茅ヶ岳(かやがたけ1704m金ヶ岳(かながたけ)1764m                     [奥秩父] 

 

 茅ヶ岳はご存じ「日本百名山」の著者、深田久弥終焉の山。 百名山は3年前の2018年に完登したが、一生をかけて楽しませてもらった百名山登山のきっかけをいただいた深田久弥に感謝を込めて、以前から登りたいと思っていた。
 深田久弥が茅ヶ岳の登山中に亡くなったのは68歳の時なので同じ歳になったら登ろうと考えていたが、大腸がんの手術をしたこともあり、来年元気で山登りが出来ているか分からないので、一年早いが登ってしまうことにした。。

 中部横断道が全線開通したので、新東名回りで横断道、中央道を経由して韮崎インターへ。登山口の深田久弥記念公園駐車場に行ってみるとトイレもあり、ここでの車中泊も考えたが標高が高く寒そうなので、韮崎市内の道の駅へ移動。こちらは登山口よりも500m以上低いので、3℃以上暖かいと思われる。暖房便座のトイレもあり、常夜灯も点いている。
 低気圧が抜けた後で風が強い夜だったが、朝まで寒さを感じることなく眠ることができた。

 翌朝、登山口の駐車場に戻り歩き始める。既に3台車が止まっている。
 しばらくは山麓の赤松林を緩やかに登っていく。カラマツやナラ類も少し混ざっている。登山道にしては道幅が広いが、遊歩道というには転石が多くて歩きにくい。おそらく使われなくなった林業用の作業道なのだろう。
 一度舗装された道に出るが、ここが地図上で「分岐」と書かれているところのようだ。横断してまた林間の登山道になる。

 

涸れ谷の登山道 谷の突き当たりが女岩

 

 登山道はしだいに涸れた谷の底を歩くような感じになり、周りもカラマツや杉の植林地から落葉樹の林に変わっていく。谷底なので陽はまだ射さないが、少し明るくなってきた。相変わらず岩がちの歩きにくい道だ。茅ヶ岳は古い火山なので、火山由来の岩のように思われる。
 「女岩」という記述がガイドブックにあったので大岩か割れ目の入った岩を探しながら歩いてきたが、実際の女岩は谷の突き当たりの岩壁だった。視座を変えると岩壁の下に穴が 開いているようで、これが女岩の謂れかもしれない。

 

  女岩の岩壁を右の山腹を登って巻いて上に出ると谷は広くなり、一面のミズナラと思われる落葉樹の中を、登山道はつづら折りにコルに向かって登っていく。
 

 先月の雨飾山の時もそうだったが、登りでは体が重く感じられて脚が上がらず、息が切れる。こんな時はつい「いつまで登れるだろうか?」と弱気になってしまう。
 後から来た単独行の登山者があっという間に追いついて、抜いていった。

 

落葉樹林

 

女岩のコル 深田久弥終焉の地の碑

 

 斜面を登り詰めたところが女岩のコルで、そこから少し尾根を登ったところに「深田久弥先生終焉の地」の石碑が立っている。死因は脳卒中だったそうで、石碑の 側面には1971年3月21日11時23分と亡くなった日時が彫り込まれていた。お墓ではないが合掌。

 

 終焉の地の碑から岩の多い急な尾根を登り切ると茅ヶ岳の山頂に到着。
 
広く開けた山頂には意外にも誰もいない。この360度広がる大展望を独り占めとはなんと贅沢なことか。
 振り返ると新雪の富士が逆光に輝き、自分ひとりに微笑みかけてくれているようだ。

茅ヶ岳山頂からの富士

 

 富士を挟んで左手は大菩薩嶺から続く奥秩父の山で、一番近くは山頂に五丈岩がポチッと見える金峰山。右手は南アルプスの前衛の鳳凰三山が屏風のように立ち上が っていて、地蔵岳のオベリスクも見える。どちらも山頂付近に雪をまぶしている。
 鳳凰三山の左肩には間ノ岳が顔を出し、そのさらに左手には荒沢岳、聖岳など南アルプスの南部の山々が続く。スマホのアプリで調べてみると上河内岳や笊ヶ岳も見えているようだ。
 鳳凰三山の右手には甲斐駒がかっこいい。

 

金峰山

鳳凰三山

 

聖岳(左奥)、荒沢岳(右)

アサヨ峰(左)と甲斐駒(右)

 

槍穂連峰

 

八ヶ岳、左から権現岳、阿弥陀岳、赤岳、横岳

 甲斐駒の右手には遠く真っ白な乗鞍岳が見え、さらに右手に北アルプスの峰々が続く。槍穂連峰が特に美しく、大キレットの深さがよく分かる。奥穂は前穂と重なってしまっているようだ。
 八ヶ岳は北アよりも近いので迫力があるが、北アほど白くない。険しい稜線に赤岳がひときわ高く見える。 
 

