鎧岳( よろいだけ)894兜岳(かぶとだけ)920m                  [近畿・曽爾] 

 

 10月9日に事故に遭い、車が壊れた。一旦停止もせずに脇道から出てきた車に横から衝突されて大破。幸い怪我はなかったが頭からガラスを被った。いい災難である。廃車にして買い替えることにしたのだが、 最近の半導体不足で新車の納入は2月になるとのこと。ありゃ〜。いい季節なのに山に行けない。
 ディーラーが軽の代車を用意してくれて何とか足は確保できたが、さすがに遠出はできない。仕方ないので電車とバスで行ける曽爾の山に行くことにした。
 俱留尊山や光古山などを登りに何回か曽爾には行っているが、その度に曽爾の山里を見下ろしている鎧岳が気になっていた。展望は利かないとガイドブックにはあるが、偶然もたらされた機会なので出かけてみることにした。

 名張からのバスを新宅本店前バス停で降りたのは自分だけだった。他の乗客は皆、曽爾高原へ行くらしい。まあ、当たり前である。ちょうどススキのいい季節だし、このバスはススキ見物の季節運行バスなのだから。

 

 頭上には既に鎧岳が圧し掛かっているが、こちらからは鎧岩の岩壁が見えないので、普通の山に見える。
 バス道路から民家の間を抜けて植林地の中の林道を進む。コンクリート舗装の林道から作業道のような山道になり、太良路(たろうじ)への分岐を過ぎて、なおも杉林の中を登っていく。

 広い斜面は一面の植林地で見上げてもどこまでも杉が立ち並んでいる。少し檜が混じっているところもあるが、ほとんどが杉だ。40度くらいあるきつい斜面をジグザグを切りながら ただひたすら登っていく。もちろん展望はない。花も鳥の声もない。

どこまでも杉の植林地が続く

 

 稜線に出れば雑木林になるもとの思っていたが、1時間喘いで登って来た稜線の上も植林地だった。そればかりか尾根を越えた反対側斜面も一面植林地だった。こんな山も珍しい。 普通は稜線の上ぐらいは自然林を帯状に残しておくことが多い。
 日陰の暗い稜線上には北風が吹いていて、先ほど暑くて脱いだフリースをまた着込む羽目になった。秋の山は体温調節が難しい。
 峰坂(むなさか)峠への分岐を過ぎるとわずかな登りで鎧岳山頂に到着。山頂の直前まで針葉樹林で、山頂の周りだけがコナラなどの広葉樹だった。

 ガイドブックのとおり、木立が繁っていて展望はない。樹々のすきまからわずかに俱留尊山側の稜線が見えるくらい。展望はないが腹が減ってしまったので取りあえずおにぎりとミニカップうどんを食べて一回目のお昼とする。
 ちょうど正午になり、山の下から「恋は水色」のメロディー流れてくる。

鎧岳山頂の三角点

 

 食べ終わってそそくさと次の兜岳へ。分岐まで戻り、再び植林地の中を下る。急な斜面で所々こフィックスロープが張られている。峰坂峠まで下っても相変わらず植林地。とことん植林がされている山だ。暗い峠を風が吹き抜け気分も暗くなる。

 兜岳の登りにかかるとまもなく植林地は右側斜面だけになり、左側は明るい雑木林になった。稜線は険しくなりフィックスロープが次々に現れる。傾斜がきつくてさすがに植林はできないようだ。灌木につかまり、ロープ にも頼って体を引き上げる。山歩きを再開して間がないが、脚の調子はいい。
 山頂に近づくとやっと展望が利くようになり、周りの山が見え始めた。鎧岩の岩壁の向うに曾爾高原のススキの原がまるでカールのように見え、6年前に登った古光山も良く見える。鎧岳の遥か下には曽爾の山里が細長く谷に沿って延びている。

 

鎧岩と曾爾高原遠望

 

古光山 (背後は三峰山)

 

