コロナ渦の中で今年も天国礼拝を迎えることができました。御国の栄光が一層輝く天国礼拝において御国に移された諸兄姉を偲びつつ、この追悼礼拝を守りましょう。
殉教の死を前に使徒パウロは、 「私が世を去る時が来ました」(6)と告白しています。「世を去る」、原意は船が大航海に向って錨を上げることです。死は終りではなく、出立の時、永遠の栄光に向って錨を上げる時であるというのです。
私たちは死を人生の終りと考えます。しかし、死は出立であり、永遠の栄光に向って高らかに出港のドラが鳴り響く時なのです。
私たちはまた、死を「お見送り」と考えます。しかし、死の本当の光景は「見送り」ではなく、「迎えられる」時なのです。
先日、東京は柴又の渡邊泰範牧師から次女への追悼の詩が送られてきました。その第一行目はこうです。「天にかけ上った真史さん。主イエスが立ちあがって、迎えられた真史さん。」確かにこれが信仰者の死の真の光景です。主イエスが、天の大軍勢が、そして愛する多くの人々が大歓声を上げて「迎え入れる」時、それが信仰者の死の光景なのです。
使徒パウロにとって「世を去る時」は「栄光への出港の時」、「主に迎えられる時」でした。
この栄光へ向かう時、「私は勇敢に戦い抜き、走るべき道のりを走り終え、信仰を守り通した」(7)が使徒パウロの証しでした。信仰生涯は一面戦いの生涯です。信仰の火をかき消そうと悪魔は必至です。しかし、パウロは勇敢に「戦った」だけでなく、「戦い抜き」ました。信仰のアスリートとしても、「走った」だけでなく、「走り抜き」、信仰の管理者として委ねられたものを「守った」だけでなく、「守り抜いた」のです。
ですから、パウロはこう確信するのです。「あとは、義の栄冠が私のために用意されているだけです」(8)と。私たちが信仰生涯の終りに、いえ、栄光への出港において、このような確信を抱くことができるため、日々の信仰の戦いを、日々の信仰のレースを、日々の信仰の管理、使用をいよいよ大切にしようではありませんか。
「その日には、正しいさばき主である主が、それを私に授けてくださいます」(8)。さばき主なる主は、罪をさばくだけでなく、善に対して正当に報いられるお方です。私たちの罪の裁きはすでに主イエスの十字架の上で裁き済みのものとなっています。主の恵みによって行ったあらゆる善に対して主はすばらしく報いてくださいます。それが「義の栄冠」です。最高の栄誉なのです。
しかし、この大いなる約束は、信仰の勇者パウロだけではありません。「私だけでなく、主の現れを慕い求めている人には、だれにでも授けてくださるのです」(8)。
「主の現れ」とは主の再臨を意味します。広義には栄光の主にまみえることです。現在主イエスを見てはいないが、イエス様を愛し、ことばに尽せない、輝きに満ちた喜びにあふれて、主イエスにお会いすることを待ち望んでいる人、その人こそが「主の現れを慕い求めている人」です。
使徒パウロのような信仰生涯を送れなかったとしても、時には挫折したり、横道にそれたことがあったとしても、今、主イエスの罪の赦しを信じ、神との平和を得て、感謝しつつ主を慕い求めるとするなら、恵み深い主は義の冠を用意して待っておられるのです。
ある冬季オリンピックのスキーの長距離レースのとき、すでに金、銀、銅の勝者も決り、レースは終ろうとしていました。しかし、まだ最後のランナーが姿を見せません。その選手のため、国王は特別の栄冠を用意して待っていました。観衆の誰も立ち去りません。途中、挫折したり、転倒したりしたこの敗者のランナーを国王も観衆も待ちました。彼は必ず来ると、信じて待っていたのです。やがて彼の姿が現れたとき、勝者にまさる歓声が湧き上りました。
護さんと二人三脚で礼拝の花を生け、教会学校を見守り、聖歌隊に励み、教会生活、家庭礼拝を守り、幼子のような純真な信仰の持ち主の廣石シナ子さん!
23才にして完全失明、中途失明者の雅道さんと一心同体で立派に二人の息子を育て、炊事、洗濯、掃除、裁縫をこなし、舌を使って針の糸を見事に通した信仰の母大塚鞆枝さん!
二つのがんを発症、「今、あなたはエステル」と、主にすべてを明け渡し、がんが癒されてからでなく、がんと共生しつつ、ピアノ演奏と証しでいのちを燃やし尽した伊藤真史さん!
若き日に伊部の学生会で信仰が培われ、明るく純情な生涯を歩まれた奥平伸顕さん!
矢掛から香登に移り、若き日に香登教会の学生会に属し、誠実な生涯を全うされた竹内健一さん!
今、雲のように私たちを取り巻いている御国に凱旋した愛する者たちのエールを受け、彼らとの再会を望みつつ、信仰の創始者であり完成者である主から目を離さないで、自分の目の前にある競争路を走り抜こうではありませんか。
日本イエス・キリスト教団 香登教会
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