007 熱 |
「う゛〜〜〜。」 「ザックス、生きてるか?」 「あ゛ぁ!?何でお前が居るんだよ!」 「居ては都合が悪いのか。それは申し訳ない。・・・・だがな、無駄な体力の持ち主である お前が、《たかが風邪》でダウンとはな。」 このヤロー。 大体、何がどうなってコイツが居るんだ?更に具合が悪くなりそうだぜ。 「ごめん。連絡を入れたらセフィロスさんが来て・・・。」 いや、クラウドの所為じゃないし。 むしろ、セフィロスのヤローは、面白半分ってとこだろう。 「体調不良が悪化したらどうしてくれんだ?」 「・・・・そうだな。同情くらいはしてやろう。」 あんだよ、やっぱり面白がってんじゃねぇか!! 「・・・・・・・この、死神め。」 「どうとでも好きに言え。・・・・・・クラウド。」 「は、はい。」 「この死に損ないを任せる。当然本日の課程をこなすのは不可能だろう。」 綺麗サッパリと俺を視界から排除して、勝手に話が進んでやがる。 ・・・・・・・っつーか、クラウドまで巻き込んでんじゃねぇよ。 「はぁ・・・。確かに課程と両立は無理ですが・・・・。」 両立させる事が可能なもんか??どう考えても無理だろうがよ。 「ふむ。ではこうしよう。本日の課程は修了したと見なす。もちろん、俺の権限で・・・だ。」 「は?」 出たぞ、”俺の権限”宣言。ホント好きだよな、職権乱用。 こいつの場合は”神羅の英雄”って肩書きだな。 「お前の上官には、後ほど俺から伝えておく。」 「は・・・はぁ。」 「気にするな。俺に意見しようものなら、実力行使も可能だ。」 「は!?」 その気持ち。よく分かる!俺もコイツにゃ、偉く扱き使われたからな。”俺の権限”とやらで。 って、納得してる場合じゃねぇんだけど。 「セフィロス〜。余りクラウドを困らせんなよ?なんてったって”真面目君”だからなー。」 「なんだよ”真面目君”って!!」 「・・・・・・・・・・。」 おーおー、ムキになっちゃって。かーわいいったら。 「ほう。クラウドは、どっかの不良ソルジャーと違って”真面目君”なのか。」 「どういう意味だそりゃ。」 「言葉通りだが?」 「・・・・・・当たってると思う。」 く、クラウドまで!? そりゃ、色々しましたよ!?でもさ、でもさっ!!! 「ひでぇ・・・・。」 「クククッ。」 楽しいか?2人で病人な俺を苛めて楽しいのか?? 「まぁ、兎に角そう言う事でひとつ頼む。ではな・・・。」 ”ではな”じゃねぇって・・・・。さっさと俺を押し付けた本人は颯爽と翻して去って行ったはいいが、クラウドの顔を見てみろ!・・・・・何か・・・・ 「どした?」 「え?いや、相変わらずセフィロスさんってカッコイイな〜と思って。」 ・・・・・ですよね。お前もセフィロスに憧れて来た口だもんな? 分かっちゃ居るけど、それを今言われるのはちと辛い? 「俺もセフィロスになりてぇ・・・。」 思わず呟いた言葉に、クラウドが反応する。 「だってよ、クラウドに”カッコイイ”って思われるんだろ?」 「なに下らない事言ってるんだ。ザックスはザックスだろ。」 「でも、クラウドに”カッコイイ”って言われるセフィロスが羨ましい・・・。」 その”何を言ってんだコイツ”的な目で見ないで下さい。切実なんすよ、俺としては。 「・・・・・いいじゃないか。ザックスはそのままで十分・・・・・。」 「へ?」 「なっ、何でもないっ!!」 それって、ちょっとは期待しても良いって事なのか?そんな頬染められたら期待しちまうぞ? 「えーっと・・・・・。ワリィんだけど、そう言う事で頼むわ。」 「仕方ない、1人じゃロクに動けないだろうし。」 「そうなんだよな。まーだ、飯も食ってねんだよ。」 