赤城山(あかぎやま)                             [関東] 1828m 

                     男体山から

 男体山から金精峠を越えて移動し、大沼のほとりの駐車場で車中泊。目覚めると今日もいい天気。ただ気温は車外で3℃。標高が1300mを越えているとは言え、かなりの冷え込み。下界では真夏日の毎日だったので、寒さが応える。しばらくシュラフから出られなかった。

 予定では黒檜山の登山口まで車で移動してから登るつもりだったが、フロントガラスの曇りを取るのが面倒なので、ここから歩きはじめることにする。

 登山の前に湖畔の赤城神社に立ち寄ってお参り。真っ赤な橋が湖面に映えて美しい。社殿も朱塗りで、小ぶりながら華やかだ。社標に延喜式内社とあるところを見ると、平安時代以前からの由緒を持つ古い神社のようだ。

岩だらけの登山道

 

 神社から少し車道を歩けば黒檜山の登山口。
 登山道は落葉樹の明るい森の中を行き気持ちがいいが、岩が多い。でも、昨日の男体山よりは歩きやすい。今日もミツバツツジやシロヤシオ、ムシカリなどに励まされる。

 

黒檜山登山口

 

トウゴクミツバツツジ

 30分程登ると岩尾根に出て、眼下の展望が開ける。大沼の静かな湖面、取り囲む山々、突き出した岬に橋が架かり、赤城神社の社殿が朱を添える。「箱庭のような」という表現はもう死語かもしれないが、本当に箱庭のようにまとまっていて美しい。

 先ほどの神社の由緒書によれば、昭和45年に湖畔の大沼地区からこの地に遷座されたようだが、朱色の社殿が風景のスパイスとしてとても効いている。景観的な効果を見抜いた人がいたのかもしれない。

箱庭のような大沼

 

 道は尾根をやや巻き気味に登っていくが、相変わらず岩だらけだ。

 今日も昨日の男体山同様にハイカーが多い。こちらの方が手軽に登れるので、服装を見るとあまり山慣れていない感じの人が目につく。
 今は新緑が美しい上に、赤城山はツツジでも有名なのでハイキングのハイシーズンなのだろう。もっとも、ヤマツツジはまだこの辺りではつぼみだが。

岩だらけの道

 

 登りながら頂上方面を見上げて、ふと気になってきた。「ずっと樹林が続いているが、山頂は展望がきくのだろうか。」
 簡単な山なので大した下調べもしてなくて、どんな山頂なのかは分かっていない。こんなに天気がいいのに、展望がきかないのでは話にならない。

 稜線に出て、駒ヶ岳への道を右に分け、左手に進んで行ってもまだ、木々の背丈は高い。
 三角点のある山頂に着いたが、樹木に囲まれてやっぱり展望はなかった。「ありゃ〜」とがっかりしかけたが、すぐに「展望台2分」の標識が目に入った。ほっとしてそのまま広場を通り抜け、稜線をなおも北に進む。

 小高いピークに上がるといきなり眼前に大パノラマが開けた。
「おお。」と唸った後は、あまりの素晴らしさに声が出ない。しばらくその場に立ち尽くした。

黒檜山三角点

 

        ↑仙ノ倉山                         ↑谷川岳                  ↑朝日岳                ↑巻機山

 こちらの方にはしばらく来ていないので、山座同定が難しい。しばらく眺めていたら山頂の平らな苗場山を 発見。これは間違いない。それを基準にして、その右が仙ノ倉山から谷川岳に続く谷川連峰、さらにその右の一きわ白い山々が巻機山から越後三山であろうと見当を付けた。(家に帰ってカシミールで調べてみたら、谷川連峰は合っていたが、巻機山 と思ったのは朝日岳、越後三山 は巻機山であった。越後三山は上州武尊の後ろになるようだ。)

 それにしても上州武尊の立派なこと。昔、日光白根山から眺めた時には見下ろす感じになり、その低さゆえにあまり魅力を感じなかった。百名山ではあるが、そのために今まで登る気にならなかったのだが、どうしてどうして、堂々たる山塊ではないか。残雪のアクセントがプラスポイントになっている感じはするが、しっかりした根張りからいくつもの峰を持ち上げ、魅力的な姿をしている。次は武尊と皇海だなあ。

