富士見台(ふじみだい)               [中央アルプス南部]1739m


 富士見台へは以前から行きたいと思っていた。ガイドブックによれば、牧場にもなっている頂上付近は伸びやかな草原か笹原で、南アルプスの眺めも良さそうだ。名前のとおり富士山が見えるのかも確かめたかった。
 なかなかきっかけがなくて行きそびれていたが、昨年(1997年)の冬に長野県側に「ヘブンスそのはらスキー場」ができた。昨年はどんなスキー場か分からなかったが、今年になってスキー場ガイドで調べたら、リフトでゲレンデの最上部に上がれば富士見台のそばの神坂峠へ続く林道に出られることが分かった。
 「クロカンで行けるじゃないか。」
 今年は暖冬で南岸低気圧が多く、東京によく雪が降る。中央高速も雪が多くて閉鎖になる日がある。北陸のスキー場より八ヶ岳や霧ヶ峰あたりのスキー場のほうが雪が多いくらいだ。そのはらスキー場の積雪量も160cmになった。あとは天気の日をねらって出かけるだけだ。 
 スキー場の駐車場からゴンドラでゲレンデに上がり、リフトで最上部へ。そこから少し右手に下るとスキー場建設のためと思われる作業道があり、これが峠越えの林道まで続いている。作業道とは言えガードレールもある立派な道だ。すぐ左手は恵那山。樹林の山にもかかわらず木々が雪をがぶって白く見える。
 道は風の当たる所はガリガリだが、吹き溜まりの雪は深い。ガリガリの所は少しの登りでもずり落ちるし、深雪は潜ってしまって滑らない。どちらにしても疲れる。
ヘブンスそのはらスキー場からの恵那山
 車道に出ると白く輝く南アの全山が一望に眺め られた。しかし、それ以上に雪をまとったカラマツやモミの樹々が美しく、蔵王のモンスターのようだ。日だまりは汗をかくほど暑く、風が当たる場所は顔が冷たい。

 神坂峠を過ぎた富士見台下の万岳荘あたりは一段と雪が多くて、とても中央アルプスの南部とは思えず、まるで東北の山にいるようだ。小屋の前で昼食にしたが、スキーを脱ぐとズブズブ膝まではまってしまった。

雪に埋もれた万岳荘
 富士見台へはカメラだけ持って空身で登る。登りはじめ以外は傾斜がきつくても斜面が広いので、大きくジグザグを切って斜登行で登っていける。真っ白い広い斜面を青い空に向かって登っていくのは、しんどいけれど気持ちがいい。シールがあればもっと楽に登れるのだが、クロカンだからしかたがない。 
登るにつれて中アの山々もせり上がってくる。
中央アルプスの山並み。左手の最高点が木曽駒。

 一番近くのピークに登ると、目の前にやっと富士見台の最高点が見えた。驚いたことに稜線には小さいながら雪庇ができていた。
 一度下ってきつい登りを階段登行で登り、雪庇をよけて稜線に出ると風がきつい。頂上直下にスキーをデポし、山頂へはツボ足で。山頂の風はきつい、きつい、きつい。御岳をカメラに収め早々に下りてきた。下りは華麗にターンを決めて、というわけにはいかず、へたに転べないので登りと同じく急斜面は斜滑降で下りてきた。
 
右側ピークが富士見台の山頂。左手稜線に雪庇ができてる。 山頂から神坂峠方面を振り返る
 下山も同じコースをスキー場まで戻る。神坂峠からしばらくは林道ながらかなりきつい登り坂で、板が滑ってしまい、スキー場に戻ったときは膝がガクガクだった。ゲレンデの下りもクロカンにとっては急で、格好悪いけれどかなりの部分は斜滑降で下りてきた。
 ゴンドラ乗り場まで下りてほっと一息。ここからはもう富士見台は見えない。もう少し車道歩きが短いとおもしろいのだが。
 あ、しまった。富士山を探すのを忘れた。

 

アイコンをクリックするとマップがでます。 <伊那駒場(1/25000)>


[山行日]   1998/1/27
[アプローチ] 中央高速道路園原I.C. → ヘブンスそのはらスキー場→(ゴンドラ&リフト)→ゲレンデ [約5km]
[コースタイム] ゲレンデ最上部(0:20)林道合流点(0:55)神坂峠(0:15)万岳荘前(0:50)富士見台山頂(0:20)万岳荘前(1:10)林道合流点(0:35)スキー場ゴンドラ乗り場  (計4:25)
[装備] クロスカントリースキー(エッジ付き)