ある一武家の家計が記された古文書を元に紡がれた物語。 ヒットした小説やマンガを原作としない、 元から映画としての物語として創作されたモノということで とても楽しみだった作品。 家計簿に記された言葉や数字から、 想像し読み解かれ構築された物語は とても興味深く、映像的にも面白いものに仕上がっていたと思う。 コミカルで哀しくて、そして力強い。 まだまだ人の想像力は可能性を秘めてるなあ…と感心した。 キャスティングも中々ハマっていて、 特に松坂慶子の姑役は堂に入っていて作品に強い印象を残す。 妻役の仲間由紀恵も、いつもはどの役も自分に見えてしまう役者だけれど 本作では上手くハマっていて、 真面目で融通の利かない不器用な夫を支える有機的な情緒を醸し出す 気の利いた妻がよく似合っていた。 全体的に抑えた音楽もイイ。 惜しむらくは… 主人公の老けメイク。 何ですか?! あの中途半端さは!!!(激怒) それまで気持ちよく映画の中に没頭していたのに…… 台無しじゃあないかっ!! 老いてから薄暗い居間で、机に向かいソロバンを弾く姿は良かったんですよ。 鈍い光が差して、白くなった頭を柔らかく照らし 顔には濃い影が落ちてその表情は見えない。 この人生の落日の情景は見事なのに、 この後…… どアップになる顔と、息子に背負われて息子の表情がアップになる時 その肩に置かれた手もアップになるんだけど、その手が…… 明らかに“作りました”な老けメイクと、若々しすぎる手。 ……興醒めだ…… 映画は小説と違い映像が存在する。 つまりは視覚に訴えるものが大きい。 ここの手を抜いてしまうと、作品の価値は途轍もなく下がってしまう。 せっかくの力作が…… ああ、勿体ない……。                                    10.12.12. 鑑賞