八高山(はっこうさん)                              [遠州] 832

 

 八高山にしようか鈴鹿にしようか迷ったが、同行のKawさんの「富士が見たい」というご要望を入れて八高山になった。Nom君を加えて三人で出かける。
 ガイドブックで調べると登山道は植林地の中を登っていくので、富士山が見られないと道中は面白くなさそうだ。天気はいいが、はてさて見られるかどうか。

 新東名を島田金谷ICで降り、大井川鉄道の福用駅に車を止めて歩き始める。

大井川鉄道福用駅

 

 道標に導かれて茶畑の間を進むと、すぐに山裾の神社に突き当たる。白光(はっこう)神社で鳥居に大根締めの小さなしめ縄がぶら下がっているのが面白い。なぜか、境内に釣鐘堂がある。
 解説板に寄れば八高山の山上にあるのが白光神社の元々の社殿で、こちらの社殿は昭和27年に別の神社だったものを白光神社に合併し遥拝所としたもの、とのこと。白光神社は修験者に よって勧請されたもので、釣鐘は修験のなごりのようだ。
 文字は違うが神社も山名も「はっこう」と発音する。どちらの名前が先なのかは書かれていなかった。

白光神社遥拝所

 

 創建は欽明天皇の御代二十七年とあるので、6世紀中ごろの飛鳥時代となり、かなりの古社である。それにしても主祭神が安閑天皇というのは珍しい。安閑天皇は欽明天皇より二代前の天皇で、日本書紀にもたいした事績は記されてないので、どうしてこの地に祀られているのかはよくわからない。

 

作業用モノレールをくぐる

 

わずかに残った紅葉

 

 社殿の後ろの左手から登山道が始まる。いきなりの急登で歩き始めの体にはつらい。 踏ん張りつつ登っていると、最近聞いている高橋優の「虹」のフレーズが頭の中を巡るようになる。無駄に力強い歌声がぴったりのような気がする。急な山腹を登りきると 支尾根の上の道になり、少し傾斜が緩くなる。
 周りは杉桧の植林地だが、所々に段々畑のような石積みが残っている。いつの間にかそばを作業用モノレールのレールが延びていて、登山道と平行に傾斜を登っていく。レールの近くまで木の枝葉が茂っているので今は使われていないようだが、何のためのモノレールだろう。と思っていたら、道の脇に白い花をつけた茶の木が見え始めた。よく見ると植林地や雑木の間に点々と茶の木が生えている。どうやら放棄された茶畑があったようで、モノレールはそのためのものだったようだ。

 

五輪段の分岐 杉林

 

 1時間ほどで標識の立つ分岐に到着。先行したKawさん、Nom君が待っている。ここが今登ってきた「急斜面コース」と帰りにたどる「なだらかコース」の分岐で、周りは手入れが行き届いた明るい杉林だ。 広々とした平らな尾根で五輪段という名前が付いている。五輪塔でも立っていたのだろうか。ここからしばらく植林地の中のなだらかな道を行く。

 

 少し進むと右手の斜面が一面の伐採地になって視界が開け、前方にやっと八高山の山頂が見える。ピラミダルないいスタイルをしている。
 伐採地には既に植林がされていて、鹿よけネットが一本一本丁寧にかぶせられている。

 再び植林地に入ると林道が現れ、一度横断して山道になった後、次は林道を歩くようになる。しばらく歩くと八高山手前の鞍部になり、ここも視界が開ける。馬王平と呼ばれるところだ。

八高山 (帰路に撮影)

 

 ガイドブックにはトイレがあると書かれていたが、広場だけでトイレは見当たらない。ベンチに家族連れと思われる女性ばかり4人のグループが休んでいる。
 ここからは富士山が眺められるようで、ベンチの前には写真入りの解説板が立っているが、今日はそれらしき辺りに富士の姿はなく、雲の塊が鎮座している。上空は晴れているのだが、山の方は雲の中だ。冬型の気圧配置なので寒気が流れ込みやすく、雲が取れないのだろう。聖岳や光岳などの南アルプスの峰も見えるようだが、そちらにも雲がかかり判然としない。

 

馬王平の解説板 (正面に富士山が見えるはず)

 

馬王平で林道と分れ左手の山道に入る

  馬王平からは林道と分れ山頂に向かって最後の登りになる。出だしはまた急な登り。右手はカヤトの原で伐採の跡地だろう。
 伐採地を登りきると、また森の中に入るが、この辺りまで来ると植林ばかりではなく雑木も混じってくる。もうすっかり葉が落ちてしまっているが、コナラなどはまだ黄色っぽい葉が少し残っている。
 山道の途中に突然フェンスが現れ、木立の間から覗いてみると反射板が二基立っている。解説板があって、静岡放送の電波の中継用とのこと。日本平から浜松方面に送る電波をここでつないでいるようだが、こんなに木立に囲まれてしまっていて、役に立つのだろうか?ピカピカに光る板面をみるとまだ現役かもしれないが、このデジタル時代に使われているのだろうか。