 たどり着いた兜岳山頂はガイドブックの記載とは違って、山頂一帯の木が間引きされていてかなり周りが見えるようになっていた。先ほどまで鎧岳の陰になっていた室生火山群の最高峰、俱留尊山の山頂も見えるし、北側からは名張の市街地も見える。もう少し灌木を刈り払ってもらうと足元の里も見えて高度感が出るのだが、 それが少し残念。
 二度目のお昼で残りのおにぎりとアンパン、デザートにカップの杏仁豆腐を食べる。紅茶も飲んで景色を眺めながらのんびりする。

 しかし、ふと気が付き、コースタイムを確認してみるとあまりゆっくりもしていられない。横輪からのバスはもう間に合いそうもないので、太良路まで車道を歩いて曽爾高原からの帰りの季節運行バスに乗るしかない。それを逃すと17時までバスがない。

 

兜岳山頂 俱留尊山

 

 兜岳からの下りはここまでで一番の急な道。岩だらけの尾根をフィックスロープと木の根にすがりながらひたすら下る。途中で今日初めて夫婦連れのハイカーとすれ違う。だいぶお疲れの様子だが、この道は下りの方が 滑らないように気を遣わなければならないのでしんどい。

 傾斜が緩くなって大岩の上を過ぎるとまた植林地になり、鞍部に降り立つ。左手に沢沿いに下って行くと林道に出たが、林道の手前の沢道が崩れていて少し分かりにくい。

国見山 (左奥は住塚山)

 

岩尾根を下る

 

ミヤマガマズミ

 降り立った林道は東海自然歩道になっていて、ここから室生寺の方に通じているらしい。林道脇の延命地蔵から少し下ると済浄坊の滝の標識があるが、滝まで500mとあるので、先を急ぐためパス。林道近くの長走りの滝はすぐ下に見ることができる。

 横輪から太良路までの車道からは鎧岳のその異様な姿に見とれて写真を撮りながら歩いていたらバスの時刻が迫ってきて、最後は走る羽目になってしまった。

長走りの滝

 

横輪からの兜岳

 

岳見橋付近から見上げる鎧岳

 曽爾の里から見上げる鎧岳、兜岳の姿に魅せられて今回登ってみたが、この山は登るよりも見る山だった。特に鎧岳は登山道の周りががほとんど植林地で、あまり楽しくなかった。
 山渓の分県ガイド「奈良県の山」では横輪から兜岳に登り、峰坂峠から鎧岳をピストンして太良路に下る道が紹介されているが、兜岳のロープの急傾斜を登りに使えるし、鎧岳の植林地の歩きが短くなるのでこれがベストだと思われる。
 今回は季節運行バスなので横尾から登ることは出来ないが、太良路からガイドブックのルートを逆に歩いた方が良かったかもしれない。

ススキと鎧岳

 

鎧岳、兜岳ルートマップ


[山行日] 2021/10/29(金)
[天気] 快晴           2021年10月の天気図(気象庁)
[アプローチ]

JR岡崎 6:25 →(区間快速)→ 7:10 名古屋・近鉄名古屋 7:30 →(特急)→ 8:58名張
名張駅西口 9:35 →(三重交通)→ 10:15 新宅本店前
 

[コースタイム]  
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
1:30 10:20 新宅本店前バス停発    
10:45 太良路方面分岐    
11:35 稜線    
11:50 鎧岳山頂(893.6m) 0:20 15℃
1:10 12:10  
12:35 峰坂峠    
13:20 兜岳(920m) 0:30  
1:40 13:50  
14:25 延命地蔵    
14:50 曽爾横輪バス停    
15:30 曽爾役場前バス停着   全行動時間
4:20     0:50 5:10
 
[地図] 俱留尊山、大和大野 (1/25000)

 

[風景印] 曽爾局
 (奈良県宇陀郡曽爾村葛829-2)

・図案
  曽爾高原、お亀池、少年の家