01
|
 |
|
■北村薫
2009 新潮文庫 (単行本:2006 朝日新聞社)
2005年8月から翌年3月まで171回にわたり朝日新聞に連載された北村薫初の新聞連載小説です。
十代からの親友、千波、牧子、美々の3人の女友だちと、牧子の娘さき、美々の娘玲を中心に展開する物語です。培った絆の中で日々を歩む3人。さりげなく自
然と、それぞれの章の中でさきや玲たちを含めて主人公が入れ替わっていく面白さがあります。その絆は、今を生きるお互いを理解する、その根拠はともに過ご
した思い出の一コマの積み重ねであり、確かなものでもあります。
そして、やがて、明らかになる千波の病・・・。千波の最期に向かって物語はすすみますが、その中で牧子と美々は、何かをしてあげるのではなく、千波がどう
いてほしいと思うかを貫いていきます。
人生を生きることは、自分自身を生きるということだけではなく、周りの人たちの人生の中で自らがかけがえないのない登場人物を演じているを忘れてはいけな
いということを感じさせる作品です。
この物語は、めぐりめぐって牧子とさきの物語と還っていきます。それは、この作品では、さきが大学生になっていますが、さきが小学生の頃の牧子とさきの物
語『月の砂漠をさばさばと』の続編でもあるからです。
『月の砂漠をさばさばと』は1999年に刊行された作品です。こちらも母と娘の織りなす日常にある幸せを描いた好作品です。
2009.6.23
|