小遠見山( ことおみやま)                         [北アルプス] 2007m

 

 昨年のGWは白馬山麓で過ごしたのだが、白馬大橋や青鬼集落から残雪の後立山連峰の眺めを堪能し、新緑を楽しみ、美術館を訪れ、白馬周辺のすばらしさを再認識した。そのいい思いを再び味わいたいと、昨年とは違うロッジを予約して、今回も2泊3日で夏休みを過ごそうとやってきた。

 恒例で、まん中の1日は山歩きに当てることにしているのだが、今回はアルプスの麓ということで、手軽にピークを踏むことができる山が見つからず、ゴンドラを利用し遠見尾根を小遠見まで行くことにした。遠見尾根は五竜岳へのメインルートであるが、五竜 に登った時は鹿島槍から縦走し、唐松を経て八方尾根を下ってしまったので、遠見尾根は歩いたことがない。ゴンドラの山上駅周辺には高山植物園があるらしいので、天気が悪くてもそこそこ見る物はあるだろう。

 五竜とおみのテレキャビンを降りると、正面が唐松岳。でも山頂は雲の中。
 天気が良ければ、八方尾根の向こうに白馬三山も眺められるはずなのだが、今年の夏は天気が安定していたのは梅雨明けして2週間くらいだけ。台風6号が通り過ぎた後は、大気が不安定な状態が続いている。まあ、夏山はこんなもんだと諦めつつ、高山植物園の中を登る。
 展望リフトで地蔵のケルンのすぐ下まで行けるのだが、これ以上楽をしたら山登りではなくなってしまうので、当然歩く。

雲の中の唐松岳(テレキャビンのアルプス平駅から)
 

 この高山植物園には200種類以上の植物が植えられているそうで、目玉は「ヒマラヤの青いケシ」らしい。青いケシには興味はないが、植物の名板にはチョウノスケソウとかウルップソウとか魅力的な名前が書いてある。だが、盛りは6月から7月ということで、盛夏の今は咲いていない。目立つのは 思わず撫でてしまいたくなる、カライトソウのピンクの房くらいだ。

 高山植物園はスキー場のゲレンデなので日影がなく、じりじりと焼かれてリフトの降り場に到着。ここから地蔵の頭はひと登りである。

カライトソウ、奥のピークは地蔵の頭
 

 地蔵の頭のケルンの回りはトレッカーに観光客が混じり大賑わい。山の方は相変わらず雲の中だが、下界は霞んでいるものの見通しは利いている。白馬の街が良く見える。尾根の足元は意外に田んぼも多く、緑が平らに拡がっている。 正面にぼんやり見えるなだらかな稜線は菅平の根子岳だろうか。

地蔵のケルン
 

タマガワホトトギス タカネセンブリ
 

 地蔵の頭から少し降りたところに分岐がある。左は地蔵の頭の回りを巡ってゲレンデに戻るアルプス平自然遊歩道で、直進するのは小遠見山へ続く遠見尾根の登山道。分岐を過ぎる とぐっと人影が少なくなる。

 分岐からは樹林の中の道になる。登山道の脇にはタマガワホトトギスやトリアシショマなどが咲いている。下山者 のグループに何組もすれ違うが、ほとんど軽装なので、小遠見山をピストンするトレッカーだろう。

 山麓側の展望が開けたところが見返り坂。ベンチがあって一休みできるが、埋まっていて座れない。ぼちぼち登ろう。

見返り坂から地蔵のケルンを振り返る
 

 見返り坂からは階段が続く。登山道はよく整備されているが、階段で直登するところが多く、ゆっくり登らないとしんどい。

 この季節なのでそんなに花は多くないけれど、コメツツジ、ホツツジなどが両脇に続き、足元にはミヤマママコナのピンク、アカモノの赤い実などが目立つ。

一ノ背鬘
 

ホツツジ ミヤマママコナ
 

 名前の由来に物語でもありそうな「一ノ背鬘(いちのせかずら)」からは稜線歩きになり、傾斜は少し緩くなる。両側が開けていて、晴れていれば気持ちのいい尾根道なのだが残念だ。急な階段を登りきると二ノ背鬘で、小遠見山のピークはもう目の前。ザレた尾根を進み、小遠見の巻き道の分岐を直進すると山頂に到着。

