50年ほど前に『ウエストサイド・ストーリー』で有名な、 ロバート・ワイズ監督が撮った『地球が静止する日』のリメイク版。 狙いは……、良いんだと思う。 テーマも地球環境悪化に対する人間の責任を問うと言う 今日的な実にタイムリーな感じだし、 主演にキアヌ・リーブスを据えて、人気の上でも客を呼べて盛り上がりそうなのに…、 観ている最中、ドキドキ ワクワクするような高揚感もなければ、 キアヌ・リーブスがカッコいいとか素敵だとかどころか、 コトもあろうに、ヘタレのカッコ悪いといった類の魅力さえも感じないし、 終わった後に何か考えさせられる……なんてコトもない。 テーマがテーマなのに、“感動”という感動を感じないのはどうしたことか……? 何か、テーマが上滑りしているように思う。 一体、人が何からどう変わらなければならないのか、全然伝わってこない。 メインで描かれているモノが、継母に反発する我儘な子供の 可哀想でも憎たらしい様子の描写ばかりで、 それがどういう訳で地球規模の変化を求めるに必要なのか、よくわからない。 軍事関係者のあれやこれやも、あるにはあるが 描写的に弱くて、一個人の民間人の心の持ち様と、人間全体の問題の関連性が見えてこない分、 異星人が、人間全体に責任を負わせようとしたり、それを迷ったりする所業が理解し難くなってしまっ ている。 キアヌ・リーブスが演じる主人公も、主役としての魅力に欠けたキャラで、 無理にキアヌを抜擢しなくても好いんじゃあないのかと思う。 問題が、設定なのか演出なのか、とにかくこれは演技力の問題ではなく、 誰がやっても“同じ”魅力の無いキャラとしか言いようがない。 人と人との関係と気持の変化の描写が粗すぎて、画面の中の変化に付いて行けない上に 期待する絡みもなく、観ている側の気持ちが置いて行かれたまんまなのだ。 これでは、キャラの魅力は到底引き出せない。 その上で、テーマが、万人の既知である地球環境悪化に於ける人間の罪性であるコトに胡坐をかき、 テーマ自体のエピソードをストーリーとして描くコトを放棄し、 観客に当たり前の知識として、描かずとも ある程度のストーリーとしての理解を強いているのだから 堪ったモノではない。 これでは作品として何を訴えたいのか分からなくて当然、且つ これで「感動を覚えろ!」とは、乱暴にも程がある。 相変わらずCG技術は高度で、毎度毎度その超リアリティとクオリティに 驚きは感じても、それ以上のモノは見出せない。 そのCG技術に対する驚きさえ、他の作品でも飽きるほど目撃しているので、希薄になりつつある。 「人は変わらなければならない」と訴えてはいるが、 現実社会を見るにつけ、本気で変わらなければならないと決意し、行動して欲しいと願ってやまないの だが……、 こんな描写力で、果たして本気で変化を望んでいるんだろうかと疑問に思う。 …にしても、いくら人間に罪があるとしても 地球外生物に、その存在と生存権の有無を決定されるなんて、絶対納得いかない! “ノアの方舟”を彷彿とさせる設定は、キリスト教文化圏における産物かもしれないが、 彼の国の方々は、こんな設定に違和感は抱かないのだろうか? 絶対者的な知的地球外生物の存在と、その思考が 地球の全てを独占してきた人類に代わって新たに台頭してきた独裁者に映るんですが…(汗)。                                 09.01.04. 鑑賞