そう言うと、目に見えてクラウドの眉がキリリと吊り上がった。 「何やってんだよ!そんなんで治る訳無いだろ!!」 すげー剣幕で怒られてるんですけど・・・。さっきまでのあの空気は一体何だったんでしょうか。 「だぁってよー、ダルイし頭イテェし、動きたくねぇもん。」 「だからって・・・・。はぁ〜。」 スイマセンね、お手数をお掛けして。しかも、眉間に皺寄せんなって。 「お粥で良いよな?・・・あ、卵って入れた方が好き?」 マジ!?作ってくれんの!!?? そう思いながらも、多分、今の俺はもの凄く間抜けな顔してんだろうな。 「ちょっと。アンタ、人の話し聞いてるのか?」 「聞いてます、聞いてます!卵入りでオネガイシマス!!」 実は、卵が入っていようが入ってなかろうが、俺にとっちゃどうでも良い。 要はクラウドが作ってくれるって事が重要だったりする。 「分かった。」 ・・・・・そういや、何か忘れてないか? 「お前、料理とかってすんの?」 これは気になるところだ。 もしかしたら、いつもは作ってるけど、逆に作って貰える可能性も無くは無いだろ? 「アンタ失礼な奴だな。俺だって料理くらい出来る。」 「だってよー、いつもメシ食う時は俺の部屋で食うだろ?だからさ、料理なんてしないのかと。」 「それはアンタが来いって言うからだろ!!」 「そっか!なら、今度何か頼むわ。」 「そのうちな。」 よし!何を作ってもらおうかな〜。 「それより、お粥作ってくるから、大人しく寝ててくれ。」 「りょ〜か〜い。」 ”大人しく”ってどういう意味だ。いつもは騒々しいみたいな・・・・・騒々しい、か? ま、とりあえず飯には有り付けそうだし、そんなに酷く具合が悪いって訳でも無いから、このままなら明日には熱も下がるだろうな。 ・・・・・・・キッチンに立つクラウドっていいよなぁ。 少しきつくて、しかもプチ王子だったりするけど、すっげ美人だし、色白だし・・・・・ ついでに粥も良い匂い。全然関係ねぇけど。 「なにニヤついてるんだよ、気持ち悪い。」 「・・・・・・・・・・・・・。」 思わず”未来予想図”妄想に浸っていた俺に、思いっ切りのダメ出し。 だからって、気持ち悪いってのは酷くない? 「起きられる?」 「ん〜、どうかな〜〜。」 「起きる気無いだろ。」 「しかたねぇだろ、ダリぃんだよな。」 あながちウソではない。 何せ、こっちはこう見えても38℃もある病人だし?節々が病んでるんですよ、マジで。 布団の中に少しでも風が入ろうものなら鳥肌立つし。 「熱は?」 「38℃。ちゃんと計りました。お前らが来る前に。」 「じゃー水分もまともに摂ってないだろ。」 「・・・・・っつーか、起きれねぇしさ。」 朝、何とか起きれるうちに用意したスポーツドリンクも底をついちまった。 2時間くらいは水分摂って無いだろうな、多分。 「しょうがないな。なに飲む?」 「ワリィ。それじゃー、ペットボトルに水でも。それも、とびっきりの笑顔付きで。」 「誰の?」 「お前の。」 「言いたい事はそれだけか?却下する。」 はぁ〜〜〜、つれねぇの。いいじゃねーか、こういう時くらい。 あの現実離れした可憐な笑顔で癒されたい訳ですよ。 「お待たせしました、お客様。」 そこにはに〜〜〜っこりと満面の笑みを浮かべたクラウドが立っていた。 が、こめかみに青筋が見えそうなのは、きっと気のせいじゃないだろうな・・・。 それを素直に喜んで良いものかどうか。 「あははは〜・・・・。」 「今回だけ特別仕様だからな。」 やっぱりプチ王子じゃなくて、女王様の方が合ってるかも。 ”王様じゃないの?”とも思うが、どう見てもクラウドは王様って感じじゃねぇから、女王様だな。 