香登使信

「変貌されなさい。」何という驚くばかりのご命令でしょうか。ハンセン病患者の俳人玉木愛子さんは「毛虫はう蝶となる日を夢みつつ」と詠みました。私たちの朽ちる、卑しい、弱いからだが朽ちない、栄光ある、強いからだに化せられる栄化の朝を夢見つつ詠んだ俳句です。しかしその栄化の恵みにあずかる前にそれにふさわしく内的に変貌する。それが聖化の恵みです。この変貌する、「メタモルフェー」という用語は私たちが根底から変る変化を表す言葉です。今、このすばらしい変貌について見ることにしましょう。

日々の変貌の恵み

「メタモルフェー」という用語は新約聖書に三回だけしか使われていません。マタイ17章2節、�Tコリント3章18節、そしてローマ12章2節です。その箇所を通して私たちは日々の変貌の恵みを汲みとることができるでしょう。

第一に、祈りにおける変貌です。主イエスは側近の三人の弟子たちを連れ、祈るために山に登られました。「祈っておられると、その御顔の様子が変わり、その衣は白く光り輝いた」(ルカ9・29)と記されています。そうです。主イエスが変貌されたように、祈りは私たちを変貌させます。個人の祈りであれ、共同の祈りであれ、心を注ぎ出して神に祈る時、神はご自身の御手を動かし、祈りに答えてくださるとともに、祈る私たち自身を変えてくださるのです。

塩屋の学び舎で体験したことですが、裏山などで祈って帰ってくる学生たちの顔は輝いていました。祈りは世界を変えます。それとともに、祈りは私たち自身を主の御姿へと変貌させるのです。

第二に、みことばによる変貌です。「確かに今日まで、モーセの書が朗読されるときはいつでも、彼らの心には覆いが掛かっていた」(�Uコリント3:15）とあるように、かつての私たちは聖書に覆いがかけられ、聖書を理解することができませんでした。しかし、今は聖書を記された御霊の働きにより、聖書を理解し、神の恵みを知ることができるようになったのです。「私たちはみな、覆いを取り除かれた顔に、鏡のように主の栄光を映しつつ、栄光から栄光へと、主と同じかたちに姿を変えられていきます。これはまさに、御霊なる主の働きによるのです」(�Uコリント3・18)。ああ、みことばは私たちを栄光から栄光へと主と同じ御姿に変えるのです。ハレルヤ！

第三に、献身による日々の変貌です。これが本日の聖書個所です。「ですから」とあるように主イエスを信じる私たちは罪赦され、義と認められ、神と和解し、新生し、古き己れを十字架につけ、聖霊に満たされた恵みを経験するのです。その恵みを深く覚え、私たちのからだを「神に喜ばれる、聖なる生きたささげ物として献げなさい」(ローマ12・1)と勧められるように、日々、主に私たちのからだを生きたささげ物としてささげるとき、私たちはますます主の御姿に変貌されていくのです。

変貌された生涯

それでは変貌された生涯とはどのような生涯でしょうか。

第一に、神のみこころのすばらしさがわかる生涯です。文語訳に「汝んじら善にして、悦ぶべき、全き御旨を知らんがために」とあるように、神のみこころはいつも最善で喜ばしく完全であると理解できる人こそ変貌された人と言うことができるでしょう。

第二に、聖霊による賜物を活かす生涯です（12・3〜8）。謙遜に、慎み深く、キリストの体の一器官であることをわきまえて賜物を活かすのです。私たちが聖霊に満たされ、主の御姿に変えられるとき、自分に与えられた聖霊の賜物を発見することができます。主は私たちすべての者に聖霊の賜物を与えておられるのです。実に教会は聖霊の賜物の花園です。その賜物を土の中に隠したら大変です。それを主のため、教会のため、社会のために大いに用いなければなりません。預言、奉仕、教え、勧め、施し、指導、慈善などをフルに活用しようではないでしょうか。

第三に、聖霊による全くきよい愛に生きる生涯、それが変貌された生涯です。9節以下を読むと、あたかも主イエスの「山上の説教」を聴く思いがします。

まず、9節から12節に純粋なキラキラ輝く愛が記されています。無数の水玉に太陽の光があたるとき七色の虹が現れるように、ここにきよい愛が七色に輝いています。純潔な愛、兄弟愛、尊敬する愛、勤勉な愛、霊に燃え主に仕える愛、望みを抱き尊ぶ愛、苦難に耐え祈る愛がそれです。

次に、13節から21節には聖霊によるあらゆる方向に向かう愛が記されています。貧しい聖徒に向う愛、旅人に向う愛、迫害者に向う愛、喜ぶ者に悲しむ者に向う愛、弱い人に向う愛、すべての人に向う愛、そして敵にさえ向う愛です。

愛はいのちです。愛には必ず対象があります。聖霊による愛はどんな人にも向い、その人を愛をもって征服していくのです。変貌された人こそは愛の人なのです。

　

祈りにより、みことばにより、献身により、日々、主の御姿に変貌されましょう。そして神の御旨のすばらしさを知り、賜物をフルに活用しましょう。さらに聖霊による愛に生き、どんな人に対しても心からの愛を注ぎ出しましょう。