金ヶ岳(中央奥)

 

 山頂で一休みした後、奥にある金ヶ岳に向かう。しかし、これには少々の決心が要る。というのは稜線伝いとは言え、100m下って150m登らなければならないし、ガイドブックには茅ヶ岳ほど展望 が利かないとある。でもまあ時間はあるし、金ヶ岳は山塊の最高峰でもあるので、取りあえず行ってみることにする。
 予想通りかなり下って鞍部に降り、少し登って石門をくぐる。岩稜の険しい道を上ると背後に茅ヶ岳がせり上がってきて、背後の富士といいバランスになっている。
 木の根をつかんで急登を登り続けると観音峠への分岐のあるピークに着き、さらに進むとやっと金ヶ岳山頂。やっぱりしんどかった。

 

石門

 

富士と茅ヶ岳

金ヶ岳山頂から鳳凰三山、アサヨ峰、甲斐駒

 

 金ヶ岳山頂も誰もいない。山頂は木立に囲まれているが南アルプスの方角だけ展望が開けている。茅ヶ岳からの景色とあまり変わらないが、 茅ヶ岳では見えなかった北岳が、鳳凰三山の観音岳と地蔵岳の間に顔を出している。
 釜無川が流れる目の前の大きな谷は糸魚川静岡構造線だが、フォッサマグナ(中央地溝帯、大地溝帯)の西縁にあたり、その名のとおり大きな溝であることが実感できる。

 

観音岳と地蔵岳の間から北岳が覗く

 

金ヶ岳山頂

  同じ道をたどって茅ヶ岳の山頂に戻ったら、今度は登山者でいっぱいだった。この山は一年のうちで展望が利く11月が一番登山者が多いらしので、当然と言えば当然である。しかしカップヌードルを食べていたら10人ほどの団体さんが金ヶ岳に向かって縦走して行き、山頂に残ったのは5〜6人だった。

 充分休んで最後の眺めを楽しみ、下山にかかる。下山は登ってきた女岩コースに平行して伸びる尾根道をたどる。こちらも火山らしい岩がちの道でかなり急な道だ。1368mの標高点を過ぎると傾斜がやや緩やかになり、防火帯のような切り開かれた尾根の上をジグザグを切りながら下っていく。全体に植生が単調で展望もなく、これを登りに使うとなると精神的に辛そうだ。
 降り立った舗装道路を左手に進むとすぐに「分岐」になり、登りに使った道を下って駐車場に戻った。

 

防火帯のような尾根道

 

 下山後は車中泊をした道の駅の向かいにある日帰り温泉施設「ゆーぷる」に寄って汗を流す。
 そんなに汗もかいていないので、入浴せずに帰ろうかと思ったが、いざ湯船に浸かってみると「あ〜っ」と思わず声が出そうになるくらい気持ちが良かった。やっぱり下山後は温泉だなあ。

 

ゆーぷるにらさきから茅ヶ岳を望む

 

茅ヶ岳ルートマップ


[山行日] 2022/11/25(金)       2022年11月の天気図(気象庁)
[天気] 快晴            
[アプローチ] 24日 中央道・韮崎IC →(R141)→ 道の駅にらさき   [約5km]

25日 道の駅にらさき →(R141)→ 登山口駐車場(深田記念公園)[約12km]

・駐車スペース約30台(未舗装)。水洗トイレあり。飲み物の自動販売機あり。
 

[コースタイム] 25日
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
0:55 7:00 登山口 出発(940m)    
7:25 分岐    
7:55 女岩手前 0:05 4℃
1:10 8:00  
8:10 女岩    
8:50 女岩のコル    
8:52 深田久弥終焉の地の碑    
9:10 茅ヶ岳山頂(1704m) 0:25  
0:50 9:35  
10:10 観音峠分岐    
10:25 金ヶ岳山頂(1764m) 0:15  
0:50 10:40  
10:50 観音峠分岐    
11:10 最低鞍部    
11:30 茅ヶ岳山頂 0:40 12℃
0:35 12:10  
12:15 千本桜分岐    
12:45 1368m標高点付近 0:10  
0:50 12:55  
13:20 分岐    
13:45 登山口 着   全行動時間
5:10     1:35 6:45
登り 2:55      
下り 2:15      
 

 

[温泉]

ゆーぷるにらさき(韮崎市健康ふれあいセンター) 
・道の駅「にらさき」の向かいにある日帰り温泉施設。
・850円。(併設されたプールも利用可)
・月曜日、年末年始定休。
・サウナあり。露天風呂もあるが外の景色が見えない。