星空の下のひなた。

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■樋口直哉      2008  光文社  

料理人を経て作家となった著者だけあって、物語の主人公も料理人の経験があり、料理の話も節々にでてきます。
タイトルにある「星空」は願いをかなえる流星、「ひなた」は、主人公の少年時代に柚原という少女とともに名前をつけた猫の名前です。料理人をやめてフード ライターとして暮らす主人公は、15年前のひなた、柚原と過ごした淡い思い出を鮮明に夢にみるようになっていきます。当時の彼にとって数少ない理解者がひ なたと柚原でした。それを夢に見る中で彼が苦しむのは、15年前のできごとを乗り越えられず、相も変わらず、同じことを繰り返し、なりたい自分になれない 自分への哀しみ。そして、ある出来事をきっかけに、彼は故郷の北海道を訪れ、生きているはずのないひなたに出遭います。不思議な力に導かれ、15年前の自 分にでききれなかったことをやりとげ、新しい自分なりの一歩をふみだしていこうとする主人公。彼の涙はもう哀しみの涙ではなく、自分に対する嬉しさの涙へ と変わっていました。
芥川賞候補にもノミネートされた作品です。

2009.10.6


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