香登使信 

日本イエス・キリスト教団香登教会

2020年5月24日第820号

「バビロンの川のほとりで」詩編137章1〜9節 工藤弘雄牧師

 バビロンの川のほとり、それはイスラエルの民の捕囚の地でした。そこで歌われた本篇の鍵の言葉は、嘆きと思慕と報復の三つです。感染拡大の中で在宅礼拝を余儀なくされている私たちの中にも、一脈通じる嘆きと思慕と報復があるのではないでしょうか。

バビロンのほとりでの嘆き

 まず一〜四節をご覧ください。「バビロンの川のほとり/そこに私たちは座り/シオンを思い出して泣いた。街中の柳の木々に私たちは/竪琴を掛けた」(1〜2節)。

 ユーフラテス川の運河のほとりで、柳の木に竪琴を掛け、茫然とする詩人の姿は何と悲哀に満ち、痛々しいことでしょう。三〜四節を見ると、バビロンの征服者が、余興に「シオンの歌を一つ歌え」と言ったからです。酒宴の席で黒田節の代用に讃美歌を歌えと言われ、歌える信者がいるでしょうか。

 讃美歌二八三番に「河べの樹にかけし雄琴、今しもはずして神をたたえん」とありますが、捕囚の地での悲哀が切々と伝わってきます。感染症拡大の不安の中で会衆のいない会堂で説教をする牧会者、会堂から離れて礼拝をささげる信徒たち、そこに嘆きがあって当然でしょう。牧師たちは信者に思い馳せ、信徒たちは動画や音声、週報や説教要旨で礼拝を守る。緊急事態での最善の礼拝様式であったとしても、それでも本来のあるべき会堂での礼拝を思えば、残念な思いは否めないことでしょう。

 神の民イスラエルが、国を滅ぼされ、聖都を破壊され、バビロンに捕囚された時の悲哀の涙は、悔い改めと無念と待望が交錯するものでした。実に公的礼拝を失った時の悲哀と嘆きの涙にこそ、神の民の真骨頂があるのです。

聖都エルサレムへの思慕

 五〜六節をご覧ください。ここに聖都エルサレムへの思慕が切々と歌われています。讃美歌一九二番では、「ああ懐かし、いのちをもて、贖いたまいし、主のみとのや」、さらに「わが涙もこれに注ぎ、祈りも望みもこれにかかる」と歌われるのです。そうです。今も愛する香登教会の皆さんが、教会を慕い、主日礼拝を慕い、共に祈り、讃美し、聖書を学び、共に交わることをどれほど待ちこがれていることでしょうか。

 詩人は、捕囚の地バビロンで、「エルサレムよ/もしも 私があなたを忘れてしまうなら/この右手もその巧みさを忘れるがよい」(5)とエルサレムを激しく思慕し、決意をもって歌いました。

 次女は直腸がんの手術後、九割以上の確率で指にしびれが出るという抗がん治療を受ける中で、一回もしびれが残りませんでした。その後、「私の賜物は主のものです」と全てを主にささげ、さらに続く乳がん手術後、ここゴスペルホールでCDを収録しました。収録の最中、指がはれて出血、「みこころでなければ収録を止めます」と祈った翌朝、奇跡的に癒され、収録は終了しました。以後、痛み苦しむ友と分かち合うため演奏活動に専念しました。娘の思いは、「あなたを忘れるようなことがあれば、この指を取り去ってください」でした。

 さらに詩人は、「もしも 私があなたを思い出さず/エルサレムを至上の喜びとしないなら/私の舌は上あごについてしまえばよい」と歌います。妻は若き日に地方のラジオ番組で「歌のおばさん」のお相手の「歌のお姉さん」として歌い、さらに音楽を志す中で、声帯麻痺の宣告を受け、初めて神に叫び祈りました。その時、「まず神の国と神の義を求めなさい。そうすれば、これらのものはすべて、それに加えて与えられます」(マタイ六:三三)の御言葉がのぞみました。そして一心に神の国を求めたとき、すべての呪縛から解放され、喉も癒やされたのです。そして「あなたを忘れるようなことがあれば、この声を取り去ってください」との主への献身の思いがその時から芽生えたのです。

 何を失っても私たちを永遠の滅びからお救いくださった主と主の家を忘れない。このような神の国への思慕は、強靭な信仰となって、信仰者を神への献身に導くのです。

破壊者への報復の祈り

 七節以下は、エルサレムを破壊した者への強烈なのろいの祈りです。ヤコブの兄弟であるエドム人が、バビロン軍により聖都エルサレムが破壊されたとき、事もあろうに略奪し、避難者を殺害したこと(オバデヤ10〜15)に対する裁きと、エルサレムの破壊者バビロンへの激しい報復が歌われています。それはきわめて残酷な願望ですが、主の敵に対する強烈な怒りの表現と言えるでしょう。

 新型コロナウイルスの背後には  人類の共通の敵である悪魔がいます。感染症との戦いの様々な分野で国民が一つとなって闘っています。憎むべきはウイルスであり、悪魔です。その破壊者サタンへの激しい怒りがあるでしょうか。

 今、私たちにバビロンの川のほとりでの悲哀はあるでしょうか。「わが喜びほかにあらじ、楽しき交わり、きよき契り」(讃美歌192)という神の民の礼拝、神の民の交わりへの思慕はあるでしょうか。さらに天のふるさと、永遠の都へのホームシックはあるでしょうか。さらに罪と死をもたらせた悪魔への激しい怒りがあるでしょうか。

トップページへ


日本イエス・キリスト教団 香登教会

〒705-0012 岡山県備前市香登本550-3
TEL:0869-66-9122 FAX:0869-66-7311
E-mail:Kagato☆kbh.biglobe.ne.jp
スパム防止のため「☆」を「@」に書き換えてお送りください 。
(C) 2017香登教会