ドラマチック チ ルドレン

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■乃南アサ     1999 (新潮文庫)  初版:1996読売新聞社刊 

乃南アサの筆力をもって一つの物語として書かれていますが、これは富山市の郊外にある、さまざまな問題を抱える子どもたちを預かり立ち直りを支援している 『ピースフルハウス・はぐれ雲』に乃南アサ自身が関わりながら記録したノンフィクションです。主宰する川又夫妻も登場する児童精神科医も実在の人物。仮名 が使われていますが、成長が描かれている子どもたちも乃南アサがじっくりとその心理を聴き取りながら書いたものです。
物語は中学に行かなくなった金髪の少女・恵が両親とともに初めてはぐれ雲にやってくるところから始まり、はぐれ雲の新たな出発の日にスタッフ見習いとして 恵が活躍しているところまでが書かれています。
不登校やひきこもり、非行。さまざまな問題を抱える子どもたちは、問題を抱えている子どもとして一つに括られるものでもなく、また、何か一つのことに問題 の原因を探れば解決できる子どもたちでもありません。一人ひとりに想いがあり、求めているものも異なっています。そうした中で、はぐれ雲の関わりのあり方 の中で共通しているのは、例えば、親のせいにしてしまうことで前にすすめない子どもが、想いを表現し尽くし、自分の道を自分の人生として歩んでいくことが できるようになれば、親も変わっていくことができるということです。そして、苦しい過去にすがり嘆く時間はあってもよいのですが、前にすすんだ人生の中で それは帳尻を合わせてしまえばよいという折り合いのつけ方です。
人生は、今すぐに帳尻を合わせようとすれば、苦しみが増すばかりのもになってしまい、それは結果として不幸を長引かせることにつながってしまいます。この 『ドラマッチックチルドレン』では、その折り合いをつけて成長を遂げる子どもたち、子どもたちから力を得た親たちが書かれていますが、折り合いをつけるこ とができずに苦しみ続ける親子もまた正直に書かれています。折り合いのつけ方、帳尻の合わせ方はその方法を教えることができれば簡単ですが、微妙な関わり 方の中で本人自身が身につけていかなければならないものであるところにその難しさがあります。
 

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