ぼ んぼん

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■今江祥智           2010 岩波少年文庫(初版:1973   理論社)

「北極星も変わります。いまの北極星は、地球が自転している軸の方向にたまたま見えるから天の北極にあり、北を指すのですが、1万3千年前は織女星が北極 星でした。ですから、いまから1万2千数百年後には、また織女星が北極星になるはずです・・・」。物語は、洋次郎と洋の兄弟がプラネタリウムで、「ゼッタ イに変わらぬはずのもの」がひとつ、静かに崩れることから始まります。
『ぼんぼん』は、『兄貴』『おれたちのおふくろ』『牧歌』と続く、今江祥智「ぼんぼん四部作」の最初の第1作です。ある日、突然、父が泣くなり、やがて太 平洋戦争が始まり、とうとう大阪の町が空襲される、そんな少年時代を生き抜いた少年の物語です。これは、ゼッタイと思うものが崩れる中、成長して生き抜く ために必要な何かを静かに描いた作品です。必要な何かとは、兄、母、ほのかな恋、そして、父が亡くなった後、一緒にくらしてくれた佐脇さんという、生きる 力を教えてくれた親戚の老人。
「変わってしまった」ことに胸の底の悲しみを冷やす少年が、その悲しみをきっと抜け出していける。そう思える、そんなラストシーンも印象的です。


2012.8.24

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