流石っ!!と言える細田監督の手腕。 映画としての完成度の高さに脱帽です。 ストーリー、構成、演出、アニメーションの動き、素材……等々、 レベルの高さが目をひきます。 映画としてのバランスの良さに観ている側は何の違和感もなく スクリーンの中へ引き込まれて、そのナチュラルさに心地よささえ感じます。 肝心のクライマックスも、それぞれメインの人物の見せ場が程良い分量で設けられていて、 若干、先は読めるもののテーマ的に王道を行く描き方だと思うので、 ハラハラ ドキドキ ワクワクしながらも、安心して観ていられる作りかと思います。 えっ?そんなん、ありぃ?! とか、訳分かんな〜い!! とかといった様な 独り善がりな突拍子もない“とんでも”展開もなく、 かなり作り込んだ脚本なんだろうと想像出来ます。 更に、パソコンやネットなど、そういう素材を扱いながらも そんな世界をよく知らなくても、普通に面白いと思える作りは、本当に流石と言えます。 実際、普通に面白かったし、楽しかったし、 最期まで作中にどっぷり浸かって観るコトが出来ました。 しかしながら私的に、実は観て終わった後、 熱く語りたくなるモノが湧いてこなかった…というのも事実です。 作品を評価する時、映画としてのバランス具合 つまり完成度はとても大事です。 けれど映画そのものの“魅力”、例えばエネルギーとか力とかといった 人の魂に働きかける影響力とでも言えばイイでしょうか、 そういうモノもとても大切だと思います。 荒削りであっても観終わった後、誰かに語りたくて語りたくてたまらなくなる映画。 これこそが自分にとって魅力ある映画であることに間違いありません。 そして……何故だか本作にはその魅力が欠如しているのです。 (あくまで“私”にとって…ですが。) ストーリーにしても、テーマにしても、そしてキャラに関しても、 どんどん自分なりに掘り下げて考えて語り尽くしたくなるモノがないのです。 映画を観た後は、一緒に観た人と喫茶店でお茶しながらとか、帰りの車中でとか、 とにかく良いも悪いも汲めども尽きぬ勢いでしゃべり倒すのが常ですが、 面白かったネ。で終わってしまったのです。 う〜〜〜〜ん…、何故なんだろう……。 自分で埋めたくなるような“シロ”つまりは余白が無いってことなんだろうか…? キャラにしても、デザインは悪くはないのに… 奥行とか厚みとか隠しとかが薄い感じで…なんか追求したいという欲求が湧かないんだけど。 最悪、ストーリーとか作品自体がダメであっても、 キャラに関しては最終兵器的“萌え”的魅力というものがあれば それなりに熱く語れる時間もあるかもしれないけれど、 ダメだ、どうしたんだ?主人公にもヒロインにも… 脇キャラにも、魅力の下地はあるのに……もうイイや…って思っちゃう…… 確かに、面白かったヨって人に薦めることは出来るんですが……                               09.09.10. 鑑賞