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■北村想
2008小学館文庫 初版:1989
(新潮社)
小学生の頃にわくわくと読んだ江戸川乱歩の少年探偵シリーズ。昭和11年から昭和37年に「少年倶楽部」や「少年」に連載され、そして、昭和39年以降、
ポプラ社から少年探偵シリーズ全46巻が刊行されました。慣れ親しんだシリーズは、平成20年11月に、ポプラ文庫から文庫版で発売されています。
さて、北村想の「怪人二十面相・伝」「怪人二十面相・伝PARTII」は、怪人二十面相の伝記です。もちろん明智小五郎、小林少年も登場し、江戸川乱歩の
「怪人二十面相」「サーカスの怪人」「青銅の魔人」などの事件をきちんと盛り込みながら、怪人二十面相側に立ったユニークな視点での物語です。
怪人二十面相は、江戸川乱歩の「サーカスの怪人」の中でも、その正体がサーカス出身の遠藤平吉であることが明かされています。しかし、北村想が着目したの
は、昭和11年に発表された「怪人二十面相」に出てくる二十面相と、昭和24年の「青銅の魔人」や昭和32年の「サーカスの怪人」に出てくる二十面相では
ややキャラクターが異なっているという点です。そこで、「怪人二十面相・伝」では、最初の二十面相は武井丈吉、その後、弟子である遠藤平吉がその跡を継い
だとしました。「怪人二十面相・伝」は武井丈吉を中心とし、「怪人二十面相・伝PARTII」は遠藤平吉を中心とした物語です。しかも、怪人二十面相のラ
イバル明智小五郎も同様に代変わりし、なんとPARTIIの明智小五郎は、小林少年が跡を継いでいます。
怪人二十面相を名乗る2人の人物の人間性が豊かに記され、そして、正義の味方の明智小五郎、小林少年もまた、より狡猾ささえ備えた人物となっています。
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