乗鞍岳(のりくらだけ)               [北アルプス]3026m


  ペンションのオーナーの言ったことは本当だった。7時50分に三本滝駐車場に着いたときには、既に位ヶ原山荘へのバスを待つスキーヤーの長い列ができていた。

 前夜、少々サービス過剰なオーナーは、僕等が夕食を食べている間じゅう、天気のこと、バスの時刻のこと、周辺の観光スポットなど延々としゃべり続けた。
 位ヶ原へ上がる最初のバスは8時21分。それに乗り遅れるとそのバスが下りてくるまで40分も待たなければならないので、明日は早く出かけたほうがいい。客が多いと臨時バスが出るが、必ず出るわけではないのであてにしないほうがいい。というようなことを暗唱できる程たたき込まれてしまった。 

 

 「やっぱり乗鞍は春スキーのメッカだなあ。」と納得しつつ行列の最後尾に並んだが、バスの出発時刻までに列はさらに長くなってた。オーナーの警告どおり始発のバスには乗れなかったが、臨時バスに何とか乗れて一安心。一車線分だけ除雪された道の両側は雪の壁で、バスはつづら折りを繰り返しながらトウヒの間を縫って高度を上げていく。25分ほどで位ケ原山荘前に到着した。

 山荘から少し行った橋を渡ったところでシールを貼り、登りはじめる。スキーヤーのほとんどはゲレンデ用あるいは山スキーを担いで登っていた。足元はプラスチックブーツで歩きにくそうだ。こちらはテレマークスキーにシールを付けているので、歩きは楽だが直登はできないのでこれもまた疲れる。
シールを付けて出発
 
 ひと登りで位ヶ原の雪原だ。広々と気分がいい。遙に肩の小屋の鞍部が見える。スキーヤーの多くは摩利支天岳を巻くように最短距離を登っていくが、こっちは適当に雪原の真ん中を通っていく。
 だんだんガスが下りてきて、肩の小屋から上は見えなくってしまった。天気予報は当たりらしい。少し急な斜面を登ると肩の小屋だった。小屋は閉またままだったので、小屋の前で小休止をとる。
位ヶ原をゆく
 
 肩の小屋の少し上でシールでは登れなくなったので、スキーをデポし、最後の標高差200mくらいはステップをたどって空身で登る。朝日岳の左肩から稜線に出て、風に飛ばされそうになりながら蚕玉岳を越えて山頂に着いた。バスを使ってはいるものの久々の3000m峰でかなり足にきていて 、最後は膝が上がらなくなってしまった。
 かなりの人が登っているはずなのだが、ガスが濃くよくわからない。天気が良ければ穂高連峰がきれいに見えるはずなのに残念だ。ペンションのオーナーに言わせれば、穂高に飛び込むように滑り降りるのが最高なんだそうだが、山頂から滑るほどの技術もないのでそれは諦めがつく。
山頂はガスだった
 
  デポ地点まで戻り、山荘までは斜滑降を繰り返して下りる。そこからは位ヶ原の大雪原へ滑り込む。曇り空が幸いして雪のゆるみ具合が丁度よく、へたくそテレマーカーでも驚くほどターンが決まる。気分は最高だ。
 登りの苦労の元を取ろうと、なるべくゆっくりと楽しみながら下りてこようと思うのだが、ついついスピードに酔って、瞬く間に位ヶ原山荘まで下りてしまった。あー、もったいない。でも、気持ちいい。
 これがあるからまた登りたくなっちゃうんだよなあ。

位ヶ原に滑り降りる 位ヶ原山荘を見下ろす

[山行日]   1999/5/4
[アプローチ] 中央高速道路中津川I.C. →(R19)→ 木曽福島 →(R361)→ 開田高原→ 岐阜県高根村 → 野麦峠 → 長野県奈川村 → 乗鞍高原 [約150km]
ゴールデンウイークなので渋滞を避けながらのんびりと木曽路を行く。沿道の八重桜がきれいだった。開田高原からは御岳、野麦峠からは乗鞍岳がどーんとでかい。
[コースタイム] 位ヶ原山荘 (1:35) 肩の小屋 (0:15) スキーデポ (0:40) 乗鞍岳山頂 (0:25) スキーデポ地点 (0:10) 肩の小屋 (0:45) 位ヶ原山荘  (計3:50)
[装備] テレマークスキー(ステップソール付き)
[地図] 乗鞍岳(1/25000)

 

[交通機関] 三本滝−位ヶ原山荘間のスキーバスは片道1100円。土、日のみ松本電鉄が運行。(TEL 0263-92-2511)
5/10〜6/30の平日は乗鞍高原の旅館、民宿組合が無料バスを運転。観光センター前発8:00。(以上1999年の状況)
[宿] ペンション「小さな国」http://www.chiisanakuni.co.jp/
おせっかいと感じる人もいるかもしれないが、オーナーが教えてくれるスキーコース、交通状況、天気予報などの情報は正確で貴重。上高地のネイチャースキーツアーも行っている。