どんな状態になっても生き延びるんだという小人たちの逞しさに感動し、 今まで他の生き物にどれだけ酷いことをしてきたんだろうと、懺悔の気持ちにさせられました。 映像美と細やかな表現は、もう言うまでもありません。 ジブリ作品を語る時、それは殆んど求めるモノではなく当たり前になってしまっているのだから。 作品というモノは、観る人によって感じ方も観るポイントも違って当然なのだけれど 本作は、その多様性がとても顕著だなと思います。 年齢や性別、持っている問題意識……などなど、 10人いれば10通りの観方がはっきりと区別される、そんな印象ですネ。 一緒に観た友人と娘と自分とでは、全く違う評価なんですから…… ついでに言えば、自分はそれなりに面白かったんですけど 知人はちっとも面白くなかったと言いますし、 注目すべきは、そんな知人に“そうかもしれないなあ…”と思ってる自分の存在なんです。 私、面白ければ絶対ここがこういう理由で面白いんだよって必ず説明したくなるんですけど、 今回限りは、それも仕方ないのかもしれないよねぇ…… と、妙に納得してるんですよ。 という訳で、“私は”ということを強調しておきます。 とにかく、強く逞しい小人たちの生活力にただただ圧倒されました。 そして、築き上げた生活を生きるためには捨てることの出来る潔さ、 これには尊敬の念すら湧いてきます。 自分の置かれた境遇に、生きることを諦めたかのような翔の心に 生きる力を目覚めさせるに十分過ぎる程のパワーだと納得出来ます。 予告で気になった翔のセリフ、“君たちは滅びゆく種族なんだ”は 翔の自虐的な言葉だったのですね。 まあ、この何ともいえないリアル子どもらしからぬ、 艶めかしさすら漂う少年が、唇の動きも妖しげに 12歳の少年らしからぬ言葉を連発するんですよ。 (声当てたのがリアル小学生でなく、神木龍之介くんだったのは必然だったのですね。) 小人の思春期の少女には、あんな風に人間の男の子って見えるんだろうね……。 脚本の宮崎監督は、“カリオストロ”以来そういうセリフ好きなんだろうけど、 “千と千尋”の釜ジイの「愛だよ!愛!!」みたいに少し茶化し気味なのは抵抗ないんだけど… もっとさり気ない感じの方が自分は好きだなあ…。 仄かな恋愛感情が含まれているように感じられるアリエッティと翔の関係だけど、 何かいちいち気になって現実に引き戻されちゃったなぁ…。 それより、ラストのスピラーのセリフなしの心の動きが垣間見えるシーンが好き!! 「敵かっ?!」危険だ!って弓を構えて、後、嫉妬心でキリキリ弾き絞り、 彼らの別れを悟ってゆっくり弓を下す… ちょっとスピラーの気持ちがググッと迫ってきちゃったよ〜って まあここはアリエッティと翔との別れのシーンにググッとこなきゃあいけないんだろうけどね。 あんまりグッジョブなスピラーに引き摺られましたがな(笑)。 しっかし、小人も文明的な暮らしぶりの一家や 原始的な暮らしぶりの一族やら、色々いるのが面白かったです。 小人が安全に生きて行くためには、 人間の暮らしからなるべく遠くに離れないといけないのかなあ…精神的に…。 小人を見つけた時のお手伝いのハルさんの行動って、 これが人間の普通の反応だよねえ。 憎めないし共感も出来るけど 瓶の中に入れられラップで蓋をされて怖がってるアリエッティのお母さんを見てると 子どもの頃、チョウチョとか同じ様に閉じ込めて 次の日、瓶の中で死んでしまっているのを見つけたっていうの思い出して 物凄く悲しくなってしまったなあ……ってか 恐ろしくなったんですけど……アリエッティのお母さんの気持ちになっちゃって…。 等々……“自分”という人間が観たら、こんな風に思える作品でした。 そうそう、終わった後、保育園の年長さんくらいの子どもさんが 「面白かった〜っ!!」って言っていたのが印象的でした。 自分は、作品の世界にドップリ浸れたけれど、 面白かった〜〜って思わず口に出たかっていうと、そういう感じでもなかったので… やっぱ、子どもが観て面白いと感じることって大切だと思います。                                  10.08.14. 鑑賞