雨飾山(あまかざりやま)                               [頸城] 1963m

 

 雨飾山に登るのは2回目。前回登ったのは1991年だから31年前になる。富山の出張の帰りに寄り道し、小谷温泉の雨飾荘に泊まって翌日登った。7月初旬の梅雨の晴れ間だったが、ガスが湧いてしまって北アルプスの展望が得られなかったのが残念だった。
 今回は秋の空気の澄んだ季節。黄葉と展望を期待して出かけた。

 前日の夕方6時頃に登山口の駐車場に着いたら、もう15台程の車が止まっていた。駐車場の横の平場に5〜6張りのテントもある。紅葉の季節の土日は車があふれるので、林道は駐車規制が行われるようだが、平日でもかなりの登山者があるようだ。暗くなっても車は増え続け、真夜中にトイレに起きた時には、40台程止まれる第一駐車場は既に満車になっていた。

 

  朝5時前に起床。まだ薄暗いが、既に登山者が動き始めている。カップうどんの朝食をとり6時に出発。日の出の時間は過ぎているが、太陽はまだ山の陰。
 登山道脇のイタドリの葉には霜が降りている。気温は1℃。よく冷え込んだ。空は雲一つない快晴だ。今日は北アルプスの展望が望めそうだ。

登山口駐車場とトイレ
(下山後撮影)

 

 木道の敷設された湿地を抜け、山腹に取り付く。思いのほかきつい登りだ。こんなにしんどかったかなあ、と昔の記憶をたどるが、なにせ30年以上前の事だから何も思い出せない。
 後から来るたくさんの登山者に抜かれ、少しの登山者を追い越す。
 傾斜が緩くなってきたあたりで陽が射してきて、見上げるとブナの黄葉が眩しい。ブナ平と言われるあたりだろうか。

 

ブナの黄葉

 

 再び急になった登山道を登り切り、少し行くと右手に携帯トイレブースがあった。大腸がんの術後、まだ排便に不安があるのでトイレブースがあるのはありがたいが、昨日は下痢気味でかなり出しているし、 今朝下痢止めも飲んできたので今のところは大丈夫だ。

 

 なおも進むと登山道に人がたまっている。近づくと目の前は荒菅沢の岩壁。白く輝く岩壁の手前は一面の紅葉。これは素晴らしい。一番よく見える場所から皆代わる代わる写真を撮る。
 頂上付近の岩峰には雲が引っかかっているが、それほど濃いものではない。山頂に着く頃にはおそらく晴れるだろう。
 沢の対岸のブナの黄葉も美しい。 
 

荒菅沢

 

対岸の黄葉 荒菅沢徒渉地点

 

  少し下って荒菅沢の流れを渡る。石飛で少し靴の底がぬれる程度で渡れる。上流を見上げながら20人ほどが休んでいる。

 沢を渡って尾根に取り付くがここからは一段と登山道が急になり、はしごや鎖が現れる。普段は脚の疲れが先に来るのだが、今日は先に息が切れる。ペースが遅くなり、後から来る登山者に道を譲ることが多くなる。こんなにしんどかったかなあ、と再び思う。

 黙々と登り続けると周りの樹木が低くなり、展望が利くようになる。それとともに、岩場の登りが多くなる。見上げると稜線が近くなった。稜線の背後は抜けるような青空だ。

 

急登

 

対岸の布団菱を見上げる 岩場の登り

 

 稜線近くまで登ってくると周りは笹が多くなり、ますます展望が良くなった。右手には2年前に登った金山と天狗原山がどっしりと横たわっていて、その左肩に三角の焼山の頭が覗いている。
 さらに左手には海谷山塊の山々が個性的な山容で並んでいる。前回登ったときはガスだったので、初めて見る山々だ。
 若い頃読んだ山行記録でこの山塊の魅力的な山々に憧れていたが、岩峰が多く、難易度も高そうで、この歳になるともう登りに来ることはないかもしれない。

 

左から焼山、金山、天狗原山

海谷山塊

 

 稜線に上がるとやっと山頂が見えてきた。山頂の形は丸みを帯びているが、左半分は荒菅沢源頭の岩壁が鋭く切れ落ちている。
 山頂の背後に北アルプスが見えてきて、後ろから来た単独行の女性に尋ねられて朝日岳だと答える。カメラを首から提げた彼女は周りの景色に興奮気味で、特に「日本海が見える !」と感激していた。楽しそうな様子にこちらもうれしくなってくる。

 

笹平の先に雨飾山山頂(金山分岐から)

 