 

ミヤマシキミ

 

反射板

 

 なおも登ると白光神社の社殿が現れる。こちらが八光神社の本社。簡素な造りだが、拝殿と本殿と分かれて二棟になっている。白木の鳥居には下の神社と同じように小さなしめ縄が懸っている。こんな山上の社でも、よく維持されお参りされていることに感銘を受ける。

 ここから山頂はもうわずかな距離で、神社の右手を登っていくとすぐに到着する。

光神社

 

八高山山頂
 
一等三角点

 

 相変わらず富士山は雲に覆われていて見えない。富士が見えないとただの山なのだが、仕方がない。南側の方も開けていて、遠くにもかかわらず駿河湾の光の反射が眩しいくらいだ。浜松のアクトタワーも見えるそうだが、そちらの方角はもやっている。
 八高山は一等三角点の山なので展望が良いのは当たり前なのだが、その標石が山頂の真ん中に据えられている。一等三角点には40km間隔を目安に設置される「本点」と、その補完をする25km間隔の「補点」があるが、ここは「本点」である。ちょっと偉いのである。一等三角点の標石の大きさは一辺18pということだが、ここの物はなんとなくそれより大きいような気がする。

 富士山は見えないが天気は良い。上空は青空で日向では暑いくらいだ。半日陰のところに場所を取り昼飯にする。相も変わらずポットのお湯でカップラーメンだ。
 Nom君が新兵器のジェットボイルを持ち出しお湯を沸かし始めるが、さすがジェットと謳うだけあって、普通のガスバーナーよりもかなり短い時間で沸騰する。Kawさんの持参したドリップコーヒーと袋入りのフルーツをいただく。

 

 気持ちの良い山頂で1時間ほどゆっくりして、下山にかかる。

 下山の途中、馬王平から少し登ったところの道の脇で、登りの時にゆっくり見られなかった祠を見る。
 同じような形の祠が白光神社の近くや登り始めの支尾根にもあって、どれも近くに注連縄が張ってあった。かつては山中のあちこちに祀られていて、修験者や参拝者が巡っていたのかもしれない。祠の両側面には月と太陽が浮き彫りになっているが、何を意味しているのかは分からない。

馬王平近くの祠

 

 八高山が望める伐採地まで戻ってきて未練がましく富士を探すが、やっぱり見えない。う〜ん、「やっぱりただの山のままかぁ。」
 南アルプスの方角は少し雲が薄くなってきたが、黒法師岳あたりまでで、その先の大無間や聖までは分からない。

 帰りは分岐を直進し「なだらかコース」を下る。確かに緩やかだが、距離は長い。途中、地形図の破線からずいぶん離れてしまうので少々心配になったが、無事、大井川鉄道の線路のそばに降り立った。
 登山口には「平成18年12月2日に熊が目撃されました。十分ご注意してください。」と看板が立っていた。ありゃー。

右端が前黒法師岳

 

 富士が見られず少々不完全燃焼なので、川根温泉で気分転換。ここは人気の日帰り温泉で、露天風呂からそばを通る大井川鉄道のSLが見られることでも知られている。露天風呂の目隠し板にはSLの通過時刻も貼ってある。
 確かに平日にもかかわらず、入浴客が多い。少しぬるっとしたいいお湯で、源泉かけ流しの熱いお湯が溢れている。露天風呂からは八高山も眺められる。こちらから眺める八高山は登山中に見た三角形ではなく、長い稜線を引いた大きな山容の山に見えた。

 

川根温泉近くを走るSL

 

大井川の鉄橋を渡るSL

 

 

八高山ルートマップ


[山行日] 2018/11/29(木)
[天気] 晴れ     2018年11月の天気図(気象庁)
[アプローチ]

新東名・島田金谷IC ( R473号) → 大井川鉄道福用駅    [約9km]  
・福用駅前の空きスペースに駐車する。4〜5台くらい。駅のトイレ使用可。

[コースタイム]  
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
1:00 9:40 大井川鉄道福用駅 発 (120m)    
10:40 五輪段分岐(510m) 0:05  
1:10 10:45  
11:10 馬王平(540m)    
11:55 八高山山頂(832.4m) 0:55  
0:45 12:50  
13:35 五輪段分岐 0:05  
0:50 13:40  
14:30 大井川鉄道福用駅 着    全行動時間
3:45     1:05 4:50
登り 2:10        
下り 1:35        
 
[地図] 八高山 (1/25000)
[ガイドブック] 新・分県登山ガイド21 静岡県の山 (山と渓谷社)

 

[温泉]

道の駅・川根温泉「ふれあいの泉」  <島田市川根町笹間渡220>
・道の駅に併設された日帰り温泉施設というより、この道の駅には温泉の建物しかない。売店や、食堂が温泉の建物内にある。
・510円(JAF会員50円引き)
・ナトリウム・塩化物温泉で49℃のかけ流し。いいお湯です。
・露天風呂から大井川鉄道のSLがそばを通っていくのが見られるのがウリ。