、馬鹿ソルジャーめ。」


『 Dear:Zack

   まだ生きてたんだな。
   アンタが余りにもしつこいので、今回だけは特別対応だ。しかも、正直何を
  書いていいか分からないので適当に書く。当然、クレームは受け付けないので
  宜しく。

   まず、メシはちゃんと食べてるし、アンタが居なくて寂しいなんて事も無い
  ので、そこは安心してくれ。それと手紙を送れと言うから、多少なりとも面倒
  が起きてる。どうしてくれるんだ馬鹿。

   あとは・・・、こっちはまだそれ程寒くない。肌寒い程度で丁度良いかも。
  多分そっちの方が寒いんじゃない?また風邪引くなよ。

   あ、もう一つあった。「お帰り」はやりませんのであしからず。
   一生帰って来るな。煩いのが居なくて清々する。

   最後に・・・メシはアンタの奢りで宜しく。以上!


   P.S.  くだらない手紙を書いてる暇があったら、さっさと帰って来い。
        無駄に広いんだよ、この部屋!!

From:Cloud 』


「ま、こんなところかな?」

寂しいなんて言ってやらない。
きっとアンタはこの手紙を読むだけで分かってくれるから。





「め、珍しい。アイツが返事を送って来るなんて。こりゃ、槍が降るぞ・・・。」

綴られている内容は相変わらずなものではあるが、こういうやり取りの苦手なクラウド。
それでも、俺の何気ない一言で、こうして返事を送ってくれる。

「風邪引くな、か。」

また引いたら、クラウドに怒られながら介抱されるのも悪くない。
ん?って事は、またセフィロスのヤローが乗り込んでくるのか。それはそれで嫌だなぁ。

「”一生帰ってくるな”の後に”さっさと帰って来い”って言われても、”寂しい”としか読め
 ねぇぞ?」

素直じゃないのも相変わらず。そんなお前にハマってる俺は相当重症だ。

「うぉっし!さっさと帰るぞーーーっっ!!」





それから数日と経たない内に、煩い体力馬鹿が帰ってきた。
絶対にやらないと決めていた「お帰り」も、結局は根負けしてやらざるをえなくなり、ムカついた俺は、この上ない程の笑みで迎えたら、その場でザックスが撃沈してしまった。

それから暫くの間は”笑顔付きで!”というザックスからの要望が、”心臓に悪い”等の理由により、無くなった。
”心臓に悪い”って、それは一体どういう意味だ??


【 Fin. 】