「苦しみにあったことは幸いです。」今日はつたない私の人生での証しを通して、苦しみの中に隠されている神様の真実なご愛をお伝えできればと願わされています。
私の20才の頃、熱心な信者となっていた母は、社会人第一歩を踏み出す私を案じ、しなやかに半ば強制力を秘めて、日曜日ごとに私を神戸中央教会に誘い始めました。
私の勤める神戸市立保育園の同僚に熱心な政党員の中堅のやり手の方がおられ、教会に通う私にあえて保育内容、言動など厳しく忠言、時に園児らの前で怒声を浴びせることもありました。どうすることも出来ない私は、トイレに駆け込んでは「神様、助けてください」と叫ぶ日常が始まったのです。
その保育現場から逃避したいと思ってか、学生時代、地方の幼児向けのラジオ番組のお手伝いをしていた私は、華やいだ音楽の世界を目指し、コーラス団体に入り、個人レッスンを受けていました。
ところが過労が重なり、声帯麻痺に陥り、より深刻な苦しみの中で一層真剣に神を呼び求めたのです。その叫びに神様は、「まず、神の国と神の義を求めなさい。そうすればこれらのものはそえて与えられる」と答えられました。私は、「あなた様を第一に求めます」と祈ると、音楽への執着心は荒縄がほどけるようにほどけ、声も全く回復しました。このことは苦しみが私をして神を呼び求める者に変えた最初の経験となったのです。
初陣の奉仕場の地垂水教会は多忙を極め、週間の家庭集会や定期集会は朝昼晩と続き、主人は家の手助けは全くできませんでした。ある元旦礼拝前、はしかの3人の年子の一人をおぶり、二人の手を繋ぎ、医院に向かう途次、晴れ着姿の人々の中の一老人が、「オー、オー、何たるこった」と同情の目を向け通り過ぎられた一コマも忘れられません。そうした限界状況の中で駆け込むところは神のふところ以外にありませんでした。
さらに多忙極まる神学校へ移り、何十人もの学生さんの出入り、昼食の手伝い、学校や寮の仕事など、子育ての余裕もなく自信喪失、当時はやりの「だめ親」とは自分のことかと落ち込む日々でした。
そうした中で末の子の大試練が訪れました。胎児性横紋筋肉腫という筋肉のがんをもって生まれた子は、生後2週間半にして左足を大腿部から切断、神学校の教師、学生の熱祷、親族、教会の信者さん、さらに日本伝道隊の世界を結ぶ祈りの輪の中で奇跡的に息子の命は守られ、さらに私たち夫婦は臨在の主に近づけられ、ついには苦しみをも喜ぶ者に変えられたのです。
私は11年前の未破裂脳動脈瘤の手術も皆様の熱祷より癒やされましたが、一昨年9月、手術不可能な脳底部に動脈瘤が判明、教会役員さんの按手の祈り、教会の皆様の祈りにより、現在動脈瘤の増悪傾向は収まっています。私は、かつて読んだ信仰書の「わが汗よ、わが高熱よ、歌となれ」の一節を思い起こし、「わが動脈瘤よ、歌となれ!」と主を褒め称えました。主は苦しみさえも喜び、主を褒め称える者に変えてくださるのです。
昨年、娘の真史は、1月3日、皆様方に見送られ栄光の御国へと移されました。12月8日のコンサートに備え、娘を香登に連れて来ましたが、激しい頭痛が続く中で長船クリニックでの検査の結果、脳全体へのがんの転移が判明、急遽、岡山協立病院緩和ケア病棟に入院、3週間、夫の治哉さんと家族全員の濃密な交わりを楽しみ、天国へ。コロナ禍の前でしたので、皆様のご愛により、300名もの会葬者による音楽葬を営んでいただきました。
娘は、神戸ルーテル神学校を休学中の治哉さんが献身を成就して欲しいと切願、夫婦で祈り合う中で、娘の方から治哉さんが彼の母教団である仙台にあるルーテル同胞聖書神学校で学ぶことを提案しました。娘が神戸の実家に戻り、治哉さんがアルバイトで生活費を稼ぎ、月一度神戸に帰り、娘を病院へという綱渡りのような提案です。結婚以来、仕事以外一時たりとも二人は離れたことはなく、毎日欠かさず2時間にも及ぶ御言葉と祈りの時を持ち続けてきました。二人は祈りあい、神学校や母教団の責任者とも相談、私たちにも祈りを求めてきました。仙台と神戸に別れ、夫の献身成就の道を探り求める中で、暗きの長サタンがそれに乗じて濃密な夫婦の間にさえ溝を作ろうとしましたが、主は圧倒的な勝利を与えられました。
「事の起るときに、わたしは常にそこにいる」(イザヤ48・16、新共同訳)。娘は入院した翌朝、美しい朝明けに美しい瞳を向け、きれいな声で、「美しいこの空を・・・ただ眺めているだけで、そら君もわかるでしょう、神様がわかるでしょう」と歌い出しました。事の起るとき、わたしは常にそこにいる!苦しみは信仰者をして主の臨在に近づける。ハレルヤ!
苦しみにより、神を呼び求め、苦しみを喜ぶ者となり、主の臨在に近づく。苦しみにあったことは、私にとって幸せでした!苦しみよ、わが歌となれ!真にハレルヤです。
日本イエス・キリスト教団 香登教会
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