 見返り坂を過ぎたあたりから湧いてきたガスが次第に濃くなって、既にほとんど展望は利かない。わずかに南側が明るくて、昔、クロスカントリースキーで歩いた大谷原の開けた谷筋が見える。
 頭のすぐ上を雲で抑えられているような感じで、後立山の稜線も、伸ばした視線から上が雲に覆われている。ちょうど雲の切れ間から陽が射しているのか、鹿島槍北東面のカクネ里の雪渓がひときわ明るく光っている。

カクネ里の雪渓
 

 山頂には何組かのトレッカーがいるが、展望が利かず、皆、手持ぶさたの感じ。まだ10時過ぎなので、持ってきたおにぎりを食べる気にもならず、僕もただぼんやりとカクネ里の雪渓を眺めるだけ。
 八峰キレットが見えそうになることもあるが、稜線の雲が消えることもなく、こちらまでガスが流れ始めたので下山することにする。

 来た道をそのまま戻り、地蔵の頭の手前の分岐で 右折し、アルプス平の遊歩道を経由して帰る。こちらのルートは地蔵のケルンまで来た人が下山に利用するようで、木道を次々に下ってくる。
 アルプス平は小さな湿地になっていて、地蔵の沼と名付けられ、大きなミズバショウの葉に囲まれた小さな池もある。キンコウカ、オオバギボウシ、イワショウブなど水気が好きな植物が見られる。

山頂の
 

ツリガネニンジン オオバギボウシ


 小さな湿地の最後はニッコウキスゲ。夏の定番の花が見送ってくれる。

ニッコウキスゲ
 

 スキー場に戻ると一面のピンク。カライトソウではなく、アカバナシモツケ。手入れはされているかもしれないが、これは植えたものではなく 、元々ここに生えているもののようだ。伊吹山の山頂も8月の初めころに、一面にシモツケが咲くそうだが、まだ見たことはなく、こんな感じだろうかと想像する。
 見せるために植えられた高山植物よりも、見られることはなくとも、ただ咲いている野の花の方が感激は大きい。

アカバナシモツケ

 

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[山行日] 2010/8/8(月)
[天気] 晴れのち曇り
[アプローチ] 7日 八方 (R148号)→ 五竜テレキャビン駐車場    [約27km]
・駐車場無料。

テレキャビンとおみ駅(ゴンドラ)→ アルプス平駅
 

[コースタイム] 8:40 アルプス平駅 (0:20) 地蔵のケルン (0:15) 見返り坂 (0:25) 一ノ背鬘 (0:20) 10:05 小遠見山山頂
10:35
(0:30) 見返り坂 (0:20) 地蔵の沼 (0:30) アルプス平駅 12:05 

(山頂まで:1:20+山頂から1:20=計2:40)
・下山は写真を撮りながらなので、参考にならず。)
[地図] 神城 (1/25000)

 

[ゴンドラ] 白馬五竜テレキャビン
・往復1,600円

・地蔵のケルン直下まで行く「アルプス展望リフト」も併せて乗ると往復2,000円
・山上の高山植物園は入園無料。

小遠見山のトレッキングマップ(PDF)はこちら

[宿] 白馬八方ログハウスビレッジ
・八方尾根の麓にある、ログハウスのコテージ
    北安曇郡白馬村八方3003   TEL0261-72-8001

・目の前が白馬ジャンプ場。山々の眺めがいい。
・コテージにはデッキがあり、うちのような屋外犬には都合がいい。
・広いドッグランもあり、犬も人も居心地がいい。