 

左から上州武尊山、笠ヶ岳、至仏山 燧ヶ岳(左)と会津駒ヶ岳(右)

 なおも右に目を転ずれば、日光白根、皇海山と続き、日光連山の右端には昨日登った男体山が霞んで見える。

右端が男体山

 

 苗場山から左へは同定がしにくいが、岩菅山、横手山などの志賀の山々から草津白根、四阿山と続き、その左に浅間山が大きい。浅間山の右側遠くに白い峰が伸びているが、どうやら北アの槍穂連峰のようだ。
 浅間からさらに左は八ヶ岳連峰、奥秩父と続き、木の陰になってしまうが、富士山もぼんやり見えるはずだ。

 

浅間山、左肩に遠く乗鞍岳

 

苗場山(左)と平標山、仙ノ倉山(右)、手前は沼田の街

 

 今日も風があるが昨日ほどではない。腰を下ろし、のんびりと白い峰々を眺める。こんな大パノラマに出会ったのはいつ以来だろう。至福のひと時を過ごす。

 

 しかし、いつまでもここにいる訳にはいかない。今日中に帰らなければならないので、下山にかかる。

 帰りは稜線を南にたどり、駒ヶ岳から大沼の駐車場に直接下るコースをとる。
 登ってきた時の分岐の先に黒檜大神の祠があり、そこからは先ほどは見えなかった富士山が小沼の向う、はるか秩父の山の上に薄っすら顔をのぞかせている。

小沼の向うにぼんやりと富士

 

駒ヶ岳(左)への稜線、右は地蔵岳

 

ムシカリ

 

 黒檜山からの下り始めは木製階段が続く急な道。こちらの方が登山道としての整備はよくされているようだ。下りきった先の稜線はあまり展望はきかないが、広葉樹の明るい林を抜ける気持ちのいい道。少しの登りで駒ヶ岳のピークに着く。

 山頂から南を見ると、緑に覆われた幾つもの谷が山腹に刻まれ、その先は茫漠と広がる関東平野が霞んでいる。
 広いなあ。赤城山が山地の最前線で、関東平野に対峙していることが良く分かる。

駒ヶ岳山頂から山麓を見下ろす

 

 駒ヶ岳からの下りもなかなか急傾斜。鉄製の階段や木製の階段が続き、どんどん高度を下げる。しかし、つづら折りで下っていくので、足への負担が少なく歩きやすい。こちらからもハイカーが登ってくる。
 下りきって車道に出ると、駐車場はすぐ目の前だった。

小沼の向うにぼんやりと富士

 

 

大沼対岸からの黒檜山

 

地蔵峠から見下ろす覚満淵
山腹のヤマツツジ

 

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[山行日] 2015/5/22(金)
[天気] 晴れ     2015年5月の天気図(気象庁)
[アプローチ] 21日 日光二荒山神社中宮祠 (R120号 、赤城道路)→ 赤城山大沼湖畔おのこ駐車場     [約43km]
      
・県立自然公園の広い駐車場。周辺には他にも駐車場有り。
・トイレ有り。
[帰り道] 22日 赤城山大沼湖畔 (県道16号他)→ 伊勢崎IC (北関東道、関越道、圏央道、東名、新東名、東名)→ 音羽蒲郡IC [約464km]
[コースタイム]
        4:15起床
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
0:10 5:50 大沼、おのこP出発   3℃
6:00 赤城神社 0:05  
0:45 6:05  
6:15 黒檜山登山口(1362m)    
6:50 尾根 0:10  
0:35 7:00  
7:35 黒檜山山頂(1828m) 0:55  
0:40 8:30  
9:10 駒ヶ岳山頂(1685m) 0:05  
0:40 9:15  
9:55 大沼、おのこP着   全行動時間
2:50     1:15 4:05
登り 1:30        
下り 1:20        
 

 

[風景印] 赤堀(あかぼり)
  (群馬県伊勢崎市市場町1−35−1)
 

・図案
  赤城山、とこめき橋、花ショウブ