「どうでもいいけどさ、食欲がなくても少しは腹に入れないと治らないよ?」 ・・・・え〜〜と、それは所謂”冷ましてる”ってやつですか? 何をしてるかと言えば、粥を器に盛り、「フーフー」してくれてんだけど。 いや、まさかな。あのクラウドがそんな事をしてくれる訳が無い。 高熱で脳もやられたのか、俺? 「何?」 「いやぁ。何でも??」 当人が訝しそうな目で俺を見る。 考え直してみても、いつもは”知りません”って顔してて、こうやって進んで何かをやってくれるような性格じゃない。面倒だろうに、幾らあのセフィロスに押し付けられたとは言え、粥を作って、飲む物を用意して、しかも冷ましてくれてる!すっげぇ感動!! 「何だよ。嫌なら自分でやれ。」 「へ!?ちっ、違います!お願しますっっ!!」 「・・・・ほら。」 やべー。マジで嬉しいかも。しかも旨い・・・。 俺のペースに合わせて食わせてくれるのは助かるし、感動ものではあるけれども! 「・・・・・・・ぷっ。」 突然、クラウドが噴出した。それが、ただ噴出したんじゃなくて、クスクスと笑ってる。 何か変な顔してたか? 「もう食べられないなら、言ってくれないと分からないよ。」 「は?」 「クスクス・・・。無理、だろう?いつまで口に突っ込んでやろうか考えてた。」 「・・・・・お前、セフィロスに似てるわ。」 「一緒にするなよ。」 目尻に涙を浮かべながら笑ってる。 気付いててワザと食わせてたってオチでいいのか。 「はい。じゃぁ、これは良いとして、薬貰ってあるんだろ?」 「貰ってねぇけど、余り風邪なんか引かねぇから、前に貰ったのがあそこの引き出しに・・・。」 「期限大丈夫なのか?」 「死にやしねぇって。」 「分かった。あの引き出しの中だな。」 そう言って、薬を取りに行ったついでに、新しいコップに水まで用意してくれた。 「これ飲んだら、少しは眠った方が良いな。」 「あ?お前が居るのに寝られっかよ。」 「何言ってるんだ、風邪引き病人。俺の事は放って置いてくれていいから。読んだ事ない本も 結構あるから、それ読んで暇潰しするさ。」 「でもよ〜。」 それじゃぁ、申し訳ないだろうが。一日中、俺の介護に付き合わされて、挙句に放置かよ。 「いいから。ザックスが治ってくれないと、また俺が駆り出されるかもしれないんだぞ?俺の夢をぶち壊す気?」 「いえいえ、滅相もございません!そんじゃ、悪いけどちょっと一眠りさせてもらうかな。」 クラウドのソルジャーになる夢を邪魔する気が無い俺としては、耳に痛い一言だったりする。 ここは大人しく眠ってしまおう。 「安心しろ。ザックスが起きるまで、ちゃんと傍に居るから。」 「おぅ。目覚めてクラウドが居なかったら、俺、泣くからな?」 「・・・・・・・・・何処のガキだよ。」 「ガキで結構。ガキ上等!」 意気込んでそう言うと、またもクスクスと笑いながら、ケットを掛け直してくれる。 今日はホントによく笑う。こんな日があってもいいよな。 「なぁ、クラウド。」 「ん?どうかしたか??」 段々と眠くなって来たが、今思っている事を伝えなきゃな。 「サンキューな。」 「・・・・・うん。おやすみ、ザックス。」 「おやすみ〜。」 それからしっかりと爆睡したようで、目覚めた時には気分爽快だった。 が、「寝てまで俺を呼ぶな!」と怒られてしまい、一体どんな夢を見てたんだ俺、と頭を抱えた。 逆にクラウドが後日、俺からの風邪がうつってしまい、体力を付ける為と用意したメシがくどかったらしく、これまた「そんなクドいものが食えるか!!」と怒られてしまったことは言うまでも無い・・・。 |
【 Fin. 】 |