糸魚川の街と日本海(笹平分岐から)

 

女神の横顔

 海谷山塊の山名を説明したりしていたら、なんとなく話しながら歩くことになり、聞くと岐阜から来たと言う。唐松岳と迷ったあげくにこちらに来たそうで、思い切って出かけてきて良かったと満面の笑顔。
 山頂への最後の登りで振り返ると、有名な女神の横顔が笹平に浮かび上がり、これも彼女に教える。30年前に登ったときには「女神の横顔」なん てガイドブックにも載っていなかったように思うが、いつ頃から誰が言い始めたんだろうか。

 

後立山連峰

 

白馬岳(右端は雪倉岳)

 数日前に降ったものか、山頂付近の日陰には薄く雪が残っていて、それを踏んで登山者でいっぱいの山頂に登り着く。
 とたんに北アルプスのパノラマが目の前に開け、「あ〜、これはすごい」と思わず感嘆の声が出る。手前は黄葉に覆われた雨飾山の山腹。その向こうにうっすらと雪化粧した後立山連峰の山々が立ち並ぶ。しかも一筋の雲が山腹にかかり、アルプスの山々がひときわ高く、神々しく見える。あ〜、この景色が見たかったのだ。
 北から朝日岳、雪倉岳と続き、ひときわ立派な白馬岳。この角度から見る白馬は初めてだ。その左には白馬鑓、唐松岳、五竜岳、鹿島槍と並ぶ。 なおも北アルプスの山並みが続き、遠く槍ヶ岳の穂先も見える。
 振り返ると頸城の山々。大きくうずくまっているのは高妻山。先ほどまで見えなかった火打山も金山と焼山の間に顔を覗かせている。

 

遠く槍ヶ岳

 

隣の三角点ピーク

  カップヌードルを食べ、隣の三角点にも立ち寄り、素晴らしい眺めに後ろ髪を引かれる思いで下山にかかる。まだまだ登ってくる人が多く、岩場ではすれ違いのために待つ時間が多くなる。

 荒菅沢まで下りてきて振り返ると、青空をバックにひときわ白い荒菅沢の岩壁が光っている。ほんとにいい眺めだ。さすがに三回目はないだろうから、見納めにと目に焼き付ける。

 途中のブナ平付近の黄葉は明るい日射しを浴びてひときわ鮮やかで、なかなかこんなブナ林は見られない。これも記憶の中にしまい込む。

荒菅沢の岩壁を振り返る

 

ブナ平

 

キャンプ場分岐近くから雨飾山

 今回も下山後は小谷温泉の露天風呂。前回、雨飾山に登ったときは新緑に囲まれて気分が良く「キビタキの湯」と勝手に名付けた。2年前に天狗原山と金山に登ったときには虻に刺されて「アブの湯」だった。今回は「紅葉の湯」になるかと思ったが、温泉の周りの木々はま だ色づき始めたばかりで、紅葉の湯には少し早かった。

 

鎌池

 

鎌池の紅葉

雨飾山ルートマップ


[山行日] 2022/10/20(木)      2022年10月の天気図(気象庁)
[天気] 快晴            
[アプローチ] 19日 安曇野IC →(北アルプスパノラマロード、R147、R148)→ 小谷村中土 →(県道114号 、林道)→ 雨飾山登山口P(雨飾高原キャンプ場)
  [約80km]

・駐車スペース40台+30台。水洗トイレ、休憩所あり。飲み物の自動販売機あり。
 
[コースタイム] 20日
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
1:35 6:00 登山口 出発(1150m)   1℃
7:35 荒菅沢(1450m) 0:05  
0:50 7:40  
8:30 1770m地点(急登の途中) 0:05  
0:50 8:35  
9:00 笹平分岐    
9:25 雨飾山山頂(1963.3m) 0:55  
0:30 10:20  
10:50 金山への分岐 0:05  
0:45 10:55  
11:40 荒菅沢 0:15  
0:35 11:55  
12:30 ブナ平 0:05  
0:40 12:35  
13:15 登山口 着   全行動時間
5:45     1:30 7:15
登り 3:15      
下り 2:30      
 

 

[温泉]

雨飾高原露天風呂  
・小谷温泉雨飾荘の手前にある無料の露天風呂。
・近くに駐車場あり。
・入浴協力金の箱と脱衣所と湯舟しかない。
・周りは落葉樹の森で実に爽快な露天風呂。

[風景印] 中土(なかつち)局
 (長野県北安曇郡小谷村中土7376-1)

・図案  
  雨飾山、小谷温泉、郷土芸能・奴踊)