食堂かたつむり

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■小川 糸      2008  ポプラ社   

トルコ料理店のアルバイトを終えて家に戻ると、部屋の中が空っぽになっていた・・・。
15歳でふるさとを捨て、おかんのもとを飛び出し家を出て都会に出た倫子は、祖母の家に下宿しました。料理の世界へとやさしく手を引いてくれた祖母。そし て、その祖母が亡くなり、消沈した毎日を送る中で出会ったインド人の恋人でしたが、その日、インド人の恋人は、家財道具も貯金も使い慣れた台所道具も皆、 持 ち去っていなくなってしまいました。ショックの中、ハッとして倫子は、玄関のガスメーターの脇を急いでのぞきます。そこには、全てを失って、ただ一つ、祖 母のぬか床の壺だ けが残っていました。
祖母のぬか床を抱えて深夜バスに乗り、倫子はふるさとに帰ります。家を出て10年。おかんとの確執はいまだ残っていますが、身一つで帰ってきた娘をおかん は素っ気なくも受け入れて、倫子の「食堂を始めたいから物置小屋を貸してほしい」という申し出を許します。そうして始まった、倫子の「食堂かたつむり」。 祖母 から受け継いだ料理の知識とふるさとの自然の食材をふんだんに用いた、お客は1日1組だけ、メニューのない食堂です。倫子は、それぞれの客の想いに添う料 理を心をこめて考えていきます。それと同時に、徐々に倫子は、食材にこめられたさまざまな生命と想いを知っていきます。そして、やがて訪れる長年のおかん との確執 と向き合う時間。初めて知る、おかんの本当の想いは・・・?
倫子は、「私にとって、料理とは祈りそのものだ」と言います。思いをこめること。感謝すること。そして、食べた人がやさしい気持ちになれる料理、食べた 後、幸せになる料理、そんな料理を作り続けら れることを倫子は心から願います。
この物語は、失うことばかりだった倫子が癒しから成長へと歩む物語です。その成長の物語を通じて、料理の一品一品に詰まった物語を感じさせてくれるととも に、祖母とおかんと倫子、それぞれに異なってよい絆と愛の形を見事なまでに表現しています。


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